廃墟シリーズ

緋崎 狐依

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廃墟に降る雨

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 時代に取り残されたそれは、ただそこに存在するだけで、異質な雰囲気を曝け出していた。
 
 壁に纏わり付く草花。鉄の部分は赤く錆びれ、所々崩れた壁からは雨が入り込んでくる。窓も割れ、歩けばザクザクとガラスの音がした。

 目的の場所につけば、俺は背を床につける。外の天気のおかげか火照った体にはちょうど良い。
 天井を仰ぎ見ると、所々崩れて穴が空いていた。そこに入り込む雨は絶妙せに当たらない。

 ここは、俺とあの子の秘密基地。子どもの頃は、大人たちには絶対入るなと言われていた場所。今はもう大人だ。あいつらのいうことなんて関係ない。
 ふと目線をずらして、壁を見る。そこにはかつての、幼い頃の思い出が並んでいた。もう戻らない、在りし日の思い出。

 荒い俺の息遣いと、外で雨と木々が擦れる音。そしてポタポタと壁から染み出す水滴。……あぁ、俺の心臓の音も聞こえるな。

 あぁ、ものすごく眠い。疲れたし、一眠りして良いよな。ここは良い雨宿り場所だ。俺にお似合いの。


 意識を手放す時にエリカの花の匂いがした。……あの子の好きだった花。昔のあの子が長い髪を靡かせて俺のそばに立っていた気がした。

《本日未明、山奥の廃墟にて指名手配の二十代男性の遺体が発見されました。男は自身の両親と近所のご夫婦を殺害し逃亡。警察の調べによりますと、犯人は幼少期、両親からネグレクトを受けておりその恨みから刺し殺したと思われー………》
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