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休職
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「乾杯!」
近くのスーパーでお酒やおつまみとなる惣菜をユウスケと一緒に買い、早めにクローズしたカフェのカウンターで隣り合って飲み始める。
主治医からはアルコールは精神薬の副作用を生む可能性があるため控えるように忠告されていたが、今日はお構いなしにビールをグイグイと飲み干した。
「タカシさん、いい飲みっぷりですね!お酒はよく飲むのですか?」
「昔はよく会社の同僚と飲んでいました。ただ、仕事が忙しくなってからは一緒に飲むことはほとんどありませんでしたね。おそらく俺だけが仲間外れにされていたのかもしれません」
俺は手に持っていたビールの空き缶をカウンターに置き、休職する前を思い出す。
ここでは会社の同僚という言い方をしたが、実際のところはゲイの友人と飲みに行く機会の方が多かった。週末になると同じ年の友人と共に新橋の居酒屋で一次会をし、二次会は多くのサラリーマンのゲイが集まるバーで終電近くまで飲んでいた。しかし、仕事が忙しくなると、友人からの誘いを仕事を理由に断るようになり、次第に俺はその誘いを鬱陶しいと思うようになっていた。そして今ではゲイの友人からの連絡は来ず、結果、仕事に溺れてしまった。
「タカシさん?大丈夫ですか」
ユウスケに肩を優しく叩かれる。その瞬間、俺は我に返った。
「何だか急に目を閉じて思い詰めた表情をしていたので心配になりました。図々しいかもしれませんが、タカシさんはどうして休職されているのですか?」
「俺が休職している理由?それは医師からうつ病だって診断されたからだよ」
「いや、そうじゃなくて、もっとその原因が分かっているなら教えてください。何か俺でよければ力になれるかもしれないと思って」
ユウスケが俺の手を握ってきた。さっき外に買い出しへ出かけた時と同じく温かい手だ。
「タカシさん、俺だってそんなに強い人ではないけど、1+1は2って言うじゃないですか?2になれば今までできなかったことや乗り越えることのできなかった困難も越えられるって、俺の尊敬するカフェのマスターが言っていたんです」
ユウスケがじっと俺を見つめてくる。
俺はユウスケの温かさにまた涙を溢してしまう。
「ありがとう・・・。長くなるけどいいかな?」
「時間はたっぷりありますから、さっ、飲みながら聞かせてください。タカシさんのこと。色々と知りたいです」
近くのスーパーでお酒やおつまみとなる惣菜をユウスケと一緒に買い、早めにクローズしたカフェのカウンターで隣り合って飲み始める。
主治医からはアルコールは精神薬の副作用を生む可能性があるため控えるように忠告されていたが、今日はお構いなしにビールをグイグイと飲み干した。
「タカシさん、いい飲みっぷりですね!お酒はよく飲むのですか?」
「昔はよく会社の同僚と飲んでいました。ただ、仕事が忙しくなってからは一緒に飲むことはほとんどありませんでしたね。おそらく俺だけが仲間外れにされていたのかもしれません」
俺は手に持っていたビールの空き缶をカウンターに置き、休職する前を思い出す。
ここでは会社の同僚という言い方をしたが、実際のところはゲイの友人と飲みに行く機会の方が多かった。週末になると同じ年の友人と共に新橋の居酒屋で一次会をし、二次会は多くのサラリーマンのゲイが集まるバーで終電近くまで飲んでいた。しかし、仕事が忙しくなると、友人からの誘いを仕事を理由に断るようになり、次第に俺はその誘いを鬱陶しいと思うようになっていた。そして今ではゲイの友人からの連絡は来ず、結果、仕事に溺れてしまった。
「タカシさん?大丈夫ですか」
ユウスケに肩を優しく叩かれる。その瞬間、俺は我に返った。
「何だか急に目を閉じて思い詰めた表情をしていたので心配になりました。図々しいかもしれませんが、タカシさんはどうして休職されているのですか?」
「俺が休職している理由?それは医師からうつ病だって診断されたからだよ」
「いや、そうじゃなくて、もっとその原因が分かっているなら教えてください。何か俺でよければ力になれるかもしれないと思って」
ユウスケが俺の手を握ってきた。さっき外に買い出しへ出かけた時と同じく温かい手だ。
「タカシさん、俺だってそんなに強い人ではないけど、1+1は2って言うじゃないですか?2になれば今までできなかったことや乗り越えることのできなかった困難も越えられるって、俺の尊敬するカフェのマスターが言っていたんです」
ユウスケがじっと俺を見つめてくる。
俺はユウスケの温かさにまた涙を溢してしまう。
「ありがとう・・・。長くなるけどいいかな?」
「時間はたっぷりありますから、さっ、飲みながら聞かせてください。タカシさんのこと。色々と知りたいです」
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