男の俺が痴漢されてイッちゃうなんて…！

恋敵登場-ミナトside-

新入生(３)

サッカー部の平日練習では、まずはAチーム、Bチーム、関係なくランニングやミニゲーム、パス回しなど基本的な練習をする。そのときには先輩後輩関係はなく、サッカーのテクニックがものをいう。

そして、事件は起こった。

ミニゲームで俺とユウジが別チームとなり、俺がゴールに向けてドリブルでシュートを決めようとしたとき、あからさまにユウジが俺にファウルを取ってきたのだ。ユウジのスライディングは俺の脚にヒットし、俺は膝からグラウンドに転げ落ちた。

あまりの痛さに俺はその場でもがくしかできなかった。
急いでコーチや他のチームメイトが駆けつけてくれたが、医務室で何とかできるレベルではないことは明らかだったので、すぐに救急車が呼ばれる。

俺は大したことないと言いたかったが、やはり痛いものは痛い。あまりの痛さに涙を流してしまった。

その横でタカシが「ミナト、大丈夫か！？」と何度も声をかけてくれる。俺はその声にどこか安心感を感じるが、痛みの方が勝ってしまい、「ありがとう」と言うことが精一杯であった。



一方で、ユウジはというと、通常のプレーということで俺のリアクションが大げさすぎるとチームメイトに釈明していた。
「Bチームのミナト先輩のプレーが下手だから膝から落ちたんですよ？Aチームの練習なら同じことでも怪我なんてしませんよ」

しかし、明らかに俺の膝がどんどんと腫れ上がっていくことで、ユウジも自分の起こした危険プレーをようやく自覚し始めた。



救急車が到着してコーチと保健医が同乗し、俺は病院へと連れて行かれた。

そして検査の結果、膝のダメージが俺が思っていた以上のレベルだったようで、手術をしたとしてもサッカーはもうできないことが分かった。

俺はその場で泣き崩れるしかなかった。

タカシのいるAチームに入りたい一心で自主練習に努めていたのに、こんなのあんまりだと思って。サッカーの神様は意地悪だって。俺よりもユウジに味方したんだって。