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歓迎されてるのかいないのか 3
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階段を上り、ドアを開けた場所は広かった。ランゼーヌの部屋の倍以上あり、呪いの箱庭に面した壁一面にカーテンがひいてある。なので、広々した部屋は薄暗かった。
明かりはある。壁に設置されているランプは灯っていた。
「随分と薄暗いのですね」
クレイが言う。
「そちらのカーテンを開ければ明るくなりますが、開けますか?」
「開けていいのなら、開けましょう」
「え!?」
シャー。
リラが驚くも、クレイは気にも留めない様子でカーテンを開けた。
カーテンを開ければ、森林を先程より高い位置から一望できる。
呪われた箱庭は、森林の一部だけのようだ。この部屋からは、呪われた箱庭が全貌できた。
(思ったより広くないわ。でもやっぱりあの大樹が中心なのね)
「お嬢様、不気味です」
いつもは気丈なリラが、ランゼーヌにしがみつく。
膝位から壁一面がほぼガラスで、まるで森を眺める為に作られた窓の様だった。
「もしかしてこの部屋は、あの箱庭を監視する部屋だったのですか?」
「さすがに鋭いですね。そうです。今は監視はしておりませんし、この部屋の存在を知る者もほとんどおりません」
クレイの問いにバローニが答える。
その昔、呪われた箱庭を監視する為だけに作れた部屋。今は、ただの物置と化していた。
窓は、嵌め殺しになっていて開閉はできない。
この窓とは反対側の壁に、小さなドアが一つぽつんとあった。それが、ランゼーヌ達の部屋だ。
「こちらへどうぞ。まずは、休みましょう」
その部屋のドアをバローニが開けると、祈りの間と同じ程の大きさの部屋だった。
大きなゆったりとした二人掛けのソファーが、大理石のテーブルを挟み二つセットされている。
その他にも、食事をする為のテーブルも奥にあった。
左手には、大きなドアが一つ。右手にはドアが三つ。正面には、窓も扉もない。つまりこの部屋には、窓がなかった。
「……本当は、私達は幽閉とかじゃありませんよね?」
「滅相もありません!」
リラが、不安になりボソッと呟くと、バローニが慌てて否定する。
「では、なぜこんな窓もない部屋なのですか? 向こうなんて逆に大きな窓があるではありませんか! 嬉しくはありませんが……」
「まず、聖女様がもともと住まう建物には、賊の侵入を防ぐ目的で客間以外には窓はありません。そして、聖女ランゼーヌ様は、ここにいらっしゃる事自体を隠しておられますので、必然的に窓がない部屋となります。大変窮屈な思いをなさるかもしれませんが、ご了承下さい」
「……そうなのですか」
ランゼーヌもバローニの答えに驚いた。
陽に当たるなら祈りの間に行くしかない。だがそこから見えるのは、美しいとは言い難い景色。
ランゼーヌは平気だが、リラは平気ではなさそうだ。
「リラ、無理そうなら家に戻っていていいわ」
「それはなりません」
侍女を違う人にしてもらおうとランゼーヌが言うと、バローニが拒否した。
「彼女はもう、王宮の侍女として雇われています」
「「え!!」」
「誓約書兼契約書に、そう書いてあったと思いますが」
リラは、バローニにそう言われるも、中身などほとんど目を通していなかった。
どうせ拒否権はないし、まさか誓約書が、契約書も兼ねているとは思ってもいなかったのだ。
「それって、お嬢様のお世話を辞めると無職という事でしょうか」
「はい。そうなります」
「………」
リラが、俯いた。愕然としている様子だ。
「リラさん、心配はいりません。私も王宮に勤めていますが、呪いの話など聞いた事はありませんでしたのでそれほど怯えなくても大丈夫です」
「クレイ様……ありがとうございます。そうですよね」
「立ち話もなんですから、ランゼーヌ様、お座りください」
「そ、そうね」
ランゼーヌは、バローニに促され立派なソファーに座った。ほどよい柔らかさ。そして、気持ちいい肌ざわり。
さすが、王宮内にあるソファーだと、ランゼーヌは感心する。
「では、落ち着いたところで、この部屋の説明をさせて頂きます。祈りの間を背にして左手の扉は、廊下へと続いております。ランゼーヌ様はこちらからは、出入りしないで頂くようお願い申し上げます。この周りには、誰もおられないと思いますが、万が一鉢合わせをしては困りますので」
ランゼーヌは、わかったと頷く。
「そして、その反対側の三つの扉は、向かって左側は騎士が休憩するお部屋です。真ん中が聖女様の寝室となり、その奥は湯あみの部屋になっております。クローゼットなども寝室にございます。最後に、右の扉は侍女の休憩室となっております」
三人は、三つの扉に振り返り頷いた。
「お客様が来る事はないとは思いますが、来た際には、この場所にてお会い下さい。また、祈りの間には、聖女様と騎士様以外は入る事は今後ないようにお願いします」
つまり、リラは一緒について行ってはいけないという事だ。
「祈りの間の扉は、常時閉じた状態で開けっ放しはしないように、お願いします」
「あの、祈りの間は掃除はしないのでしょうか?」
リラが、おずおずと尋ねる。
「それは、彼の仕事になります」
にっこり微笑んでバローニは、クレイを見て答えた。
「え! 精霊の騎士って掃除まで行うのですか?」
今までは、リラが驚いて声を上げていたが、今回はランゼーヌが声を上げた。
「はい。祈りの間での事は、精霊の騎士が行います。なのでリラ殿も覚えておいてくださいね」
「……はい」
「それと、クレイ殿」
「はい」
「夕飯後の三時間は、他の騎士と交代になり、我々にご報告と用事を済ませる時間となります」
「わかりました」
(なんだか、私より精霊の騎士のクレイ様の方が大変そうだわ)
「最後に、ご用の際はこちらに触れて下さい」
廊下へと続くドアの横の壁に、ランプがありそれに触れると明かりがついた。
「これは、侍女を呼び出すベルとなっております。その際、万が一の為に騎士も一人ついてきます」
「はい……」
「また、向こうも訪ねて来る際は、合図の為にこちらに明かりが灯りますので、合図がなしに誰かが来た場合には、むやみに扉を開けないようにしてください」
こくこくと、リラとランゼーヌは頷く。
「心得ました」
「それと……」
さきほど最後と言ったのに、まだ話があるようでリラもランゼーヌも少しぐったりとしてしまうのだった。
明かりはある。壁に設置されているランプは灯っていた。
「随分と薄暗いのですね」
クレイが言う。
「そちらのカーテンを開ければ明るくなりますが、開けますか?」
「開けていいのなら、開けましょう」
「え!?」
シャー。
リラが驚くも、クレイは気にも留めない様子でカーテンを開けた。
カーテンを開ければ、森林を先程より高い位置から一望できる。
呪われた箱庭は、森林の一部だけのようだ。この部屋からは、呪われた箱庭が全貌できた。
(思ったより広くないわ。でもやっぱりあの大樹が中心なのね)
「お嬢様、不気味です」
いつもは気丈なリラが、ランゼーヌにしがみつく。
膝位から壁一面がほぼガラスで、まるで森を眺める為に作られた窓の様だった。
「もしかしてこの部屋は、あの箱庭を監視する部屋だったのですか?」
「さすがに鋭いですね。そうです。今は監視はしておりませんし、この部屋の存在を知る者もほとんどおりません」
クレイの問いにバローニが答える。
その昔、呪われた箱庭を監視する為だけに作れた部屋。今は、ただの物置と化していた。
窓は、嵌め殺しになっていて開閉はできない。
この窓とは反対側の壁に、小さなドアが一つぽつんとあった。それが、ランゼーヌ達の部屋だ。
「こちらへどうぞ。まずは、休みましょう」
その部屋のドアをバローニが開けると、祈りの間と同じ程の大きさの部屋だった。
大きなゆったりとした二人掛けのソファーが、大理石のテーブルを挟み二つセットされている。
その他にも、食事をする為のテーブルも奥にあった。
左手には、大きなドアが一つ。右手にはドアが三つ。正面には、窓も扉もない。つまりこの部屋には、窓がなかった。
「……本当は、私達は幽閉とかじゃありませんよね?」
「滅相もありません!」
リラが、不安になりボソッと呟くと、バローニが慌てて否定する。
「では、なぜこんな窓もない部屋なのですか? 向こうなんて逆に大きな窓があるではありませんか! 嬉しくはありませんが……」
「まず、聖女様がもともと住まう建物には、賊の侵入を防ぐ目的で客間以外には窓はありません。そして、聖女ランゼーヌ様は、ここにいらっしゃる事自体を隠しておられますので、必然的に窓がない部屋となります。大変窮屈な思いをなさるかもしれませんが、ご了承下さい」
「……そうなのですか」
ランゼーヌもバローニの答えに驚いた。
陽に当たるなら祈りの間に行くしかない。だがそこから見えるのは、美しいとは言い難い景色。
ランゼーヌは平気だが、リラは平気ではなさそうだ。
「リラ、無理そうなら家に戻っていていいわ」
「それはなりません」
侍女を違う人にしてもらおうとランゼーヌが言うと、バローニが拒否した。
「彼女はもう、王宮の侍女として雇われています」
「「え!!」」
「誓約書兼契約書に、そう書いてあったと思いますが」
リラは、バローニにそう言われるも、中身などほとんど目を通していなかった。
どうせ拒否権はないし、まさか誓約書が、契約書も兼ねているとは思ってもいなかったのだ。
「それって、お嬢様のお世話を辞めると無職という事でしょうか」
「はい。そうなります」
「………」
リラが、俯いた。愕然としている様子だ。
「リラさん、心配はいりません。私も王宮に勤めていますが、呪いの話など聞いた事はありませんでしたのでそれほど怯えなくても大丈夫です」
「クレイ様……ありがとうございます。そうですよね」
「立ち話もなんですから、ランゼーヌ様、お座りください」
「そ、そうね」
ランゼーヌは、バローニに促され立派なソファーに座った。ほどよい柔らかさ。そして、気持ちいい肌ざわり。
さすが、王宮内にあるソファーだと、ランゼーヌは感心する。
「では、落ち着いたところで、この部屋の説明をさせて頂きます。祈りの間を背にして左手の扉は、廊下へと続いております。ランゼーヌ様はこちらからは、出入りしないで頂くようお願い申し上げます。この周りには、誰もおられないと思いますが、万が一鉢合わせをしては困りますので」
ランゼーヌは、わかったと頷く。
「そして、その反対側の三つの扉は、向かって左側は騎士が休憩するお部屋です。真ん中が聖女様の寝室となり、その奥は湯あみの部屋になっております。クローゼットなども寝室にございます。最後に、右の扉は侍女の休憩室となっております」
三人は、三つの扉に振り返り頷いた。
「お客様が来る事はないとは思いますが、来た際には、この場所にてお会い下さい。また、祈りの間には、聖女様と騎士様以外は入る事は今後ないようにお願いします」
つまり、リラは一緒について行ってはいけないという事だ。
「祈りの間の扉は、常時閉じた状態で開けっ放しはしないように、お願いします」
「あの、祈りの間は掃除はしないのでしょうか?」
リラが、おずおずと尋ねる。
「それは、彼の仕事になります」
にっこり微笑んでバローニは、クレイを見て答えた。
「え! 精霊の騎士って掃除まで行うのですか?」
今までは、リラが驚いて声を上げていたが、今回はランゼーヌが声を上げた。
「はい。祈りの間での事は、精霊の騎士が行います。なのでリラ殿も覚えておいてくださいね」
「……はい」
「それと、クレイ殿」
「はい」
「夕飯後の三時間は、他の騎士と交代になり、我々にご報告と用事を済ませる時間となります」
「わかりました」
(なんだか、私より精霊の騎士のクレイ様の方が大変そうだわ)
「最後に、ご用の際はこちらに触れて下さい」
廊下へと続くドアの横の壁に、ランプがありそれに触れると明かりがついた。
「これは、侍女を呼び出すベルとなっております。その際、万が一の為に騎士も一人ついてきます」
「はい……」
「また、向こうも訪ねて来る際は、合図の為にこちらに明かりが灯りますので、合図がなしに誰かが来た場合には、むやみに扉を開けないようにしてください」
こくこくと、リラとランゼーヌは頷く。
「心得ました」
「それと……」
さきほど最後と言ったのに、まだ話があるようでリラもランゼーヌも少しぐったりとしてしまうのだった。
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