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第46話 精霊パニック

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 カタカタカタ。
 馬車は、王都に向けてスピードを上げて走っていた。神官専用の馬車だ。王都から借りて来た。
 運転は、フィタードがしているため、経緯の説明はマカリーがする事になる。
 ルナードとディアルディが並んで座り、前の席にマカリーが座っていた。

 ルナードは、凄く緊張していた。隣に座るディアルディが別人なのだ。
 美人だった彼は、美形になっていた。すらっとした長い脚。思ったより広い肩幅。凛々しい顔立ち。髪を一本にまとめ後ろで縛っている。
 まるで、物語に出て来る異国の騎士様だ。

 なんなのこの美形は!!

 今まで、どんな男性を見ても意識などした事がなかったルナードだったが、意識しまくりだった。

 一方ディアルディは、ルナードがチラッと自分を見てから一度も見ず、真面目な顔でいる事から自分に全く興味がないのだと誤解していた。
 ルナードは、緊張から真面目な顔つきになっているだけなのだが。

 はぁ。男の格好でも全然興味なしかよ……。

 思いっきり自信をなくすディアルディだった。

 「さて、何から話そうか。そうだ。王臣の事から話そう」

 「知っている。政治の仕事をしている神官の事だろう」

 「まあ、ざっくり言うとな。その者は四人いる。私達は、その中に犯人がいると思っている」

 「やっぱり……」

 自分達の身近な者が犯人かもしれないと思っていたから、ディアルディを遠ざけた。そうルナードも感づいていた。そうなると、王臣だろうとなる。精霊を使う者だ。そう簡単に、あぶり出せない。

 「ディアルディ達は、城の中で襲われた。勿論結界がある。外からの侵入は不可能だ」

 マカリーの話に、ルナードは頷く。そして、マカリー達の考えを続けた。

 「二人を一度城の外へと逃がしたのだが、襲われた王妃は逃れる為に王都まで逃げた。いやきっと、誘導されたのだ。そこを我々が助けた。フィタードの話では、城の中は大混乱だったらしい。精霊パニックなっていたようだ」

 「精霊パニック?」

 ルナードは、初めて聞く単語だった。

 「契約をしていない精霊に、魔力を与えた為、精霊が暴れている状態だ。精霊は、ある程度魔力が溜まると使いたくなるらしい。要は、魔力放出だな。本来は、契約していない精霊は城の中に入れない。誰かが招き入れ、魔力を与えたのだろう。結界があるからその精霊を外に出す事もできない。時間は、夜遅かった。王臣達は、城に寝泊りしている。そんな事が出来るのは、その四人しかいなかったのだ」

 「だったら四人共、一旦辞職させればよかったのでは?」

 「……ルナード。政治とはそんな簡単なモノではない」

 そういうマカリーにルナードは、首を傾げた。

 「それで10年以上かけたのですか? 政治とは面倒なものですね」

 「……仕方がないだろう。いっぺんに首にしてみろ。国中が何があったとパニックなるだろうが」

 「あぁ。なるほど」

 納得したのか、ルナードは頷いた。
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