男の俺が痴漢されてイッちゃうなんて…！

恋敵登場-ミナトside-

ピリオド（２）

タカシとの関係に亀裂が入り、昼休みの間にあっという間に崩壊した俺に残されたのは、残務というべき手続きばかりだった。

その日の午後の授業は全く頭に情報が入らなかった。
タカシ以外の友達が何かを話しかけてきても上の空。
そしてタカシが俺に話しかけてきた時には、俺はトイレへ行くと言って避けたり、寝たふりをして話しかけないようなオーラを出したりと、とにかくその日は早く家に帰って寝たいと思っていた。




ようやく授業が終わった放課後、俺は退部届を出すために職員室にいる監督へと話をしにいった。監督は俺のために別室を用意してくれて、そこで病院の診断書や退部の意思は固いことを伝える。監督としてもあの事故が裁判や大事にならず、安堵したのか退部届はあっさりと受理された。ただ、唯一建設的な話だったのが、サッカー部のマネージャーになることだった。

俺自身、プレーヤーとしてずっとやってきたのに、急にマネージャーをやれと言われるのは心外だった。高校サッカー部のマネージャーの仕事というのは大学やプロリーグと違って雑用ばかりだ。部員たちのスポーツドリンクを作ったり、ビブスを洗濯したり、誰でもできる業務を俺がわざわざやる必要はないと思っていた。今はマネージャーは女子が数名いる中に混じるのも、俺は嫌だった。

そして何よりも抵抗感があったのは、タカシとユウジが一緒にプレーとしている練習や試合風景を遠目で毎日眺めさせられることだ。

もうあの2人にか関わりたくない、そう思っていたので俺はマネージャーの提案を辞退した。



監督は少し寂しそうな顔をしていたが、俺にはもう関係ない。
小さい頃から続けてきたサッカーに対する熱も冷めきってしまっている。
何の未練もない。

「短い間でしたがお世話になりました」
そう監督に伝え、俺は会議室を後にした。