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第二章 《友好舞踏会》の騒乱編
第43話 《紫帝》VS《水龍》
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「はぁああああああああっ!」
雄叫びを上げ、ツォーンは剣を振るう。
青い光が目前で狂い咲き、水の斬撃が幾度となく放たれる。
そんな斬撃を俺はひたすらに受け止め、受け流し――反撃をする。
青い斬撃と紫の斬撃が空に模様を描き、斬り結ぶごとに衝撃波が吹き荒れた。
「中々やるようだな!」
火花散る鍔迫り合いの中、ツォーンが白い歯を見せて笑った。
互いがせめぎ合いながら、自由落下を続ける。
現在、地上4000メートル。
激しい風が下から吹き付け、俺の着るロングコートの裾をはためかせた。
「その紫色の炎……状態異常が付与してあるな?」
「驚いた。わかるのか?」
「心外な。この私を誰だと思っている」
「……天然水製造マシーン?」
「貴様、私を舐めているのか?」
「いいや、全く」
割と真面目にこいつがいれば、水の供給が楽だなと思っている。
組織の運営にも、何かと金がかかるのだ。
もっとも、水属性魔法が得意なメンバーなら、シリカやフェリスがいるのだが。
「ふん、まあいい。ともかく私が言いたいことは一つ。貴様が何の状態異常を炎に宿したか知らないが、私には全く効いていないぞ?」
「っ!」
俺は、歯噛みする。
俺の《紫炎剣》とツォーンの《水剣》。
二本がぶつかり合っているが、それはただ炎を圧縮した剣と水を圧縮した剣が互いに干渉しているだけ。
そこに、状態異常の効果は微塵も感じられない。
「《水剣》すら斬れないナマクラで、私に傷は付けられないぞ?」
「だろう……な!」
俺は、剣を思いっきり振り抜いてツォーンを弾き飛ばす。
すかさず《紫炎剣》を消し、右手をツォーンへ向けた。
「《火球》――|地獄の円舞曲ッ!」
右手を中心に赤い魔法陣が展開。
魔法陣の外周に沿って、三つの巨大な火球が瞬時に生成され、ツォーンめがけて一斉に飛んでゆく。
燃えさかる火球の一つ一つが、ワイバーンの放つ一撃以上の威力を持つ。
だが、当たれば塵一つ残らず消し炭になるその攻撃を――
「《水牙》――三閃ッ!」
尖った水の牙を生成し、撃ち放つツォーン。
灼熱の火球と真正面から激突、相殺する。
水が高音で熱され、一瞬で気化したことにより空気が膨張。
水蒸気爆発が起きて視界が真っ白に染まる。
が、俺達は今落下中。
生じた霧を置き去りに、俺達はぐんぐんと落ちてゆく。
「今のを弾くか。やっぱバケモンだな」
「当たり前よ。伊達に四天王をやっているわけじゃないからな。今度はこちらから行くぞ……《水隠れ》」
刹那、数メートルの間隔を開けて落下していたツォーンの姿が、霞と消える。
《水隠れ》か。
《友好舞踏会》の間、ツォーンの気配が度々消えていたのは、この魔法のせいだったか。
「今私が起動しているのは、自分の存在を周囲と同化させる水属性の魔法だ。これを起動している間は、何人たりとも私の姿を認識することはできん! それこそ、《空間把握》の魔法を所有している勇者アリスくらいのものだ!」
声だけが不気味に聞こえてくる。
周囲を見まわしても、まるで姿が見えない。
いや、実際に俺の目はツォーンを捉えているのだろう。
だが――相手は水属性の認識阻害魔法を起動している。だから、俺の目に見えていても、俺の脳が“そこにあるもの”として処理していないのだ。
この状況で、攻撃を仕掛けられたらどうしても反応が遅れてしまう。
「見えない敵からの攻撃、対応できるものならやってみろ!」
ツォーンはそう叫ぶ。
今、ツォーンは自身の優勢を疑っていない。
自分が優位に立っていると勘違いした滑稽な四天王に、一発お見舞いしてやるとしよう。
「悪いけど……姿を消した程度じゃ、俺は騙せないぞ?」
「なんだと……?」
訝しむようなツォーンの声。
俺は、左斜め後ろに向かって手を伸ばし、即座に《石弾》を放った。
音速を超える岩の弾丸が飛び、空中で何かに当たって砕け散る。
「ぐぁッ!?」
呻き声と共に、ツォーンが姿を現す。
俺の放った石弾は、ツォーンにクリティカルヒットしていたのだ。
「ばか……な。なぜ私の位置がわかった!」
「さっきお前が言っていただろう? 勇者アリスの持つ無属性魔法、《空間把握》。それと同じものを、たった今作成した」
「なっ!? 作成した、だと!?」
「ああ。これで、その猪口才な認識阻害はできなくなったな?」
驚愕に目を剥くツォーンへ、俺は淡々と告げる。
高度は下がり――現在地上3000メートル。
まだまだ、戦いは続く。
雄叫びを上げ、ツォーンは剣を振るう。
青い光が目前で狂い咲き、水の斬撃が幾度となく放たれる。
そんな斬撃を俺はひたすらに受け止め、受け流し――反撃をする。
青い斬撃と紫の斬撃が空に模様を描き、斬り結ぶごとに衝撃波が吹き荒れた。
「中々やるようだな!」
火花散る鍔迫り合いの中、ツォーンが白い歯を見せて笑った。
互いがせめぎ合いながら、自由落下を続ける。
現在、地上4000メートル。
激しい風が下から吹き付け、俺の着るロングコートの裾をはためかせた。
「その紫色の炎……状態異常が付与してあるな?」
「驚いた。わかるのか?」
「心外な。この私を誰だと思っている」
「……天然水製造マシーン?」
「貴様、私を舐めているのか?」
「いいや、全く」
割と真面目にこいつがいれば、水の供給が楽だなと思っている。
組織の運営にも、何かと金がかかるのだ。
もっとも、水属性魔法が得意なメンバーなら、シリカやフェリスがいるのだが。
「ふん、まあいい。ともかく私が言いたいことは一つ。貴様が何の状態異常を炎に宿したか知らないが、私には全く効いていないぞ?」
「っ!」
俺は、歯噛みする。
俺の《紫炎剣》とツォーンの《水剣》。
二本がぶつかり合っているが、それはただ炎を圧縮した剣と水を圧縮した剣が互いに干渉しているだけ。
そこに、状態異常の効果は微塵も感じられない。
「《水剣》すら斬れないナマクラで、私に傷は付けられないぞ?」
「だろう……な!」
俺は、剣を思いっきり振り抜いてツォーンを弾き飛ばす。
すかさず《紫炎剣》を消し、右手をツォーンへ向けた。
「《火球》――|地獄の円舞曲ッ!」
右手を中心に赤い魔法陣が展開。
魔法陣の外周に沿って、三つの巨大な火球が瞬時に生成され、ツォーンめがけて一斉に飛んでゆく。
燃えさかる火球の一つ一つが、ワイバーンの放つ一撃以上の威力を持つ。
だが、当たれば塵一つ残らず消し炭になるその攻撃を――
「《水牙》――三閃ッ!」
尖った水の牙を生成し、撃ち放つツォーン。
灼熱の火球と真正面から激突、相殺する。
水が高音で熱され、一瞬で気化したことにより空気が膨張。
水蒸気爆発が起きて視界が真っ白に染まる。
が、俺達は今落下中。
生じた霧を置き去りに、俺達はぐんぐんと落ちてゆく。
「今のを弾くか。やっぱバケモンだな」
「当たり前よ。伊達に四天王をやっているわけじゃないからな。今度はこちらから行くぞ……《水隠れ》」
刹那、数メートルの間隔を開けて落下していたツォーンの姿が、霞と消える。
《水隠れ》か。
《友好舞踏会》の間、ツォーンの気配が度々消えていたのは、この魔法のせいだったか。
「今私が起動しているのは、自分の存在を周囲と同化させる水属性の魔法だ。これを起動している間は、何人たりとも私の姿を認識することはできん! それこそ、《空間把握》の魔法を所有している勇者アリスくらいのものだ!」
声だけが不気味に聞こえてくる。
周囲を見まわしても、まるで姿が見えない。
いや、実際に俺の目はツォーンを捉えているのだろう。
だが――相手は水属性の認識阻害魔法を起動している。だから、俺の目に見えていても、俺の脳が“そこにあるもの”として処理していないのだ。
この状況で、攻撃を仕掛けられたらどうしても反応が遅れてしまう。
「見えない敵からの攻撃、対応できるものならやってみろ!」
ツォーンはそう叫ぶ。
今、ツォーンは自身の優勢を疑っていない。
自分が優位に立っていると勘違いした滑稽な四天王に、一発お見舞いしてやるとしよう。
「悪いけど……姿を消した程度じゃ、俺は騙せないぞ?」
「なんだと……?」
訝しむようなツォーンの声。
俺は、左斜め後ろに向かって手を伸ばし、即座に《石弾》を放った。
音速を超える岩の弾丸が飛び、空中で何かに当たって砕け散る。
「ぐぁッ!?」
呻き声と共に、ツォーンが姿を現す。
俺の放った石弾は、ツォーンにクリティカルヒットしていたのだ。
「ばか……な。なぜ私の位置がわかった!」
「さっきお前が言っていただろう? 勇者アリスの持つ無属性魔法、《空間把握》。それと同じものを、たった今作成した」
「なっ!? 作成した、だと!?」
「ああ。これで、その猪口才な認識阻害はできなくなったな?」
驚愕に目を剥くツォーンへ、俺は淡々と告げる。
高度は下がり――現在地上3000メートル。
まだまだ、戦いは続く。
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