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8――魔素の雨

29話目

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  「それ、いつの話ですか!」

 マイルさんが。俺の手を掴み顔を近づけて聞いて来た。
 あの、近いんですけど。

 「えっと、今日……いや、違うか昨日かな。川を見つけたんで行ってみたら、魔素があるようだったんで……」

 「魔素の雨が降ったのか……。なんて事だ! すぐに魚などの魔素鑑定をしなくては!」

 「え? あ、マイルさん!」

 掴んでいた俺の手を離すと、ぴゅーっと建物へ入って行く。シールドは解除したみたいだ。
 それにしても魔素の雨ってなんだ?

 「魔素の雨か……」

 「あの、それって普段降らないようなものなんですか?」

 「うん? 知らないやつがいたとは……」

 問うと男は驚いた顔をした。
 常識なのか……。

 「あ、俺、どうも記憶喪失みたいでさ、そういうのわからないんだよね」

 「なるほどな。それで志願して魔力を吸い取りに行ったのか。いやぁ、勇敢だなっと思ったら恐ろしさを知らないだけだったか」

 マイルさんと同じ反応だ。
 やっぱりそうなるのか。

 「おっと、失礼。君のお蔭で助かったよ」

 「はぁ……」

 「魔素の雨だったな。名前の通り魔素を含んだ雨だ。なぜか人があまりいない所に降る事が多い。その雨が降ると、川も一時的に魔素に汚染されるんだ。魔素の霧が発生し暫く魔素が付近に充満するらしい。まあその魔素の霧に気づかずにその場にいたらあいつみたいになって、死ぬかもな」

 そっか。あの魔素が充満した場所って、魔素の霧だったんだ。
 いやぁ、俺が普通の人間だったら死んでたのか……。死ぬのか?

 「あれ? 体に負荷をかけるだけじゃないのか?」

 「その場所に居れば、ずっと魔素が抜けないからな」

 死ぬまであの行動をって事か。嫌だなそれ。
 いっぱい取り込んでも大丈夫だけど、気を付けよう。

 「しゅんさーん!!」

 うん? マイルさんが凄い勢いで戻って来た。

 「あなた、魔素が充満した場所を通りませんでしたか? 魔素を抜かないと、あなたまで大変な事に!」

 「え!? あ、大丈夫。さっき、そう思ってクリーナーじゃなかった、魔素装置で抜いたから」

 俺は、慌てて魔素装置を体の後ろに隠した。
 本当は、そんな事をしていないので、数値を見れば吸い取ってないとばれる。

 「いくつでした?」

 「へ? えーと……」

 こっそりと魔素装置で、一瞬だけ自分の魔素を吸い取った。

 「どうだったかな……」

 クルッと後ろを向き、魔素装置の数値を確認する。『12』と表示されている。
 よかった。これなら誤魔化せる。

 「12ですか」

 びっくりした。一緒にマイルさんも覗いていた。

 「これで一旦ゼロになりましたが、近づいちゃダメですよ!」

 「えっと。どうするんですか? 川とか魔素の霧とか」

 「もしかして、記憶が戻ったんですか!」

 「あ、いえ。教えて頂きました」

 「いやぁ。無茶な事をする少年だと思ったけど、記憶がなかったんですね」

 マイルさんは、大きく頷いた。
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