白薔薇の聖女

紫暮りら

文字の大きさ
上 下
21 / 33

20 ロゼ様

しおりを挟む
 私は食堂へ続く道をニーネ、レイン、ルゥエの3人と歩いていた。外はすっかり暗くなり、少し肌寒さを感じる。

 あの後、ここに来てからずっと思っていたことを3人に告げた。「『聖女様』と呼ぶのはやめて欲しい」と言ったのだ。
 それではなんと呼べばいいのかわからないと言うからロゼでいいと言ったのだが、様をつけないのはありえないというニーネの言葉により「ロゼ様」と呼ばれることになった。
 様も必要ないと思ったが意外と頑固なニーネを説得することはついぞ叶わず、結局様付けで定着することになった。それでも最初よりは凄く仲良くなれたと思っている。

(ロゼ様、なんだか嬉しそうですね。)
 レイに話しかけられ、また心を読まれたのかと思っていると、(そんな顔してました)と言われ疑ってしまったという罪悪感が湧いた。
「うん、みんなと仲良くなれて嬉しい。」
 そう素直に感想を伝える。
「せいじょさまぁ~あしたはどしゃぶりのよていだから、おへやにいなきゃだめだよぉ~?」
「えっ、そうなの?」
(ルゥ、もうそれはいいだろ…)
 にししと笑うルゥにやれやれと言った表情のレイ。
 そしてそれを姉の笑顔で眺めるニーネ。

 守護番号9番のニーネ
 守護番号11番のレイン
 守護番号12番のルゥエ
 彼らのスキルとしての番号も教えてもらった。
 レインとルゥエに関しては自分の信頼するひとには愛称として「レイ」「ルゥ」と呼んでもらっているらしく、私もその呼び方で呼んでくれとの事だった。
 出会ってまだ一日と経っていないのにいいのかと訪ねると2人して「ロゼ様は信じられる」というのだから、嬉しい反面心配になってくる。
 ちなみにニーネは誰に対しても「様」を付けるそうで、名前だけで呼んでいるのは自分のあとに生まれたスキルだけだそうだ。

 月明かりだけの廊下はまだ長い。
 ちらり、と窓の外に目をやると地球から見るよりもかなり近くに月があるのがわかる。
 それでもかなり高くに位置しており、見上げる度に首が痛くなった。
 星も肉眼でもおぼろげだが大体の形がみえる。やはりそれだけ近くにあるということなのだろうか。
 リアルとのギャップに若干の違和感を感じつつ顔を戻したところ、行く先から明かりが漏れていることに気がついた。

「ロゼ様。ここが食堂です。」
 ニーネは緊張しているようだ。
 大きな扉は木でできており、ニーネが開こうとすると木、特有のギィ…という音が静かに響く。
 何故かその音に安心する。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

私の知らぬ間に

豆狸
恋愛
私は激しい勢いで学園の壁に叩きつけられた。 背中が痛い。 私は死ぬのかしら。死んだら彼に会えるのかしら。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

会うたびに、貴方が嫌いになる

黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。 アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...