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7話

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 「なるほど。事情はわかった。だが彼女達をグルーン家の者と偽りパーティーに参加させていた事は許される行為ではない。以降、三名はパーティーへの参加は認めない」
 「そ、そんな。それでは娘の相手が見つかりません」
 「残念だが、このような事をした者を娶る者もいないだろう。またこれ以降、グルーン家だと偽った場合、逮捕する。よいな」
 「はい……」

 三人は項垂れた。

 「グルーン伯爵夫妻よ」
 「「はい」」
 「彼らの行為による処遇は、おぬし等に任せよう。私達は退室するが、この部屋を使うとよい。グレン。後を頼む」
 「っは」

 騎士隊長に後を任せ、陛下達は部屋を出て行った。

 「陛下のご指示通り、二人が決めた処遇にあなた方は従う事になります。もちろん、訴えるとなればこの場で拘束が可能です」
 「な! なぜ私達が拘束されるのですか!」

 メーラ夫人が、騎士隊長に抗議する。悪いとは微塵にも思っていないのかしら? それとも私達にバレていないから大丈夫と思っているのかしらね?

 「呆れた方だ。こちらが何も知らないとも思っているのかい? 最初から今日、決着を付けようと思っていた。陛下の計らいです。この場をお借りしましょう。ね、
 「えぇ、そうですね」

 レイモンドが言った愛称に三人がビクッとする。

 「わ、悪かった。二人をグルーン家だと偽りパーティーに参加した事」
 「反省していると?」
 「もちろんだ」
 「そちらの二人はいかがです?」
 「えぇ、まあ」
 「………」

 とても反省しているように見えませんけどね。

 「そうですか……では、全て自ら話して下さい」
 「全てとはなんだ?」
 「あなた方が行った事を白状して下さいという事ですね」

 お父様の問いにレイモンドが答えると、三人は顔をひきつらせた。

 「わかるだろう? 王家の主催するパーティーに普通なら二人は入れない。見てみたいと言うささやかな願いを叶えてあげたかったのだ」
 「そう。デビューの年に一度切りと言うのならそれは通りますが、昨年も参加しておりますわよね。覚えておられる方が大勢おりました。そして、今日も参加しておりますわよね?」
 「そ、それは……」

 私がそう言えば、お父様は目を泳がせる。上手い言い訳が思いつかないのでしょう。

 「三回くらい良いでしょう。だいたい、あなたが認めてくれれば、私はグルーン伯爵家の子になれたのに!」

 驚く様な事をシャーロット嬢は言った。
 やはり教えを受けていないから知らないのね。
 メーラ夫人がパーティーでの常識を教える様にも見えないし、色々知らなさそうね。
 お父様も、説明はしてないご様子。

 「シャーロット嬢。この国の婚姻の事をご存じないのかしら? お父様から結婚後の扱いの説明もなかったのかしら?」
 「な、何よ。結婚したら籍に入るのでしょう? でも家族であるあなたが拒んだから……」

 私は、大きなため息をついた。

 「昨日、レイモンドが言った言葉を覚えているかしら? お父様は婿だから再婚相手の子供はグルーンとは名乗れないと言ったのを」
 「……そういえば、そんな事を言っていたわね。それがどうしたと言うのよ」
 「わかりません? 私が困んだとかではなく、そう言う法律なのです」
 「え……」

 シャーロット嬢がメーラ夫人とお父様を見る。

 「お母様達はご存じでした?」
 「えぇ。でもね、何事にも特例があるのよ。当主が認めればなれるのよ」

 そんなの特例中の特例よ!

 「本当に図々しいな。特例に値もしないのに何を言っている。普通は、相手に子が居れば再婚などしないだろう。それが常識だ!」
 「偉そうに言うな! お前も子爵家だっただろうに! 当主が血でしか受け継げないだと? だいたいな、それがおかしいのだ! 私は、都市に屋敷がある伯爵家だと聞いたから結婚したのだ。それがどうだ! 私のところと同じで赤字の領土を持った伯爵家だったではないか!」

 お父様は、悔しそうに私達に叫んだ。
 そんな事を私達に言われても困る。せめて、おばあ様に言ってよね。

 「当主が亡くなって次期当主予定の娘は、まだ学生だった。だったら私が仮当主になるのが普通だろう? それなのにさせないとはどういう事だ? 子爵家の者だったからバカにしていたのだろう。貴様もそうなる運命だ!」

 お父様は、叫びながらレイモンドを指さした。
 つまり、同じような屈辱を味わえって事でしょうね。

 「僕は、あなたとは違いますよ。彼女の手伝いをしますし、何より愛していますから。政略結婚ではなく恋愛結婚です」
 「嘘をつくな! シャルルのどこに惚れる要素があるというのだ!」

 まあ失礼ね。しかも自分の子の事を言う言葉ではありませんわ!

 「おや、自身の子だというのに、彼女の愛らしさをご存じないとは! いいですか? 性格と同じように真っすぐでサラサラな髪! 頬ずりしたくなりませんか?」

 ひぃ。やめて。

 「やや釣り目のこの茜色の鋭い瞳に射抜かれたい!」

 なにその射抜かれたいって!

 「素敵な声はよく通り、凛としていていつも巧みな言葉を発する口から発せられる、恥じらいの……うぐ」
 「もうやめて! いいからそんな事言わなくて!」

 私は堪らずレイモンドの口を両手で塞いだ。

 「っぷ、嫌だ。彼、変態さん? とってもお似合いよ」

 呆けていたシャーロット嬢が、笑い出す。

 「だいたい、当主だからって私の邪魔しないでくれます? 自分より爵位が上の者と私が結婚するのが許せないのでしょうけどね!」

 シャーロット嬢の言葉に、今度は私達が呆けてしまう。
 どんだけお花畑の頭なのよ。

 「本当に、相手の言葉を聞いていないんだな。先ほど陛下も言っていただろう? こんな事をしたあなたを娶る者などいないと」
 「な……それは知っていればの話でしょう?」
 「なるほど。騙してもバレなければいいと?」
 「あら、騙してなどおりませんわよ。私達は、ゴランの家族と言ったまで」
 「そうよ。お母様の言う通りだわ」

 あくまでも白を切るのね。

 「騙していたでしょう。シャーロット嬢をと呼んでいたのですから」

 私がそう言えば、三人は驚きの顔つきになった。この三人、こんなに顔に出るのに相手を騙せると思っているなんてね。笑っちゃうわ。

 トンネルのプロジェクトの事でグルーン家の名が王都まで知れ渡っている事を知っていたお父様は、私の名も知っている者もいる事を考慮して、彼女の事をシャルと呼ぶ事にしたのでしょうね。
 そして、婚約が上手くいった後に、シャーロット嬢が当主ではないと知れたとしても、何とかなると思っていたのでしょうね。

 けどね、もしそうなったとしたら恥を掻いたと、相手がどんな手を使って陥れてくるかわからないわよ。私までとばっちりを受けたらどうしてくれるのよ。
 相手は、私達より権力を持っているのよ。

 「本当にめでたい人達だね。気づいてないと思っているのだから。ちゃんとヒントを上げていたのに気づかない。そんな者達が、公爵家の者を騙せると思っているのか?」
 「だ、だから騙してなどいないわ……」

 レイモンドが言った言葉に弱弱しくもまだ否定するシャーロット嬢に、情けなど必要ないわねと私達は意見を同じくするのだった。
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