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第30話 楽しい時間が一転
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「なぁ。王都はどうだった?」
サーターがおはようと挨拶をしつつ聞いて来た。
「あ、おはよう。楽しかったよ。久しぶりに父にも会えましたし」
「そうだったな。ルナードの父親って、王都務めだったな。憧れだよなぁ」
王都に勤める神官は、直接陛下と会う事が出来る立場だ。神官になる者で、上を目指す者の最終目的は王都務め。王太子に神官の心得を諭したりする役目もあり、重要なポジションなのだ。
「で? 進展はあった?」
「またその話? あるわけないだろう? 別々の部屋だったし」
「それもそうか」
軽く頬を染め、ルナードにしては珍しく嘘をついた。さすがに同じ部屋だったとは言えなかったのだ。
なぜか王都から帰って来てからディアルディさんの様子が変なんだよなぁ。どうしてだ? うーん。もしかして……歯ぎしりとかいびきとか煩かったのかな? っていうか、そうだとしたらちょっとショックだ。
自分がいびきや歯ぎしりをしてるところを想像してルナードは、ため息をつく。
ディアルディは、ルナードを避けていた。それがルナードは気になっていたのだ。王都に行くまでは、特段避けられてはいなかった。王都から返って来てからだが、その理由がまったくわからない。
よし! 直接聞こう!
ルナードは、一人頷いた。
□□□
ルナードは、サーターと一緒に街にお使いに来ていた。
「はい。お土産です」
「おや。買って来てくれたのかい? ありがとうね。ほら、持って行きな」
「ありがとうございます!」
素直にいつものパンの耳を頂くルナード。
「本当にお前、それ好きだよな」
「世界一、美味しい食べ物だと思う」
真顔でルナードが返すと、二人は笑った。
「嫌だよう、もう。そんなたいしたもんじゃないさ。まあ、体か丈夫なうちは、作り続けるから食べにおいで」
「はい! 毎日きます」
「毎日かよ」
サーターが突っ込みを入れた。また笑いが起きる。そんな楽しい時間が大きな叫び声で、混乱に包まれた――。
「火事だ! 山火事だ!」
その声に振り向けば、森から煙が上がっている。街のすぐ横は森だ。
「サーター、みんなを神殿へ非難させるよ」
「うん!」
二人は、逃げる様に街の中の人々を促す。辺りに焼け焦げた臭いが漂い始めた!
風向きが変わった!
ルナードはまずいと思った。火が街に向かって来る。
咄嗟にルナードは走り出した。ダンザルがディアルディを連れて行った場所を思い出す。
あそこなら誰にも見られないし、高台だ!
精霊の力を使って火を消す為に、ルナードはその場所へと急いだ。
サーターがおはようと挨拶をしつつ聞いて来た。
「あ、おはよう。楽しかったよ。久しぶりに父にも会えましたし」
「そうだったな。ルナードの父親って、王都務めだったな。憧れだよなぁ」
王都に勤める神官は、直接陛下と会う事が出来る立場だ。神官になる者で、上を目指す者の最終目的は王都務め。王太子に神官の心得を諭したりする役目もあり、重要なポジションなのだ。
「で? 進展はあった?」
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軽く頬を染め、ルナードにしては珍しく嘘をついた。さすがに同じ部屋だったとは言えなかったのだ。
なぜか王都から帰って来てからディアルディさんの様子が変なんだよなぁ。どうしてだ? うーん。もしかして……歯ぎしりとかいびきとか煩かったのかな? っていうか、そうだとしたらちょっとショックだ。
自分がいびきや歯ぎしりをしてるところを想像してルナードは、ため息をつく。
ディアルディは、ルナードを避けていた。それがルナードは気になっていたのだ。王都に行くまでは、特段避けられてはいなかった。王都から返って来てからだが、その理由がまったくわからない。
よし! 直接聞こう!
ルナードは、一人頷いた。
□□□
ルナードは、サーターと一緒に街にお使いに来ていた。
「はい。お土産です」
「おや。買って来てくれたのかい? ありがとうね。ほら、持って行きな」
「ありがとうございます!」
素直にいつものパンの耳を頂くルナード。
「本当にお前、それ好きだよな」
「世界一、美味しい食べ物だと思う」
真顔でルナードが返すと、二人は笑った。
「嫌だよう、もう。そんなたいしたもんじゃないさ。まあ、体か丈夫なうちは、作り続けるから食べにおいで」
「はい! 毎日きます」
「毎日かよ」
サーターが突っ込みを入れた。また笑いが起きる。そんな楽しい時間が大きな叫び声で、混乱に包まれた――。
「火事だ! 山火事だ!」
その声に振り向けば、森から煙が上がっている。街のすぐ横は森だ。
「サーター、みんなを神殿へ非難させるよ」
「うん!」
二人は、逃げる様に街の中の人々を促す。辺りに焼け焦げた臭いが漂い始めた!
風向きが変わった!
ルナードはまずいと思った。火が街に向かって来る。
咄嗟にルナードは走り出した。ダンザルがディアルディを連れて行った場所を思い出す。
あそこなら誰にも見られないし、高台だ!
精霊の力を使って火を消す為に、ルナードはその場所へと急いだ。
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