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休職

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俺は自宅マンションを出てマップに表示されたカフェへと歩いて向かう。

すでに外は陽が完全に落ち、昼間の陽気とはうって変わり冷たい北風が吹いている。暖かい家から出て外出する判断をしたことに若干の後悔を感じつつ、俺はマンションの裏路地へと入ってゆく。

家から5分ほど歩いた住宅地の一角にそのカフェはあった。

店の名前はCafeMoon。

店の中を伺うことはできず、更に入口には目立つような看板はなく、ドアにひっそりと小さなプレートが引っ掛けられていた。
これじゃあ気づかない人も多いだろうな。
そう思いつつ、俺はドアノブを回してドアを開けた。



店内は10席もないくらいのこじんまりとした広さで、薄暗い店内は店名そのまま夜に月明かりだけが明かりを灯しているような雰囲気だ。

奥には店員らしき若い男性がカウンターに座り、スマホを触っていた。俺が入店するやいなや、慌てた様子で立ち上がり、入口近くの注文カウンターへと小走りにやってくる。

「い、いらっしゃいませ。何にしましょうか?」

店員はあまり接客に慣れていないのか、とても緊張しているように見える。声を小さく、正直、聞き取りにくかった。

俺はカウンターに置かれたメニュー表を見て、どれにするか選ぶ。

「ブレンドコーヒーのMサイズを一つ、お願いします」
「ハイっ!ブレンドコーヒーのMサイズをおひとつですね。かしこまりました!」

さっきの小さな声とはうって変わって、無駄に元気のいい返事だ。店内の薄暗い雰囲気とはアンマッチに感じたが、店の雰囲気と店員の態度が相反することは珍しいことではないと思い、特段気にせずにレシートを受け取る。

「おかけになってお待ちください」

俺は店内を眺め、テーブルではなくカウンター席に座った。その理由は、2人がけのテーブルを一人で使うのは申し訳なさを感じたからだ。もしくは、せっかくコーヒーを飲みにきて、一人でテーブルに座るのは寂しさを感じたからかもしれない。
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