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限界点

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精神科は15時に予約している。俺は時間の10分前にクリニックの入るビルの前に到着した。エレベータのボタンを押して扉が開くのを待っていると、俺の隣に男性がやってきた。その人は死んでいるような目をしてエレベータの扉が開くのを待っていた。スーツはクタクタで、髪もボサボサ。

俺はこんな容姿にはなりたくないと思った。

エレベータが到着して扉が開くと最初に乗り込み、どこの階ですか?と問うと、クリニックとは別のフロアのボタンを無言で押す。

なんだ、この人は患者じゃなかったのか。俺はそう思ったのも束の間、クリニックの入るフロアに到着。そこで降りることに対して羞恥心があったが、結局はその男性の視線を感じつつ、エレベータを降りる。



クリニックで受付を済ませ、待合室にある長椅子に腰掛ける。周囲を見渡すと4名の患者が座っている。その内、2名は付き添いの人がいる。付き添われている男性2人は明らかに何かを抱えているような容姿をしている。先ほどのエレベータで乗り合わせた男性のように、髪はボサボサで清潔感のない服装をしている。そして、小刻みに膝を揺すっており、隣同士接しているこちらの長椅子にも振動が伝わってくるほどだ。他方、付き添いの親と思われる高齢女性は疲労困憊の様子で、目を閉じて眠っているようだ。

他には若い女性が1名、俺と同い年くらいの男性が1名いる。この2人は俺と同じようにまともな服装をしており、見た目ではうつ病には見えない。

きっと俺もうつ病患者のカテゴリではこの人と同じレベルかと思いたい。自分の心の中で、まだ自分はうつ病ではない、という気持ちが働いている。昨日までちゃんと仕事をして休むことは一切なかった。そんな俺がいきなりうつ病になるわけない。そう思いつつ自分の順番を待った。
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