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第8話

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 「ねえ、カルレーヌ。あれ何?」
 「雑貨屋よ」

 ラピレは見たいと私をジッと見つめる……やめて、私それに弱いのよ!

 今日は、近くの村に来ていた。月に一度ほど家族で来ている。ちょっとした買い出しをする為に来てるんだけど、今回はラピレの事も何か情報がないか聞く予定もあった。
 結局、森には誰も来ていない。なら村に探しに来ているかもと思ったが、それらしき人物は見当たらなかった。

 なぜ探しに来ないのか。森に逃げてきたけど、本来向かう目的地と程遠い場所だったのか? だとしたらラピレの記憶が戻るのを待つしかないけど。

 「ごほん。いいわよ。入りましょう」
 「やったぁ」

 村に一軒しかない雑貨屋さん。いや、何でも屋と言うべきか。
 ラピレは、物珍しそうに見ている。
 このごろ本当はもう記憶が戻っているんじゃないかと思う時もあるけど、こうやって物珍しそうに見ているのを見ると、記憶は戻ってないのかもしれない。

 「ねえ、これ、カルレーヌに似合いそう」

 葉っぱの形の髪留めを私の髪にスーッとラピレは当てた。

 「もう私のはいいのよ。じ、自分の選んだら?」
 「僕の? うーん……じゃこれ」
 「なぜ、軍手!?」
 「僕専用のないし……」

 ないって……。畑仕事や森で土をちょっと掘ったりする時に使ってはいるけど、家にあるの使っていいのよ?

 「もっとこう特別な感じでほしいのないの?」
 「あ、じゃ帽子は?」

 そう言って手にとったのは、麦わら帽子。仕事関係から離れなさいって。

 「はい。どうせならこれにしなさいよ。似合うわよ」

 ポンっとハンティング帽をラピレの頭に乗せた。紺色のハンティング帽をかぶるとちゃんと男の子に見える。
 ラピレは、髪が伸び遠目に見ると女の子に見えるのよね。白い肌で華奢だし。

 「それ買ってあげる」
 「え? いいの? 高くない?」

 私はにっこり頷く。そうすると嬉しそうにありがとうとラピレは帽子をかぶり直した。
 もしこのまま迎えにこなかったらそのまま家族でもいいかな。って勝手に思い始めていた。
 一緒にると楽しい。ラピしか見えないけど、精霊が見えるから三人で会話できるし。ずっと一緒に居れないかな。

 私は、ラピレを探している人がいなかった事にホッとしていた。そして、このまま記憶が戻らない事も望んでいる自分に気がつき、ため息がもれる。
 彼の幸せを考えれば、本当の家族の元に帰るのが一番だと言うのに――。
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