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第42話 やり場のない気持ち

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 ディアルディは、部屋に入ると受け取った水晶をテーブルの上に置き、水晶に触れた。この水晶は、連絡用に精霊に力を宿らせた水晶だった。

 「マカリーさん! 聞こえますか!」

 『ディか? 何かあったのか?』

 「ルナードが行方不明なんです! 今朝からいなくなったって、今連絡が来て!」

 『何!? ルナードが!』

 「俺、どうしたらいいですか?」

 『落ち着きなさい。今からフィタードと一緒にそっちに戻る。いいか。絶対に建物から外に出るなよ。わかったな!』

 「でも……」

 『相手の策に乗るな! 大人しく待っていなさい。絶対にルナードは、助け出す。いいな!』

 建物には、精霊に頼んで結界を張ってあった。特別な力を持つ神官の家では、普通に行われている。
 敵意がある者が中に入れない様に施され、結界に触れればわかるようになっていた。
 なので、建物内に居れば安全なのだ。それに建物に近づいた形跡はなかった。

 「わかりました。お待ちしてます」

 通信が終わると、ストンと椅子に座った。
 ルナードが死んでいたらどうしようという思いでいっぱいだった。

□□□

 「あなた!」

 「ラルー。大丈夫か?」

 数時間後、マカリーとフィタードが帰って来た。
 夫のフィタードに抱き着きラルーが泣きだした。彼女は別に、ルナードを愛していないわけではない。ただ、怒ると力をコントロール出来ない様に思っていたので、怒らせるとどうしようもないのだ。
 彼女には、精霊が見えないので、特別な力としか映っていない。だがマカリーには、自分と同じ力だろうと言われていた。そして、夫のフィタードもまた特別な力を持った神官だ。

 「一応、辺りを見てまわってきたが、街中にはいないようだ。街の外に連れ出されたか、森の中だろうな」

 マカリーがボソッと言った。
 甘かったとマカリーは、自分を責めていた。まさか神殿まで来て連れ出すとは思っていなかったのだ。
 ルナードの事だ。相手の作戦に乗ってやったに違いない。

 「だったら森を探しに……」

 ディアルディが言うと、フィタードが首を横に振った。

 「夜に森に行くのは危険だ」

 精霊が住むと言っても、今の時代、精霊も契約をしないと協力などしてくれない。しかも今回、人間が森に火を放ったのだ。精霊は怒っているだろう。

 「夜明けと共に、我々が探しに行く」

 「俺も……」

 マカリーが言うと、ディアルディも探しに行きたいと願い出る。

 「わかってくれディ。あなたが外に出れば、相手の思うツボなのだ」

 それはディアルディも理解している。だが感情が追い付かないのだ。
 自分のせいなのだから自分が探しに行きたい。けど行けない。気持ちのやり場がなかった。
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