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◇016◇リリンのSOS◎
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僕達は、レッド村行きの馬車に乗り込んだ。
不思議な事に、エジンはついてこなかった。ホッと一安心。
リリンは、街から出て人目がない所で、森に帰るように言った。
◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆
『なんでクテュールは、一緒に行かないのよ』
「色々、事情が出来て……。ごめんね。ついて来てくれてありがとう。後で絶対行くからキュイにそう言っておいてもらえる? あとジーンにも……」
「ちょっといつまで待たせるのよ! 馬車来たわよ! 10分しか停車しないんだから!」
「うわぁ。わかったよ。今行くよ。じゃ、またね」
『仕方がないわね。先に言って待っているわ」
僕は、頷いてリリンに手を振った。
彼女は、ピョンピョンと飛び跳ねながら森に帰って行く。
うーん。やっぱり兎にしか見えない。
◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆
「それでねって聞いてる?」
リリンの事を思い出していたら、隣に座るリゼタがちゃんと聞けよと睨む。
「あ、ごめん」
「もう。あなたが今日誕生日だから迎えに行こうと昨日、あなたの家に行ったら居なくて、戻って来たエジンが稽古していたらいなくなったって言うから。どこ行っていたのよ」
「どこって森……」
「何でそんな所に?」
そう言うとリゼタが首を傾げる。
「エジンは、広場で稽古していたら稽古が嫌で逃げ出したって言っていたけど……森に逃げていたのね」
どんな嘘言ってるんだよ!
まあ、そう聞いていれば、ジョブを偽ろうとしたと思っても不思議はないかもしれないけど!
「あのさ、稽古に行くって言われて連れて行かれたのが森なの! 逃げたんじゃなくて崖に……」
落ちてキュイに助けてもらったって言って信じてもらえるだろうか?
「まあいいわ」
いいのかよ!
僕、この人にどう思われてるんだ?
これエジンの方を信じているよね?
だったらテイマーだとわかった経緯から話そう。そうしたら信じてもらえるかも。
「あのさ……」
「そうそう。15歳おめでとう!」
「え? うん。ありがとう」
そう言えば、誕生日だった!
本当なら母さんが、奮発して料理を作ってくれたはず。それなのに、僕が居なくなって、心配しただろうな……。しかも逃げ出したって聞いたんだし、きっと情けないとも思ったかも。
「これから私に頼るのよ! 嫌だからって逃げちゃダメ! 私とパーティを組みましょう。今までエジンと組んでいたんだけど、ちゃんとエジンには言ってあるから……」
「え!? それいつエジンに言ったの?」
「うん? 昨日の朝よ。これからクテュールを迎えに行ってくるからって。そのついでに。じゃ俺が稽古つけといてやるって、エジンが先に出掛けたのよ」
「………」
それって思いっきり逆恨みじゃないか!
エジンは、好きなリゼタと組んで冒険者の仕事をしていた。けど僕が冒険者になると、僕と組んでしまう。だから僕を殺そうとした!
なんて身勝手な!
《クテュール! 助けて! 殺される!》
え? 何? この声ってリリン!?
突然聞こえた声に、僕は辺りを見渡す。窓から外を見てもリリンは見えない。
って、普通聞こえないか。
じゃ、これってテレパシーみたいな?
って、もしそうならやばい!!
「止めて!!」
僕は叫んでいた!
不思議な事に、エジンはついてこなかった。ホッと一安心。
リリンは、街から出て人目がない所で、森に帰るように言った。
◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆
『なんでクテュールは、一緒に行かないのよ』
「色々、事情が出来て……。ごめんね。ついて来てくれてありがとう。後で絶対行くからキュイにそう言っておいてもらえる? あとジーンにも……」
「ちょっといつまで待たせるのよ! 馬車来たわよ! 10分しか停車しないんだから!」
「うわぁ。わかったよ。今行くよ。じゃ、またね」
『仕方がないわね。先に言って待っているわ」
僕は、頷いてリリンに手を振った。
彼女は、ピョンピョンと飛び跳ねながら森に帰って行く。
うーん。やっぱり兎にしか見えない。
◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆
「それでねって聞いてる?」
リリンの事を思い出していたら、隣に座るリゼタがちゃんと聞けよと睨む。
「あ、ごめん」
「もう。あなたが今日誕生日だから迎えに行こうと昨日、あなたの家に行ったら居なくて、戻って来たエジンが稽古していたらいなくなったって言うから。どこ行っていたのよ」
「どこって森……」
「何でそんな所に?」
そう言うとリゼタが首を傾げる。
「エジンは、広場で稽古していたら稽古が嫌で逃げ出したって言っていたけど……森に逃げていたのね」
どんな嘘言ってるんだよ!
まあ、そう聞いていれば、ジョブを偽ろうとしたと思っても不思議はないかもしれないけど!
「あのさ、稽古に行くって言われて連れて行かれたのが森なの! 逃げたんじゃなくて崖に……」
落ちてキュイに助けてもらったって言って信じてもらえるだろうか?
「まあいいわ」
いいのかよ!
僕、この人にどう思われてるんだ?
これエジンの方を信じているよね?
だったらテイマーだとわかった経緯から話そう。そうしたら信じてもらえるかも。
「あのさ……」
「そうそう。15歳おめでとう!」
「え? うん。ありがとう」
そう言えば、誕生日だった!
本当なら母さんが、奮発して料理を作ってくれたはず。それなのに、僕が居なくなって、心配しただろうな……。しかも逃げ出したって聞いたんだし、きっと情けないとも思ったかも。
「これから私に頼るのよ! 嫌だからって逃げちゃダメ! 私とパーティを組みましょう。今までエジンと組んでいたんだけど、ちゃんとエジンには言ってあるから……」
「え!? それいつエジンに言ったの?」
「うん? 昨日の朝よ。これからクテュールを迎えに行ってくるからって。そのついでに。じゃ俺が稽古つけといてやるって、エジンが先に出掛けたのよ」
「………」
それって思いっきり逆恨みじゃないか!
エジンは、好きなリゼタと組んで冒険者の仕事をしていた。けど僕が冒険者になると、僕と組んでしまう。だから僕を殺そうとした!
なんて身勝手な!
《クテュール! 助けて! 殺される!》
え? 何? この声ってリリン!?
突然聞こえた声に、僕は辺りを見渡す。窓から外を見てもリリンは見えない。
って、普通聞こえないか。
じゃ、これってテレパシーみたいな?
って、もしそうならやばい!!
「止めて!!」
僕は叫んでいた!
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