174 / 245
◆171◆独学の錬金術師
しおりを挟む
アベガルさんは、手渡した茶色のミサンガをジッと見ている。
「これはどうした? ルイユに貰ったのか?」
「いえ……僕が作りました」
消え去りそうな小さな声で答えると、え? っとアベガルさんは聞き返す。
「それは、クテュール自身が作った物です。俺のミサンガも」
「何故そんな物を?」
不思議そうにアベガルさんは聞いた。
普通の男子は、裁縫なんかしない。至極自然な質問だ。
「趣味で……」
「趣味?」
アベガルさんは、凄く驚いて聞き返した。
「そう趣味なんです。作ってもいいからミサンガぐらいにしてってお願いしたら三つも作ってくれて。帽子はお気に入りだけどね」
「その帽子も彼が作ったのか!」
帽子など普通の女子でも作らない。
唖然としてアベガルさんは、僕が作ったイラーノが被る帽子を凝視する。
「たしかに、彼のリュックには、裁縫道具と布が入ってます」
「ほれ」
納得したのか、アベガルさんはミサンガを返してくれた。
「それであのウサギにも付けていたのか」
あ、そういえば、リリンをアベガルさんは見ているんだった。
「見た目は、イラーノの方が女っぽのにな……」
女の趣味なのにと、アベガルさんはボソッと呟く。
すみませんね! でもこれ、凄く役に立ってますから。
「それについてはわかった。椅子に座ってくれて」
僕達は、さっきの椅子に座る。
あぁ、お腹空いて来た。
もうとっくに陽が落ちているが、このまま聴取を行う様だ。
「で、ルイユとはどこで出会った? 君達は、馬車でこの街に来たよな?」
僕達は頷く。
アベガルさんとは、馬車の中で出会った。その時は、ルイユはいない。
「この街で落ち合う事になっていたんです。ちょっと調べる事があるから先に行っているって」
イラーノが答える。
目を合わせないように、僕は俯いておく。
「まさかと思うが、あの森で待ち合わせていたのか?」
襲われた森の事だろう。
僕達はまた揃って頷く。
そうしないと、ルイユが森にいた説明がつかないからだ。
「お前達、おかしいと思わなかったのか? 仮にも女性が森で待ち合わせなんて……」
「えっと。彼女は、何か色々凄いアイテムを持っていて。ヒールも使えて大丈夫かなって……」
ルイユは、錬金術師。という事になっている。
女性の場合は、能力は気づかれない事が多く、マドラーユさんの様に女性で錬金術師も稀だ。
ただ気づけば独学でも出来るのが錬金術らしい。
空を飛んでいた所をアベガルさんには見られている。そう誤魔化す事になった。
「で、なぜあのエルフの森に?」
「それはさっき話した通り、俺の父親がいるって聞いて……」
「では、母親は?」
「亡くなったと聞いています」
「……そうか」
イラーノも俯いた。
ここら辺の話は、本当の事だ。まああの森が、その場所だとは行ってからわかった事だけど。
「君を育てた方は健在か?」
イラーノは、俯いたまま静かに頷いた。
それには触れられたくない。そういう雰囲気をだしている。
「名前は?」
「………」
だがアベガルさんは聞いて来た。
イラーノは、チラッとアベガルさんを見るも俯いたまま答えない。
「何故言わない? この前聞いた時もそうだったな」
「迷惑をかけたくない……」
そう静かにイラーノは答える。
「君の素性を確認する為だ」
冒険者の証には、別に親やなどの情報はない。
「クテュール。君はどうだ? 彼の親について知っているか?」
「イラーノが言いたくないって言っているに僕が答えると思う?」
僕は、顔を上げアベガルさんの瞳を見つめそう答えた。
アベガルさんは、少し驚いた顔を見せる。
「言わないと今日は、宿ではなく牢屋に泊まる事になるがいいのか?」
僕は頷く。
イラーノもやや遅れて頷いた。
「わからんな。そんなに厳しい方だったのか? まあいい。クテュールがドドイの息子かどうかは調べられるからな。夕飯を食べさせた後、牢に入れて置け」
アベガルさんはそう言うと、立ち上がった。
僕達は、ホッとする。
きっとどうせイラーノの育ての親が、ロドリゴさんだとわかるだろう。でも今、ロドリゴさんの状況がわからない。
どうなったんだろうか? できれば向こうの状況も知りたいところだ。
「お父さん……」
隣でボソッとイラーノが呟いた。
きっとイラーノが一番不安だ。
イラーノがさっき言ったのは本音だろう。
僕達は、夕飯を食べた後牢に入れられた――。
「これはどうした? ルイユに貰ったのか?」
「いえ……僕が作りました」
消え去りそうな小さな声で答えると、え? っとアベガルさんは聞き返す。
「それは、クテュール自身が作った物です。俺のミサンガも」
「何故そんな物を?」
不思議そうにアベガルさんは聞いた。
普通の男子は、裁縫なんかしない。至極自然な質問だ。
「趣味で……」
「趣味?」
アベガルさんは、凄く驚いて聞き返した。
「そう趣味なんです。作ってもいいからミサンガぐらいにしてってお願いしたら三つも作ってくれて。帽子はお気に入りだけどね」
「その帽子も彼が作ったのか!」
帽子など普通の女子でも作らない。
唖然としてアベガルさんは、僕が作ったイラーノが被る帽子を凝視する。
「たしかに、彼のリュックには、裁縫道具と布が入ってます」
「ほれ」
納得したのか、アベガルさんはミサンガを返してくれた。
「それであのウサギにも付けていたのか」
あ、そういえば、リリンをアベガルさんは見ているんだった。
「見た目は、イラーノの方が女っぽのにな……」
女の趣味なのにと、アベガルさんはボソッと呟く。
すみませんね! でもこれ、凄く役に立ってますから。
「それについてはわかった。椅子に座ってくれて」
僕達は、さっきの椅子に座る。
あぁ、お腹空いて来た。
もうとっくに陽が落ちているが、このまま聴取を行う様だ。
「で、ルイユとはどこで出会った? 君達は、馬車でこの街に来たよな?」
僕達は頷く。
アベガルさんとは、馬車の中で出会った。その時は、ルイユはいない。
「この街で落ち合う事になっていたんです。ちょっと調べる事があるから先に行っているって」
イラーノが答える。
目を合わせないように、僕は俯いておく。
「まさかと思うが、あの森で待ち合わせていたのか?」
襲われた森の事だろう。
僕達はまた揃って頷く。
そうしないと、ルイユが森にいた説明がつかないからだ。
「お前達、おかしいと思わなかったのか? 仮にも女性が森で待ち合わせなんて……」
「えっと。彼女は、何か色々凄いアイテムを持っていて。ヒールも使えて大丈夫かなって……」
ルイユは、錬金術師。という事になっている。
女性の場合は、能力は気づかれない事が多く、マドラーユさんの様に女性で錬金術師も稀だ。
ただ気づけば独学でも出来るのが錬金術らしい。
空を飛んでいた所をアベガルさんには見られている。そう誤魔化す事になった。
「で、なぜあのエルフの森に?」
「それはさっき話した通り、俺の父親がいるって聞いて……」
「では、母親は?」
「亡くなったと聞いています」
「……そうか」
イラーノも俯いた。
ここら辺の話は、本当の事だ。まああの森が、その場所だとは行ってからわかった事だけど。
「君を育てた方は健在か?」
イラーノは、俯いたまま静かに頷いた。
それには触れられたくない。そういう雰囲気をだしている。
「名前は?」
「………」
だがアベガルさんは聞いて来た。
イラーノは、チラッとアベガルさんを見るも俯いたまま答えない。
「何故言わない? この前聞いた時もそうだったな」
「迷惑をかけたくない……」
そう静かにイラーノは答える。
「君の素性を確認する為だ」
冒険者の証には、別に親やなどの情報はない。
「クテュール。君はどうだ? 彼の親について知っているか?」
「イラーノが言いたくないって言っているに僕が答えると思う?」
僕は、顔を上げアベガルさんの瞳を見つめそう答えた。
アベガルさんは、少し驚いた顔を見せる。
「言わないと今日は、宿ではなく牢屋に泊まる事になるがいいのか?」
僕は頷く。
イラーノもやや遅れて頷いた。
「わからんな。そんなに厳しい方だったのか? まあいい。クテュールがドドイの息子かどうかは調べられるからな。夕飯を食べさせた後、牢に入れて置け」
アベガルさんはそう言うと、立ち上がった。
僕達は、ホッとする。
きっとどうせイラーノの育ての親が、ロドリゴさんだとわかるだろう。でも今、ロドリゴさんの状況がわからない。
どうなったんだろうか? できれば向こうの状況も知りたいところだ。
「お父さん……」
隣でボソッとイラーノが呟いた。
きっとイラーノが一番不安だ。
イラーノがさっき言ったのは本音だろう。
僕達は、夕飯を食べた後牢に入れられた――。
0
お気に入りに追加
2,052
あなたにおすすめの小説
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)
SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。
しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。
相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。
そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。
無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!
SSS級宮廷錬金術師のダンジョン配信スローライフ
桜井正宗
ファンタジー
帝国領の田舎に住む辺境伯令嬢アザレア・グラジオラスは、父親の紹介で知らない田舎貴族と婚約させられそうになった。けれど、アザレアは宮廷錬金術師に憧れていた。
こっそりと家出をしたアザレアは、右も左も分からないままポインセチア帝国を目指す。
SSS級宮廷錬金術師になるべく、他の錬金術師とは違う独自のポーションを開発していく。
やがて帝国から目をつけられたアザレアは、念願が叶う!?
人生逆転して、のんびりスローライフ!
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
赤子に拾われた神の武器
ウサギ卿
ファンタジー
神が人々の救済の為に創られた武器、オリハルコン。
それは世界の危機、種族の危機の度に天より人々の元へと遣わされた。
神の武器は持つ者によりあらゆる武器へと姿を変えた。
持つ者は神の力の一端を貸し与えられた。
そして持つ者の不幸を視続けてきた。
ある夜、神の武器は地へと放たれる。
そして赤子に触れて形を成した。
武器ではなくヒトの姿に。
「・・・そうか、汝が・・・求めたのだな?・・・母を」
そうしてヒトとなった神の武器と赤子の旅が始まった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
9/25 サブタイトルを付けました。
10/16 最近これはダークファンタジーに分類されるような気がしています。
コミカル風な。
10/19 内容紹介を変更しました。
7/12 サブタイトルを外しました
長々と文章を綴るのは初めてで、読みにくい点多々あると思います。
長期連載漫画のように、初期の下手な絵から上手な絵になれたら嬉しいですね。
分類するのであれば多分ほのぼの、ではありますが、走っている子供がコケて膝小僧を擦りむいて指を差しながら「みて!コケた!痛い!血でた!ハハハ」みたいなほのぼのだと思います。
・・・違うかもしれません。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
最難関ダンジョンで裏切られ切り捨てられたが、スキル【神眼】によってすべてを視ることが出来るようになった冒険者はざまぁする
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【第15回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作】
僕のスキル【神眼】は隠しアイテムや隠し通路、隠しトラップを見破る力がある。
そんな元奴隷の僕をレオナルドたちは冒険者仲間に迎え入れてくれた。
でもダンジョン内でピンチになった時、彼らは僕を追放した。
死に追いやられた僕は世界樹の精に出会い、【神眼】のスキルを極限まで高めてもらう。
そして三年の修行を経て、僕は世界最強へと至るのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる