上 下
33 / 71

第32話 見た目とのギャップがあり過ぎて

しおりを挟む
 「ルナード! ディ!」

 二人を呼ぶ声が遠くから聞こえて来た。マカリーだ! 

 「本当に何も知らないのだな。騙すなら味方からってやつか? 残念だが時間が無い。生きていればマカリーから聞け! もう余力もないだろうがな!」

 「刻印」

 ルナードがボソッと呟くと同時に、また疾風が向かってきた!

  「結界!」

 ディアルディは、ルナードを引っ張り抱きしめ守る様にして、疾風が過ぎ去るのを待った。

 「大丈夫か二人共!」

 マカリーが駆けつけたが、その時にはもうフードの男はいなくなっていた。

 「はい……」

 ルナードはそう答えるが、安堵の為か気が遠くなる。

 「「ルナード!」」

 マカリーの他に、野太い声で自分を呼ぶ声をルナードは聞いた。さっき聞いた声は、ディアルディの声で間違いなかったのだと確信するのだった――。

□□□

 体が重い。ルナードが目を覚ますと、自分のベットの上だ。

 「夢だったのか?」

 ふとそう思うも、神官の制服のまま布団で寝ていた事から現実だとわかった。

 マカリー様に聞けか。聞いて教えてくれるのだろうか?

 トントントン。
 上半身を起こしたところで、ドアがノックされた。

 「はい」

 「起きたか?」

 入って来たのはマカリーだ。そしてディアルディも一緒だ。彼を見てふと、ルナードはある事を思い出した。結界を張ったのは、ディアルディだった!
 あのフードの男もディアルディが火を消しに来ると思ったと言っていた。

 ディアルディも特別な力を持っていた!?

 「こちらから出向く手間が省けました。お話に来て下さったのですよね? 二人して、私を騙していた? ディアルディさんは、何者なんです?」

 「悪かった。ここまで来たら話そう」

 「ルナード、俺……」

 「ちょっと待って! あなたは話さないで!」

 「え!?」

 ルナードに話すなと言われて、ディアルディは驚いた。そして俯く。

 「ルナード? 彼にも弁解する余地ぐらい……」

 「そうではなくて、その格好でその声が違和感があり過ぎて……」

 「………」

 理由を聞いてディアルディは、どうすればいいんだという顔をした。

 「その気持ちはわかるが、今はそんな事を言っている時ではないだろう」

 マカリーもそう思っているのかと、ディアルディはマカリーに驚いて振り向く。

 「本当にごめんなさい」

 とりあえずディアルディは、後は大人しくしている事にして、深々と頭を下げて謝った。

 「お礼を言わないとね。助けてくれてありがとう」

 ディアルディは、ルナードの言葉に頭を上げて凝視した。そしていつも通り、首を横に振ったのだった。
 助けたのはその一度だけだ。それ以外は、いつも助けてもらっていた。

 「俺こそ、何度も助けてもらって……ありがとうな」

 「やっぱり違和感しかない……」

 真顔で返されディアルディは苦笑い。
 マカリーは、二人が険悪なムードでない事に安堵していたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は愛する婚約者に嘘をつく

白雲八鈴
恋愛
亜麻色の髪の伯爵令嬢。 公爵子息の婚約者という立場。 これは本当の私を示すものではない。 でも私の心だけは私だけのモノ。 婚約者の彼が好き。これだけは真実。 それは本当? 真実と嘘が入り混じり、嘘が真実に置き換わっていく。 *作者の目は節穴ですので、誤字脱字は存在します。 *不快に思われれば、そのまま閉じることをお勧めします。 *小説家になろうでも投稿しています。

【完結】お姉様の婚約者

七瀬菜々
恋愛
 姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。  残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。    サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。  誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。  けれど私の心は晴れやかだった。  だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。  ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。

篠原愛紀
恋愛
「30歳までに結婚できなかったら、結婚してください」 ついそんな言葉を吐いた私に、彼はあっさりと了承した。 「30歳までなんて面倒くさい。今すぐでいいだろ」 過保護な兄や親のせいで、全く男性と縁のなかった私は、兄の元家庭教師の喬一さんとスピード結婚することになりました。 医療機器メーカーの事務職員  南城 紗矢 26歳 × 外科医  古舘 喬一 32歳 なんで私と結婚したのか疑問だったけど、彼の秘密をしってしまった。 今宵も彼の甘いデザートに、心ごと餌付けされています。

【完結】異世界で婚約者生活!冷徹王子の婚約者に入れ替わり人生をお願いされました

樹結理(きゆり)
恋愛
ある時目覚めたら真っ白な空間にお姫様みたいな少女と二人きりだった。彼女は冷徹王子と呼ばれる第一王子の婚約者。ずっと我慢してたけど私は婚約したくない!違う人生を歩みたい!どうか、私と人生交換して!と懇願されてしまった。 私の人生も大したことないけど良いの?今の生活に未練がある訳でもないけど、でもなぁ、と渋っていたら泣いて頼まれて断るに断れない。仕方ないなぁ、少しだけね、と人生交換することに! 見知らぬ国で魔術とか魔獣とか、これって異世界!?早まった!? お嬢様と入れ替わり婚約者生活!こうなったら好きなことやってやろうじゃないの! あちこち好きなことやってると、何故か周りのイケメンたちに絡まれる!さらには普段見向きもしなかった冷徹王子まで!? 果たしてバレずに婚約者として過ごせるのか!?元の世界に戻るのはいつ!? 異世界婚約者生活が始まります! ※2024.10 改稿中。 ◎こちらの作品は小説家になろう・カクヨムでも投稿しています

家出した伯爵令嬢【完結済】

弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。 番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています 6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております

【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語

ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ…… リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。 ⭐︎2023.4.24完結⭐︎ ※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。  →2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)

【完結】初夜の晩からすれ違う夫婦は、ある雨の晩に心を交わす

春風由実
恋愛
公爵令嬢のリーナは、半年前に侯爵であるアーネストの元に嫁いできた。 所謂、政略結婚で、結婚式の後の義務的な初夜を終えてからは、二人は同じ邸内にありながらも顔も合わせない日々を過ごしていたのだが── ある雨の晩に、それが一変する。 ※六話で完結します。一万字に足りない短いお話。ざまぁとかありません。ただただ愛し合う夫婦の話となります。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中です。

処理中です...