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休職

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ぼーっとしていると、ユウスケから声を掛けられていることに気がついた。



「あの~?ぼーっとしてどうかしましたか?」
「あっ、いや、考え事をしていました。すみません」
「僕の話、退屈でしたよね」

ユウスケがしゅんとした表情をする。

本当に感情が豊かだ。

今まで俺の周囲にいた人、もちろん自分を含めてであるが、感情を外に見せないようにしている人が多かった。相手の期待する表情や態度を示すことが人とのコミュニケーションでは必須と考えていた。だから俺は疲れてしまった。

一方で、ユウスケは思ったことは顔に出すし、ストレートに想いを相手に伝えることに臆することなくできる。それは俺には持っていない能力であり素質だと思った。


俺はユウスケの表情を汲み取って、正直に想いを伝える。

「いや、退屈じゃないですよ。素敵な話だと思って聞いていました。さらに、ユウスケさんも素直で良い人なんだろうなって思いました」

素直という単語にユウスケは多少戸惑った表情をしつつも、自分が褒められていることに気がつくと顔をほんのり赤らめる。

「お客さん、急に何言い出すんですかー。恥ずかしいじゃないですか」
「そういうところですよ。俺には持ち合わせていない素直さをユウスケさんは持っていて羨ましいと思いました」

ユウスケは更に顔を赤らめ、口をぱくぱくとさせる。

俺自身、まるでユウスケに告白しているような雰囲気になっていることに気が付き、慌ててこの場を取り繕うとする。

「急にすいません!変なことを言っちゃって・・・」
「いえいえ、こんなに褒められたことはなかったので、すごく嬉しくて・・・」




二人の間に沈黙の時間が流れる。



俺はこの時、店内におしゃれなジャズが流れていることに気がついた。その話題に切り替えようと話を振ろうとした時、ユウスケが先に話題を変えた。

「そういえば、俺の名前、ユウスケってどこから知りましたか?」
「エプロンに留められた名札にユウスケってデカデカと書いてありますよ」
「あっ・・・確かに。すっかり忘れていました。ところで、お兄さんの名前、伺ってもいいですか?」
「俺はタカシって言います」
「タカシさんですね!また来店してもらいたいので、しっかり覚えておきます!」




俺はこの時、店員と客の関係であることにハッと気付かされた。ついつい恋愛対象としてユウスケのことを見てしまっていた。

その瞬間、俺の心は再び地上から地中へと潜るように沈んでいく。
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