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はじめての恋人-ミナトside-

ドキドキの自主練習(1)

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俺は同じサッカー部のタカシと付き合うことになった。

告白してきたのはタカシから。

場所はタカシの部屋。

俺が痴漢された日の夜。

その痴漢の相手がタカシだったとは、全く想像できなかった。
そして、まさか最初の恋人が男になるのも想像していなかった。
今でもタカシと付き合っていることに対して、現実なのかわからなくなる瞬間がある。
でも、これは現実。




そう、俺の恋人はタカシなんだ。




学校生活では周りに付き合っていることがバレないかヒヤヒヤしながら過ごしている。

「ミナト?練習行くぞー?」
「おう~!」

付き合ったと言っても何も変わらない学校生活。

俺は教科書や練習着の入った背番号の入ったリュックを持ち、タカシと一緒に教室を出る。
一年生は上級生よりも前に練習準備に入り、ボールやグラウンドの整備をしておかなければならない。
俺とタカシは大抵、トップバッターで部室に入る。





教室から離れた部室に到着し、リュックを一年生エリアのロッカーに置く。
今日もまだ誰も来ていない。
俺とタカシがトップバッターだ。

俺が制服を脱ごうとした時、急に後ろからタカシに抱きつかれた。

「ミナト、好き」
「・・・・」

正直、恋愛経験のなかった俺にとって、こういうシチュエーションではどう反応したら良いのか分からない。
だから、俺は黙ってタカシの回してきた腕に触れる。

ガッチリとした腕に触れ、俺はいつも安心する。

(「恋人同士で抱き合うのって、こんなに安心するんだ」)

俺はそう思いながら、タカシの腕を触った後、振り返った。

目の前には相変わらずイケメンの男がいる。

そして目があった瞬間、タカシの方からキスをされた。

軽く、お互いの唇が触れる。

ただし、ここは学校の部室。
俺は周りのサッカー部員にバレないか不安だ。
だから、タカシに対して、
「おいっ!こんなところでキスしてるのバレたらヤバいって・・・!」

そう言うと、タカシはいつも、
「電車の中でイッちゃうのがバレるよりも健全だと思うけど?」
と意地悪な顔をして再び俺にキスをして誤魔化してくる。

ホント、タカシは恋愛経験豊富で、俺なんかよりも可愛い彼女がお似合いなタイプなのに。
どうして俺なのか、今でも分からない。

ただ、俺もタカシのことは好きだ。

だから、2人っきりで部室でこっそりキスをしたり、一瞬でも抱き合ったりしている時間が好きだ。





抱き合っていたのは数分。
外から聞き覚えのある部員の声がして、こちらに近づいてくる。


「あぁ、あいつらもう来ちゃった」
タカシが残念そうに俺に向かって話しかける。

「うん・・・そろそろ俺らも準備しよっか?」
俺がそう言うと、タカシは大袈裟なため息をついて、俺から名残惜しそうに離れた。

「もっとミナトと一緒に抱き合っていたいのに・・・」
「しょうがないよ。バレないようにしないと」
「俺はバレても良いけどな」
「ダメだって!バレたら・・・気まずくなるよ・・・」
「そっか・・・。俺は他の部員よりもミナトの方が大事だから気にしないけど」

ホント、タカシは男らしくて頼り甲斐があって、恋人として最高の人だ。
ただ、俺の中では、なぜタカシが俺のことを恋人に選んでくれたのか、タカシが俺のことを好きと言ってくれるほど、ますますわからなくなるのだった。
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