2 / 2
廃墟に降る雨
しおりを挟む時代に取り残されたそれは、ただそこに存在するだけで、異質な雰囲気を曝け出していた。
壁に纏わり付く草花。鉄の部分は赤く錆びれ、所々崩れた壁からは雨が入り込んでくる。窓も割れ、歩けばザクザクとガラスの音がした。
目的の場所につけば、俺は背を床につける。外の天気のおかげか火照った体にはちょうど良い。
天井を仰ぎ見ると、所々崩れて穴が空いていた。そこに入り込む雨は絶妙せに当たらない。
ここは、俺とあの子の秘密基地。子どもの頃は、大人たちには絶対入るなと言われていた場所。今はもう大人だ。あいつらのいうことなんて関係ない。
ふと目線をずらして、壁を見る。そこにはかつての、幼い頃の思い出が並んでいた。もう戻らない、在りし日の思い出。
荒い俺の息遣いと、外で雨と木々が擦れる音。そしてポタポタと壁から染み出す水滴。……あぁ、俺の心臓の音も聞こえるな。
あぁ、ものすごく眠い。疲れたし、一眠りして良いよな。ここは良い雨宿り場所だ。俺にお似合いの。
意識を手放す時にエリカの花の匂いがした。……あの子の好きだった花。昔のあの子が長い髪を靡かせて俺のそばに立っていた気がした。
《本日未明、山奥の廃墟にて指名手配の二十代男性の遺体が発見されました。男は自身の両親と近所のご夫婦を殺害し逃亡。警察の調べによりますと、犯人は幼少期、両親からネグレクトを受けておりその恨みから刺し殺したと思われー………》
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
お漏らし・おしがま短編小説集 ~私立朝原女学園の日常~
赤髪命
大衆娯楽
小学校から高校までの一貫校、私立朝原女学園。この学校に集う女の子たちの中にはいろいろな個性を持った女の子がいます。そして、そんな中にはトイレの悩みを持った子たちも多いのです。そんな女の子たちの学校生活を覗いてみましょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる