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休職

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「佐藤さん、どうぞ」

診察室に入ると、先週と同じように近藤先生が座っている。

「さぁ、その後いかがですか?」
「休職しました」
「そうでしたか」

あんたがそう診断書に書いたから休職することになったんだろうが。俺はそう言いたい気持ちになったが、口に出すことはなく淡々と近藤との会話を続ける。

「仕事を離れて楽になりましたか?」

なんて答えることが正解なのか。今の俺には分からなかった。今までは相手が望む模範回答を答えていた俺にとって、今は頭が働かず、模範回答が浮かばない状況に陥ってる。頭の中をぐるぐると回答例が錯綜する。

その時、近藤が言葉を発した。

「正直に答えていいんですよ。佐藤さん、あなたはとても真面目な方です。相手が求める回答をしようと常に思っている。ただ、今は私に配慮する必要なんてないのです。あなたが思っている通りのことを話してみましょう」

俺は近藤の話に背中を押され、初めて正直に自分の気持ちを発した。

「楽になりました。自分の中で溜まっていた仕事を全部手放せたので」

近藤はにっこりと微笑み、「まずは第一歩ですね」と言った。




俺にとって仕事は悪だったのか。
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