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【煌めきLEVEL/04】
*旅行のお誘い
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飲み物を飲み干し、本屋さんに向かった。
ヒロ君が国立大を目指しているという衝撃を受け、私は自分の価値を考えてしまう。
私は本当に漫画家になって良かったの?
目指していたものは何だった?
考えれば考える程、答えは見つからない。
駅ビルの中にある本屋さんで、入り口付近には漫画の紹介コーナーがあった。
以前は漫画コーナーの前に置かれていたのに配置換えをしたのだろうか? 見渡してみると本棚は配置換えをしてない様だった。紹介コーナーだけが大きなスペースに移ったみたい。
「カナミちゃんは漫画読む? ……読まないか。カナミちゃんは興味なさそうな感じがするもんね……」
「あ、えっと……」
漫画の紹介コーナーは入り口なので、ヒロ君の目に真っ先に入った様だった。心做しか、ヒロ君の目が輝いている気がする……
「この漫画、知ってる? ……って、少年漫画だから知らないか」
ヒロ君が指をさしたのは私の描いている漫画だった。
「俺は昔から漫画やゲームが大好きだから今だに読むし、ゲームもしてる。以前よりは興味は薄れてきたけれど、たまたま週間漫画を立ち読みした時に面白いのがあって、また再熱した。この漫画だけは全巻揃ってる」
嬉しそうに話しているヒロ君が可愛い。
私の漫画が紹介コーナーに全巻揃って平積みにされていた。先日出たばかりの新刊も沢山置いてあった。嬉しい事に新刊を手にしては、レジに並んだ人もいる。
ヒロ君も新刊を手に持ち、参考書を見に行った。私達は本屋さんでは別行動にすることにした。
まさかのまさか、ヒロ君が私の漫画を読んでいたなんて!! しかも、私の漫画のコミックスを全巻持っててくれている!!
素性は明かせないけれど、それを描いているのは私です。
飛び上がる程に嬉しくて、心の中が舞い上がっている。
私は紹介コーナーから離れて、雑誌コーナーへと向かった。流行り物とファッションのチェックの為に雑誌を二冊購入した。
その後、ヒロ君も私の漫画の新刊と参考書を買っていたみたいだった。
何だかんだ言ってもヒロ君は勉強家だなぁ。ヒロ君は勉強に時間を割かなかっただけで、苦手ではなかったから進学校にも受かったんじゃないのかな? 話を聞いていたら、中三からの追い上げが凄かったみたいだから。私はついて行くのに必死だったから、ヒロ君の方が頭が良い。
持って生まれた天性はこういうことだ。
***
今日の外食は中華になった。
ヒロ君が「お腹が空いたから沢山食べたい」と言って、テーブルバイキングの中華のお店を見つけて即決だった。
久しぶりに食べるお店の中華料理。
私達は海老好きなのでエビチリにエビマヨに海老焼売など、傍から見たら笑ってしまう程に海老尽くしだった。
「中華料理では、エビチリが一番好きです」
「俺もエビチリ」
ヒロ君と一緒に取り分けて食べる中華料理がとても美味しい。こんな楽しい来る日が来るだなんて、あの時からは思わなかった。
自分からの第一歩を踏み出しただけで、素敵な日々を手に入れた。
ヒロ君は彼氏でもなく、友達でもないが、一緒に笑いあえるだけで充分。
お腹がいっぱいになった私達はスーパーにより、食料品の買い出しをした。荷物が沢山あったので、帰りはバスにした。
夜だったので、バスの利用客は少なくて良かった……
不思議だな。ヒロ君と一緒に居ると何でも乗り越えられる気がするんだ。外の暗闇でも、一緒ならば怖くない。どちらかと言えば男性の方が怖いのに、ヒロ君は怖くない。それだけ特別だと言うことなのかな?
「今日はありがとうございました。カフェと中華料理の代金払います! いくらでしたか?」
私はバス代と自分の食料品代しか出してない。以前もエビグラタンをご馳走になったのに、またご馳走になってしまった……
「俺が誘ったんだから、食事代くらい奢らせてくれる? それから今日はバイト代いらないから! 遅刻もしたし、買い出しに来ただけで何もしてないから……」
「バイト代はきちんとお支払いしますし、次に外食する時は私が出します。お手伝いしていただいてるのにご馳走になってしまうなんて申し訳ないです……」
「うーん……じゃあ間をとって1時間分だけバイト代をつけといて下さい。食事代は俺もご馳走になってるから、気にしないで。また今度、買い出しに行った時に外食しよう」
「はい、楽しみにしてます。今日はご馳走様でした」
冷蔵庫にナマ物や飲み物をしまいながらお礼を言う。短時間でも一緒に居られて、毎日が幸せ。
「……そう言えば、カナミちゃん。夏休みに旅行行かない?」
「旅行です、か……?」
「泊まりになってしまうけど、一緒に"旅"に行きませんか? 当然、やましい意味はないです。カナミちゃんと一緒に行きたい場所がある」
お泊まり? 旅?
私の頭の中は整理し切れていない。
「もちろん、別々の部屋にするよ。カナミちゃんが行けなかったら、俺一人でも行きたいから、その時は連休もらえるかな?」
「はい、私が行けない時はお休みして下さい。私も予定を調整してみますね!」
調整すると言ったのは良いが、原稿間に合うかな? 一回だけお休みにしてもらおうかな?
アシスタントさんも来てくれるし、二日位は休んでも平気なのかな?
とりあえずは対馬さんには相談してみよう……
ヒロ君が帰った後に対馬さんと福島さんが来てくれた。しばらく来ないかも? と言っていたのに、対馬さんは早速来てくれた。
「先生、何処かにお出かけしてたの? 可愛い格好してるから……」
福島さんは不思議そうに私を見る。
「え? ちょっと買い出しに行って来ました」
「夕方にですか? 珍しいですね」
私は夕方にはなかなか出かけないので、不審に思われているみたいだ。
「違うでしょ、福島。ヒロ君が着てたから可愛い格好をしてただけじゃないの?」
「それもそうですね!」
勝手に二人で問題を解決したらしい。買い出しに行って来たのは本当だけれど、ヒロ君と二人で行って来た事は黙っていよう。それよりも……!
「対馬さん、折り入って相談があります。一回だけ連載を休めますか?」
「え、どうしたの、急に? 体調悪い? 学校の件かな?」
対馬さんは驚きを隠せない様子で、少しだけ慌てている。
「ち、違うんですっ……! 実は…りょ、旅行に行きたくて……」
「どこに?」
「わ、分かりません!」
「分からないって今から決めるのかな? 友達や家族の旅行だったら、全然OKだよ。カナちゃんは頑張ってくれてるから一回休んでも大丈夫だと思うよ」
「ありがとうございます!」
行先も日程も分からないが、今からウキウキしている。友達なんていないから、旅行に行った事もない。問題は本当の事を黙っているか、どうか……
「カナちゃんは三回分のストックはあるから休まなくても平気かな? どうだろう? アシスタントさんも来てくれることになったから進み具合では穴開けなくても大丈夫かもしれないよね。まぁ、とりあえずは編集会議にかけてみるね」
「あ、あの……実はっ……!」
「んー? 何、顔を真っ赤にして。もしかしてだけど……」
対馬さんに正直に伝えようとして、ヒロ君の事を思い出したら顔に火照りを感じた。付き合っているとか友達でもないけれど、一緒に旅行に行くんだ。この際、一緒に行けるのならば肩書きなんて何でも構わない。
「ヒロ君と一緒に行くの? 二人で?」
対馬さんにはお見通しだった。私はコクンとうなづいて、それ以上は口を開かなかった。
「カナちゃん、ヒロ君と付き合ってるの?」
問いかけに首を振る。
「カナちゃん……付き合ってもいないのに男と二人きりで旅行に行くなんてありえない。やめなさい!」
珍しく、対馬さんは私のことを冷ややかな目で見てきた。
「先生……! ヒロ君って飯スタントの? ダメですよ、絶対、ダメです! 二人きりなんて許しません! うぅ……先生が私の知らないところに行ってしまう……」
福島さんにも反対された。
そりゃそうか。付き合っても居ない男の子と二人きりは駄目だよね。部屋は別々でも駄目なのかな?
「部屋は別々にすると言ってましたし、私が行けなくても行くとも言ってました。行き先は聞いていません」
「じゃあ、詳しく聞いてみて! 話はそれからだよ」
対馬さんはヒロ君の話題になると機嫌が悪くなる。福島さんは私がヒロ君と二人で出かけると言ったからショックを受けているらしい。
明日、ヒロ君に詳しく聞いてみよう。
ヒロ君が国立大を目指しているという衝撃を受け、私は自分の価値を考えてしまう。
私は本当に漫画家になって良かったの?
目指していたものは何だった?
考えれば考える程、答えは見つからない。
駅ビルの中にある本屋さんで、入り口付近には漫画の紹介コーナーがあった。
以前は漫画コーナーの前に置かれていたのに配置換えをしたのだろうか? 見渡してみると本棚は配置換えをしてない様だった。紹介コーナーだけが大きなスペースに移ったみたい。
「カナミちゃんは漫画読む? ……読まないか。カナミちゃんは興味なさそうな感じがするもんね……」
「あ、えっと……」
漫画の紹介コーナーは入り口なので、ヒロ君の目に真っ先に入った様だった。心做しか、ヒロ君の目が輝いている気がする……
「この漫画、知ってる? ……って、少年漫画だから知らないか」
ヒロ君が指をさしたのは私の描いている漫画だった。
「俺は昔から漫画やゲームが大好きだから今だに読むし、ゲームもしてる。以前よりは興味は薄れてきたけれど、たまたま週間漫画を立ち読みした時に面白いのがあって、また再熱した。この漫画だけは全巻揃ってる」
嬉しそうに話しているヒロ君が可愛い。
私の漫画が紹介コーナーに全巻揃って平積みにされていた。先日出たばかりの新刊も沢山置いてあった。嬉しい事に新刊を手にしては、レジに並んだ人もいる。
ヒロ君も新刊を手に持ち、参考書を見に行った。私達は本屋さんでは別行動にすることにした。
まさかのまさか、ヒロ君が私の漫画を読んでいたなんて!! しかも、私の漫画のコミックスを全巻持っててくれている!!
素性は明かせないけれど、それを描いているのは私です。
飛び上がる程に嬉しくて、心の中が舞い上がっている。
私は紹介コーナーから離れて、雑誌コーナーへと向かった。流行り物とファッションのチェックの為に雑誌を二冊購入した。
その後、ヒロ君も私の漫画の新刊と参考書を買っていたみたいだった。
何だかんだ言ってもヒロ君は勉強家だなぁ。ヒロ君は勉強に時間を割かなかっただけで、苦手ではなかったから進学校にも受かったんじゃないのかな? 話を聞いていたら、中三からの追い上げが凄かったみたいだから。私はついて行くのに必死だったから、ヒロ君の方が頭が良い。
持って生まれた天性はこういうことだ。
***
今日の外食は中華になった。
ヒロ君が「お腹が空いたから沢山食べたい」と言って、テーブルバイキングの中華のお店を見つけて即決だった。
久しぶりに食べるお店の中華料理。
私達は海老好きなのでエビチリにエビマヨに海老焼売など、傍から見たら笑ってしまう程に海老尽くしだった。
「中華料理では、エビチリが一番好きです」
「俺もエビチリ」
ヒロ君と一緒に取り分けて食べる中華料理がとても美味しい。こんな楽しい来る日が来るだなんて、あの時からは思わなかった。
自分からの第一歩を踏み出しただけで、素敵な日々を手に入れた。
ヒロ君は彼氏でもなく、友達でもないが、一緒に笑いあえるだけで充分。
お腹がいっぱいになった私達はスーパーにより、食料品の買い出しをした。荷物が沢山あったので、帰りはバスにした。
夜だったので、バスの利用客は少なくて良かった……
不思議だな。ヒロ君と一緒に居ると何でも乗り越えられる気がするんだ。外の暗闇でも、一緒ならば怖くない。どちらかと言えば男性の方が怖いのに、ヒロ君は怖くない。それだけ特別だと言うことなのかな?
「今日はありがとうございました。カフェと中華料理の代金払います! いくらでしたか?」
私はバス代と自分の食料品代しか出してない。以前もエビグラタンをご馳走になったのに、またご馳走になってしまった……
「俺が誘ったんだから、食事代くらい奢らせてくれる? それから今日はバイト代いらないから! 遅刻もしたし、買い出しに来ただけで何もしてないから……」
「バイト代はきちんとお支払いしますし、次に外食する時は私が出します。お手伝いしていただいてるのにご馳走になってしまうなんて申し訳ないです……」
「うーん……じゃあ間をとって1時間分だけバイト代をつけといて下さい。食事代は俺もご馳走になってるから、気にしないで。また今度、買い出しに行った時に外食しよう」
「はい、楽しみにしてます。今日はご馳走様でした」
冷蔵庫にナマ物や飲み物をしまいながらお礼を言う。短時間でも一緒に居られて、毎日が幸せ。
「……そう言えば、カナミちゃん。夏休みに旅行行かない?」
「旅行です、か……?」
「泊まりになってしまうけど、一緒に"旅"に行きませんか? 当然、やましい意味はないです。カナミちゃんと一緒に行きたい場所がある」
お泊まり? 旅?
私の頭の中は整理し切れていない。
「もちろん、別々の部屋にするよ。カナミちゃんが行けなかったら、俺一人でも行きたいから、その時は連休もらえるかな?」
「はい、私が行けない時はお休みして下さい。私も予定を調整してみますね!」
調整すると言ったのは良いが、原稿間に合うかな? 一回だけお休みにしてもらおうかな?
アシスタントさんも来てくれるし、二日位は休んでも平気なのかな?
とりあえずは対馬さんには相談してみよう……
ヒロ君が帰った後に対馬さんと福島さんが来てくれた。しばらく来ないかも? と言っていたのに、対馬さんは早速来てくれた。
「先生、何処かにお出かけしてたの? 可愛い格好してるから……」
福島さんは不思議そうに私を見る。
「え? ちょっと買い出しに行って来ました」
「夕方にですか? 珍しいですね」
私は夕方にはなかなか出かけないので、不審に思われているみたいだ。
「違うでしょ、福島。ヒロ君が着てたから可愛い格好をしてただけじゃないの?」
「それもそうですね!」
勝手に二人で問題を解決したらしい。買い出しに行って来たのは本当だけれど、ヒロ君と二人で行って来た事は黙っていよう。それよりも……!
「対馬さん、折り入って相談があります。一回だけ連載を休めますか?」
「え、どうしたの、急に? 体調悪い? 学校の件かな?」
対馬さんは驚きを隠せない様子で、少しだけ慌てている。
「ち、違うんですっ……! 実は…りょ、旅行に行きたくて……」
「どこに?」
「わ、分かりません!」
「分からないって今から決めるのかな? 友達や家族の旅行だったら、全然OKだよ。カナちゃんは頑張ってくれてるから一回休んでも大丈夫だと思うよ」
「ありがとうございます!」
行先も日程も分からないが、今からウキウキしている。友達なんていないから、旅行に行った事もない。問題は本当の事を黙っているか、どうか……
「カナちゃんは三回分のストックはあるから休まなくても平気かな? どうだろう? アシスタントさんも来てくれることになったから進み具合では穴開けなくても大丈夫かもしれないよね。まぁ、とりあえずは編集会議にかけてみるね」
「あ、あの……実はっ……!」
「んー? 何、顔を真っ赤にして。もしかしてだけど……」
対馬さんに正直に伝えようとして、ヒロ君の事を思い出したら顔に火照りを感じた。付き合っているとか友達でもないけれど、一緒に旅行に行くんだ。この際、一緒に行けるのならば肩書きなんて何でも構わない。
「ヒロ君と一緒に行くの? 二人で?」
対馬さんにはお見通しだった。私はコクンとうなづいて、それ以上は口を開かなかった。
「カナちゃん、ヒロ君と付き合ってるの?」
問いかけに首を振る。
「カナちゃん……付き合ってもいないのに男と二人きりで旅行に行くなんてありえない。やめなさい!」
珍しく、対馬さんは私のことを冷ややかな目で見てきた。
「先生……! ヒロ君って飯スタントの? ダメですよ、絶対、ダメです! 二人きりなんて許しません! うぅ……先生が私の知らないところに行ってしまう……」
福島さんにも反対された。
そりゃそうか。付き合っても居ない男の子と二人きりは駄目だよね。部屋は別々でも駄目なのかな?
「部屋は別々にすると言ってましたし、私が行けなくても行くとも言ってました。行き先は聞いていません」
「じゃあ、詳しく聞いてみて! 話はそれからだよ」
対馬さんはヒロ君の話題になると機嫌が悪くなる。福島さんは私がヒロ君と二人で出かけると言ったからショックを受けているらしい。
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