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3――魔素

12話目

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 俺は走っている。
 別に追われているわけでも青春を謳歌しているわけでもなくて、検証の一つだ。
 魔素強化は、オートで発動するらしい。
 早く走りたいと思っただけで走れる。ただし、レベル1だと五分間だ。魔素消費は5。
 一時間だと60消費する。まあ大丈夫だろう。

 「おぉ、見えて来た!」

 やっと街に到着だ!
 って、チロも同じスピードで走っていた。ドラゴン恐るべし。

 「うーむ。検問みたいのやってるな。動物って入れるのかな。チロおいで」

 俺はチロを抱き上げた。
 暇そうに門番が立っている。

 「あの……入ってもいいですか?」

 「うぉ! びっくりした。え? 歩いて来たの? どこから?」

 素直に出て来た森を指差す。

 「は? ないない。あそこは、神龍様がいる場所だろう?」

 「神龍様? チロおまえ……」

 チロを顔の高さまで掲げて覗き込む。
 いずれ神龍になるのか?

 「で? 身分証明書はあるか?」

 「いえ、ないです。この子も入れますか?」

 「猫か……。宿なとには入れないかもしれないが。探求者か?」

 「はぁ……まあ」

 「非登録の探求者か。じゃ、この魔法陣を踏んで」

 うん? 魔法陣?
 うをぉ! よく見ると地面に魔法陣が描かれている。すげぇ。

 「これ本物だよな?」

 「何変な事を聞いているんだ。当たり前だろう?」

 「あ、すみません」

 俺は、嬉しさのあまり変な質問をしてしまった。
 魔法陣まであるなんて、俺も自分でいつか描いてみたいな。
 魔法を使うより俺的には、やってみたいな。
 よっと。魔法陣の上に立った。

 「大丈夫みたいだな。入っていいよ」

 「あ、どうもです」

 俺は、街の中に入った。
 人の二倍の高さ程の塀に囲まれた街。
 凄い。人がいっぱいだ。いや当たり前なんだけど。
 ここに来るまで、出会わなかったからな。
 うん? あれは! ケモミミじゃないか!!

 「すげぇ。この街、夢が詰まってる!」

 『夢?』

 「あ、いや、何でもない」

 俺は辺りを見渡す。そして耳を澄ます。
 人の話し声が聞こえる。しかも日本語に聞こえる!
 って、よく考えれば俺、さっきの門番と話したじゃないか。
 後は文字だよなぁ。
 あ、読める。『ドラゴンの宿』だって。
 宿屋を見つけてもお金を手に入れる方法を探さないと泊まれないよな。
 うーん。
 冒険者じゃなかった探求者でお金を稼ぐ方法ってなんだ?
 そういえば、この世界にはモンスターはいないんだっけ?
 襲って来るのは、魔素化した動物だもんな。
 だから冒険者はいないのか?
 チロに聞くにしても他の人からしたら独り言だよな。
 どこか路地に入って……。
 左手に路地発見!
 俺はそこに向かった。
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