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◆233◆ルイユとの約束

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 コーリゼさんは頷くと、鞘ごと剣をルイユに渡した。

 「ありがとう。感謝します」

 ルイユはお礼を言うと、なんとネックウォーマーに剣を絡めた!

 「主様、出番です。封印をお願いします」

 「え! 封印? どうやって?」

 「お得意なお裁縫です」

 「わー。裁縫って便利」

 イラーノが、棒読みで言った。
 確かに便利だけど、そんなんでいいのだろうか?
 取りあえず僕は、トゲムシもどきを探して剣を隠す様に絡めた。

 「どう?」

 「完璧です。取り出せるのは、私かチュトラリーになっております。まあ、キュイを殺さない限り、近づく事さえ無理だと思いますが」

 確かにそうだ。
 それにここに剣があるのを知っているのは、僕達だけだ。

 「変なお願いしてごめんね。キュイ、宜しくね」

 『承知したギャウギャウ必ず守ろうギャウギャウ

 「うん。ありがとう」

 「本当に錬金術が出来るんだな。裁縫で……?」

 ちょっと困惑ぎみにコーリゼさんが言う。

 「あはは。便利だけど自分じゃどんな効果ついているかわからないんだよね。だからルイユに出会うまでは、知らないでいたんだ」

 「あ! そうだ! すっかり忘れていた。ねえ、クテュール。俺にさ、男に見える外套作ってよ」

 「え?」

 「女性に見える外套が作れるなら逆も作れるなぁって思ってさ」

 イラーノが唐突に言ってきた。
 そう言えば前に、女性見える外套を羽織った僕をジッと見ていた事があったけど、もしかしてそんな事を考えていたとか?

 「やっと理解した。彼らが動物に見えるのは、そういう事か」

 僕達の会話で、ジーン達が動物に見えるカラクリに、コーリゼさんが気づいたみたい。

 「じゃ、あのリスもモンスターだったんだな」

 コーリゼさんは、本来のルイユの姿がモンスターだと気付いた様だけど、目の前にいるルイユと同一人物だとは思ってない。
 モンスターが、人間になる概念がないからかもしれないけど。

 「今度、布を買ったら作ってみるよ」

 「ありがとう。クテュール! でさ、モフモフしていい?」

 チラッとイラーノがジーンを見て言った。

 「モフモフ?」

 イラーノにつられて、コーリゼさんが呟きながらジーンを見る。

 「あれって犬に見えるけど、モンスターだろ?」

 「うん。でも襲ってこないから大丈夫!」

 と、イラーノが答えた。
 コーリゼさんが、引き気味だ。

 「ジーン、イラーノが撫でたいって言うけどいいよね?」

 『構わないがワンワン
 
 「やったぁ」

 返事を聞いたイラーノは、嬉しそうにジーンに抱き着いた。

 「……凄いな。うん? あれ? もしかしてイラーノもモンスターと会話できるのか?」

 「え? あぁ、俺はエルフとのハーフだからかモンスターが話す言葉はわかるみたいなんだ。って言っても、クテュールチュトラリーと出会ってからね」

 「そ、そうか。結構大人しいんだな」

 そう呟くと、コーリゼさんはジッとジーンにじゃれつくイラーノを見つめている。

 「ねえ、ルイユ」

 僕は、ルイユの隣に立った。

 「はい」

 「前にさぁ、人間のチュトラリーが一人いたって言っていたよね」

 「えぇ、おりました」

 「その人、魔女と同じ目標だったみたいな事を言っていたけど本当?」

 「えぇ、本当です。チュトラリーだと言うのに……」

 「それに協力したの?」

 「しません。私は一切手出ししなかったのです。なので、直ぐに倒されました。本当は、あなたがチュトラリーだと知った時、何故と思いましたよ。ですが主様は、今までで一番モンスターに寄り添った方でした。エルフがチュトラリーになると、お友達と言うより家来です」

 家来か。
 命令して動いてもらうって事だよね。
 僕も一応、お願いしてやってもらっているけどそれとは違うって事かな。

 「もしかしたらこれが最後かもしれない……」

 「え? 何が?」

 「チュトラリーが選ばれるのが、クテュールで最後かもしれません」

 それって、魔女を封印したから?

 「えっと。チュトラリーの本来の役目を終えたからって事?」

 「いいえ。私が誕生する地域にチュトラリーが生まれる手はずになっていました。ですが暫くは、それが上手くいっていなかったようです。私は、チュトラリーと接触しなければ、記憶が戻りません。今回もハプニングがあり、人間のあなたがチュトラリーになりました。段々、仕組みが回らなくなってきています」

 そっか。仕組みが破たんするって事か。

 「え、でも剣……」

 「そうです。もし今回、どうする事も出来なかった時の為です。キュイには迷惑をかけますが、主様が剣にさらなる封印を施したので……気休めですがね。また長い年月留めるに過ぎません」

 そっか。だったら絶対に探し出さないとダメだね。

 「僕が必ず見つけるよ!」

 「はい。期待しています」

 ルイユが、にっこりほほ笑んだ。
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