上 下
12 / 49

11衝撃的な出会い1

しおりを挟む
 次の日私は、小走りに目的に向かっていた。太陽が出て天気は快晴。でもやはりまだ寒い。暖かいのは、太陽が当たっている部分のみ。

 「やっぱりマフラーしてくればよかったかな……」

 四月とはいえ、北海道ではまだ春とは言えない温度。雪だって残ってる。

 「ルナ!」

 私を呼ぶ声が聞こえ声の方を私は見た。って見なくても相手は誰かはわかってる。マリアさんだ。だから大きな声でルナって言呼ばないで! って言えたらなぁ……。

 「おはようございます。あれ? 二人はまだですか?」

 時間的には集合時間ぎりぎりなので、遅刻か欠席という事になるけど。

 「おはよう、ルナ。二人ですが、昨日夜に連絡がありまして打ち合わせが入ったらしいのです。間に合えば来る事になってはおりますが……。ごめんなさいね」

 お休みのようね。毎回こういう感じなんだろうか?

 「そ、それじゃ仕方がないですね」
 「この埋め合わせは、きっちりさせますわ!」

 埋め合わせ……。本当に都合のいい人ではなく、仲間として部に迎え入れてくれたんだ。
 私は上辺だけではなく、本当にそういうつもりなんだと安心した。まあ、マリアさんは、二人を特別扱いしていないのは見てわかるし。
 私達は早速説明を聞きに行く。内容は介護老人施設の入居者のお散歩の補助。公園の端まで一緒に行って終了。
 私達以外にもボランティアの人達もいて、それぞれパートナーというか付き添う人が紹介された。
 つまり課外授業ってボランティアなのね!
 私と一緒に歩くのは、相沢さんという八十過ぎのおじいちゃんだった。

 「相沢さん、宜しくね」
 「こんな若い子とお散歩ができるなんて……」

 相沢さんは嬉しそうに笑った。
 公園にはまだ雪が残っていたが、道は綺麗に除雪されており、滑って転ぶっていう心配はなさそう。
 ルートは公園内ならどの道を通って行ってもよくて、普通に歩けば十五分の道のり。……だったんだけど、相沢さんでは無理そう。
 だって、ちまちまちまという歩き方。私は、相沢さんの横をゆっくり歩く。

 「あ……」
 「え?」

 相沢さんは何もない所でつまづいた!
 私が慌てて支えようとしたけどダメだった。私達はそのまま転んだ。

 「痛~い。……て、おも!」

 気づけば、庇いながら転んだ私は、相沢さんの下敷きに! しかも抱き合う感じに……。

 「あの相沢さん、起き上がれます?」
 「む、無理じゃ、手が……」

 もしかして怪我をした?! って、これじゃ起き上がれないよう! 兎に角誰か……。
 私が叫ぼうとしたとき、すぐ傍に気配を感じ振り向いた。
 助かった……。
 踝まである淡い緑色のスカートの女性が、手を伸ばせば届くほどのすぐ傍を通り過ぎる。
 え? 完全スルー? おじいちゃんと若い女の子が抱き合って倒れているから、見ないふり?! って、目もくれてないよね?
 考え事でもしていてって、それより……

 「あのちょっとすみません! 起こしてもらっても……」

 呼び止める声が止まってしまうほど驚いた。女性だと思っていた人は男の人だった! いや、驚いた原因はスカートだったと思っていのが、全身を包むローブのような物。髪も金髪。
 コスプレ?

 「あなたは俺が見えるのか!」

 しかも彼はそう言った! 何のキャラか知りませんがなりきってます……この外人さん。日本語もお上手で……。

 「見えてますので、おじいちゃんを起こしてもってもいいですか?」

 お兄さんは頷くと、相沢さんの脇を後ろから引っ張り上げ私の横に座らせてくれた。
 よかった。親切な人だった。

 「ありが……」
 「ルナ!」

 私は体を起こしてお礼を言うとすると、マリアさん達が駆け寄って来た。

 「ちょっと大丈夫?」
 「二人共怪我は?」

 スタッフの人は心配そうに声を掛けてくれた。私はそれに首を横に振る。

 「相沢さんが手が痛いって。ごめんなさい……」

 怪我をさせてしまった。

 「あ、手ね。それは今日ぶつけたのよね」
 スタッフの人が、持って来た車いすに相沢さんを座らせながら言った。私はそれを聞いて胸を撫で下ろす。怪我をさせたわけではなさそうでよかった。
 手を怪我しているに、自分で起き上がるなんて凄いわね」

 「お嬢ちゃん、見かけによらず力持ちだのう」
 「あら? わたくし? 何もしてなくてよ」

 マリアさんが相沢さんに話し掛けているけど会話がかみ合っていない。って、助けたのはどこぞのお兄さんです。

 「助けてくれた人は、コス……緑の服装をしたお兄さんで……」
 「緑? あらそうでしたの? 目に入りませんでしたわ」

 ちゃんとお礼を言えなかった。って、見えていなかった? あの不思議な格好を? 目立つと思うんだけどなぁ……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。 ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。 自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。 「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」 「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」  ※表現には実際と違う場合があります。  そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。  私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。  ※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。  ※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。 隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。 周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。 ※設定はゆるいです。

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」 そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。 彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・ 産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。 ---- 初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。 終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。 お読みいただきありがとうございます。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

処理中です...