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第一章 反逆への序章編

第2話 とにかく、訓練しかないっしょ?

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「おーおー、相変わらずやってんなぁ~」



 稽古という名の八つ当たりに興じていると、誰かが苦笑しながら近づいてきた。

 金髪のツンツン頭に、通った鼻筋と赤い目を持つ美少年だ。



 名前はレント。もちろん、彼とてモブBだ。

 原作の……しかも敵側にこんなチャラいイケメンはいなかった。



「まあな。ラスボス(笑)の手下っていうポジションが、気に入らないから」

「……ラスボスって言葉の意味はよく知らんが、お前。それを聞いたのが俺でよかったな。レイズ様に聞かれたら、灰すら残さずこの世から消されるぞ」

「だろーな」



 俺は肩をすくめて見せる。

 

 だが、レントは知らない。

 どのみち、一年半後にはもう、俺達はこの世にいないことを。



「なぁレント。今日は何月何日?」

「今日か? 六月十一日だが……それがどうかしたのか?」

「いや、何でもない」



 不思議そうに首を傾げるレントをよそに、俺は「あと半年か……」と呟いた。

 確か、ゲームの中で大戦が始まったのは十二月十一日。



 半年後の今日、世界が大きく動き出すのだ。

 それまでに、俺は強くならなければいけない。

 この世界に来てまで過酷な末路を辿るなんて、まっぴらだ。



「そうだレント。暇なら、稽古に付き合ってくれないか?」

「俺が? やだね。一日の訓練でもうへとへとなんだ。自主練なんて冗談じゃねぇ。もう部屋で休ませて貰うぜ」



 レントは、心底嫌そうに眉を歪めてそう答えると、ひらひらと手を振って行ってしまった。

 そんな彼を見送りつつ、ふっと笑みを零した俺は、剣の稽古を再開した。



 ――幸いなことに、このペースで努力をすれば、十分強くなれそうだ。

 元のゲームにも、鍛錬場で訓練を行った分だけレベルが上がるというシステムが組み込まれていた。



 この世界に転生して早一ヶ月。

 集団での戦闘訓練に加え、夕方は自主練でひたすら身体を鍛え、夜は密かにアジトを抜け出してモンスターを狩り、レベルアップに努めていた。



 今のステータスはというと。



◆◆◆◆◆◆



 名前:カイム=ローウェン

 年齢:17

 性別:男

 職業:《黒の皚鳥》戦闘員



 レベル:32

 体力:8500

 魔力:13850

 魔法適正:火・土・風+無属性

 

 スキル:《鑑定眼》 《索敵》 《火球フレア・ボール》 《土形変化ソイル・チェンジ》 《石弾ロック・バレット》 《風刃エア・カッター》 

 固有スキル:《魔法創作者スキル・クリエイター

 

◆◆◆◆◆◆



 この世界に転生したときは、当然のようにレベル1だったが、正直自分の天賦の才にほくそ笑んだものだ。



 レベル1にして、俺の初期魔力は10000。体力は5000。

 参考までに一般人の初期魔力は500、体力は200ほどである。



 ――そう。

 何を隠そうこの俺、カイム=ローウェンは、転生したのがモブなのであって、生まれ持った“才能”があった。



 そして、その才能を活かせる究極の固有スキル《魔法創作者スキル・クリエイター》を最初から持っていたのも大きい。



 《魔法創作者スキル・クリエイター》。

 読んで字のごとく、新しい魔法スキルを造り出せる、最強の固有スキルだ。



 俺の生まれ持った魔法適正は、火・土・風と無属性の四つ。

 属性の数に関しては平々凡々だが、この程度、俺の生存戦略においてなんら差し支えない。

 なぜなら、それを補ってあまりある魔力と体力。そして、前世でのゲームの知識があるからだ。



「とはいえ、俺が生き残るには、俺の命を脅かす者――レイズよりももっと、強くならなきゃいけない!」



 レイズのレベルは、半年後のゲーム開始時点で666。



 対して、俺がこの一ヶ月で上げたレベルは31。

 単純計算で6倍にしても、レイズのレベルには遠く及ばない。



 加えて、レベル上げの基本ではあるが、上がれば上がるほどレベルは上げにくくなってゆく。

 

「強力なスキルと魔力でその差をいくらか埋めることはできるけど……限度がある」



 ギリッと歯を食いしばり、俺は剣を振るう手に力を込める。

 銀色の剣閃けんせんが翻り、打ち込みをしていた樹木を横一文字に切り裂いた。



 低い音を立てて地面に倒れ込む樹木を横目に、俺はぼそりと呟いた。



「今夜から、レベル上げのペースを上げよう」

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