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休職
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それから俺とユウスケは夜遅くまで語り合った。休職する前の仕事内容のこと。仕事に対する思い。自分自身の性格について。そしてユウスケも過去の仕事経験。カフェを開業するきっかけ。この場所に出店した思い。
そして恋のことも。
「タカシさんってモテそうですけど、恋人はいないのですか?」
「仕事が恋人のような状況だったから、恋人なんていないよ」
「そうだったんですね」
「ユウスケこそ、恋人はいないの?」
俺が密かに気になっていた質問をぶつける。
「恋人はいたけど別れちゃった」
「そうなんだ。相手はどんな人だったの?って別れた相手のことを聞いちゃ悪いね」
「いや、いいですよ。実は相手の人は俺よりもすごく年上で、俺をカフェ開業に導いてくれた人で・・・」
俺は思わずさっき話に出てきたマスターのことを想像した。いや、ユウスケはストレートのはず。こんな質問をしていいのか。そう思いつつ、恐る恐る聞いてみた。
「それってもしかして、さっき話していたマスターのこと?」
「うん、そうだよ」
あっさりと答えが返ってきた。俺が心配していたのとは反対に、ユウスケは全く動じていない。
「タカシさんはどういう考えを持っているか分からないけど、俺ってゲイなんです。だからこの店の開業を支援してくれたマスターのことは尊敬していて、更には恋人関係だったんです。けど、色々とあって別れちゃって。マスターがいなくなった今、一人でこのカフェをやっていけるかどうか不安なんです」
ユウスケの頬を涙が伝う。ハンカチを取り出そうとポケットに手を突っ込んだが、スウェットで出掛けていたのであいにく持ち合わせていなかった。
その間に、ユウスケは来ていたシャツの袖で涙を拭う。
「恋人はこういう時もさっとハンカチを差し出してくれるような大人な男性だったんです。ごめんなさい、タカシさんにこんな話しちゃって、引きましたよね」
俺は恋愛経験が乏しかったので、こういう時になんと声をかけていいのか分からない。ただ、目の前で自分が好意を寄せる男が泣いていて放っておくことはできない。元々面倒見の良い性格で、逆に気配りをしすぎる性格がうつ病を発症する一つの要因だったと思っている。今はそんな弱気な自分を置いておいて、ユウスケを支える番かもしれない。
普段であればあれこれ考え込む自分自身であったが、今は直感でユウスケを抱きしめた。
「・・・タカシさん・・・?」
「ごめん、頼りない俺だけど、こうやることしかできなくて」
「ううん、すごく嬉しいです。タカシさん、もっとギュッとしてほしいです」
正面からユウスケを抱きしめていた俺は、両腕をユウスケに回し、さらにギュッと抱きしめる。
「タカシさん、キスしていいですか?」
「うん、いいよ」
俺とユウスケは誰もいない店内でキスを交わす。
「タカシさん、俺、タカシさんのことが好きです。一目惚れでした」
「実は俺もユウスケのことが好き」
「タカシさん」
「ユウスケ」
俺たちは再びキスを交わす。次はさっきよりもじっくりと。
キスを終えるとお互い顔が赤い。
「飲みすぎちゃったかな?」
ユウスケが俺にそう聞いてくる。
「そうかもしれないね」
俺はそう簡単に答える。
そして、ユウスケは俺の股間に手を伸ばしてきた。
「タカシさんのスウェット、股間の部分が濡れてる」
「あっ・・・・!ダメっ・・・・!」
ユウスケが俺の股間をグイグイと触ってくる。さっきの甘えた顔とは別に、意地悪そうな顔をしている。
「タカシさん、うちに来ない?この上のアパートを借りてるんです」
「行ってもいいなら」
その日の夜、俺はユウスケの家へとそのまま入っていった。
そして恋のことも。
「タカシさんってモテそうですけど、恋人はいないのですか?」
「仕事が恋人のような状況だったから、恋人なんていないよ」
「そうだったんですね」
「ユウスケこそ、恋人はいないの?」
俺が密かに気になっていた質問をぶつける。
「恋人はいたけど別れちゃった」
「そうなんだ。相手はどんな人だったの?って別れた相手のことを聞いちゃ悪いね」
「いや、いいですよ。実は相手の人は俺よりもすごく年上で、俺をカフェ開業に導いてくれた人で・・・」
俺は思わずさっき話に出てきたマスターのことを想像した。いや、ユウスケはストレートのはず。こんな質問をしていいのか。そう思いつつ、恐る恐る聞いてみた。
「それってもしかして、さっき話していたマスターのこと?」
「うん、そうだよ」
あっさりと答えが返ってきた。俺が心配していたのとは反対に、ユウスケは全く動じていない。
「タカシさんはどういう考えを持っているか分からないけど、俺ってゲイなんです。だからこの店の開業を支援してくれたマスターのことは尊敬していて、更には恋人関係だったんです。けど、色々とあって別れちゃって。マスターがいなくなった今、一人でこのカフェをやっていけるかどうか不安なんです」
ユウスケの頬を涙が伝う。ハンカチを取り出そうとポケットに手を突っ込んだが、スウェットで出掛けていたのであいにく持ち合わせていなかった。
その間に、ユウスケは来ていたシャツの袖で涙を拭う。
「恋人はこういう時もさっとハンカチを差し出してくれるような大人な男性だったんです。ごめんなさい、タカシさんにこんな話しちゃって、引きましたよね」
俺は恋愛経験が乏しかったので、こういう時になんと声をかけていいのか分からない。ただ、目の前で自分が好意を寄せる男が泣いていて放っておくことはできない。元々面倒見の良い性格で、逆に気配りをしすぎる性格がうつ病を発症する一つの要因だったと思っている。今はそんな弱気な自分を置いておいて、ユウスケを支える番かもしれない。
普段であればあれこれ考え込む自分自身であったが、今は直感でユウスケを抱きしめた。
「・・・タカシさん・・・?」
「ごめん、頼りない俺だけど、こうやることしかできなくて」
「ううん、すごく嬉しいです。タカシさん、もっとギュッとしてほしいです」
正面からユウスケを抱きしめていた俺は、両腕をユウスケに回し、さらにギュッと抱きしめる。
「タカシさん、キスしていいですか?」
「うん、いいよ」
俺とユウスケは誰もいない店内でキスを交わす。
「タカシさん、俺、タカシさんのことが好きです。一目惚れでした」
「実は俺もユウスケのことが好き」
「タカシさん」
「ユウスケ」
俺たちは再びキスを交わす。次はさっきよりもじっくりと。
キスを終えるとお互い顔が赤い。
「飲みすぎちゃったかな?」
ユウスケが俺にそう聞いてくる。
「そうかもしれないね」
俺はそう簡単に答える。
そして、ユウスケは俺の股間に手を伸ばしてきた。
「タカシさんのスウェット、股間の部分が濡れてる」
「あっ・・・・!ダメっ・・・・!」
ユウスケが俺の股間をグイグイと触ってくる。さっきの甘えた顔とは別に、意地悪そうな顔をしている。
「タカシさん、うちに来ない?この上のアパートを借りてるんです」
「行ってもいいなら」
その日の夜、俺はユウスケの家へとそのまま入っていった。
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