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限界点

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そして、俺自身の限界点がやってきたのだ。


ある時、俺は自分の頭が思考停止状態に陥っていると気がついた。



今までであればスッと線をひけたスケジュールが全く考えられなくなっていたのだ。



こうなってしまうと何をやっても後手になってしまう。

「先輩?大丈夫ですが?」
俺が遅れが出始めているプロジェクトのスケジュールをパソコン画面に表示したまま、ぼーっとしている様子を見て、三島が声をかけてきた。

「あぁ、大丈夫だ」
「先輩、あまり体調が優れない感じじゃないですか・・・?」
「大丈夫だって言ってるだろ!」

俺は大きな声を上げてしまった。

「すっ、すいませんでした」
三島は俺の怒鳴り声に驚き、その場を立ち去って自分のデスクに戻った。




俺は一体何をやっているのだろう。自分の感情がコントロールできない。




「佐藤、ちょっといいか?」
「はい、佐伯部長、何でしょうか?」

佐伯が俺に声をかけてきて、珍しく扉のついた会議室に呼び出された。
何を言われるのか察しはついている。先ほどの声を荒げた一件についてだろう。職場の風紀を乱してしまった。それについて何か言われるのだろうと構えながら、会議室の椅子に着席した。佐伯はこちらをじっと見つめ、腕組みしながら難しい顔をしている。

「佐藤、今の精神状態はどうだ?」
「はい、問題ありません」


嘘だ。本当は頭が回らなくて困っている。しかし、佐伯が望んでいるのは仕事のできる俺だ。期待しているパフォーマンスを発揮できない部下なんて望んでいない。なので俺は佐伯の期待している部下を演じる。それがサラリーマンのあるべき姿だ。俺はそう思っていた。

しかし、次に佐伯から言われた言葉は、俺をどん底へ落とすものだった。




「佐藤、一度病院に行ってみたらどうだ?その、精神科というところだ」
「え?俺がですか?」



精神科。俺には無縁だと思っていた場所だ。
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