上 下
29 / 83

第29話

しおりを挟む
 レオンス様と婚約したけど彼とは今まで通りで、学園で会えば挨拶をするぐらいで親密にはしていない。婚約した事は内緒だからね。
 リサおばあ様とエメリック様の四人でのお茶会もあれからないので、転生者だと知ったあの日からほどんど顔を合わせていない。
 うーむ。全く実感が湧かない。

 学園の授業は、前にレオンス様が言っていた通り魔法を飛ばす授業で、コツを教えてもらって後はひたすら練習らしい。
 なので自主練習が主な魔法は個室にこもり、魔法陣の授業を教室で行う。割合で言うと、個室にこもっている時間の方が長い。

 先生の話だと、サボれば3年次になれないだけだと言われた。
 放任主義すぎませんかね。

 そうして、2年次の生活になれた頃、家でも勉強が始まった。

 「えーと、リサおばあ様直々に教えて下さるのですか」
 「事情を知る者が増えれば、外に漏れる可能性も増える。そう考えて、私がする事にしたよ。大変だとは思うけど、身に着けておかないと、後で自身が恥ずかしい目に遭うからね」
 「はい。ご指導のほどよろしくお願いします」

 こうして、リサおばあ様の容赦ない指導が始まったのだった。
 気が付けば、あっという間に一年が過ぎ学年末試験に合格た私は、3年次へ進める事となる。
 そして、レオンス様は難なく魔法博士の資格を取った。

 今日は、そのお祝いに呼ばれココドーネ侯爵家一同と共にタカビーダ侯爵家へ来ていた。
 レオンス様は、嬉しそうにニコニコしている。まあ貴族の令息の仮面でだけど。

 「久しぶりだね。こうして会うのは」
 「えぇ、本当に。釣った魚に餌をやらない方だったとは」
 「え!? そんなつもりでは……」

 そんなつもりって。実際、この一年学園ですれ違う事しかなかったじゃない。前みたいに、四人でお茶会もないし。

 「ごめん。作法の勉強とか忙しいからってリサさんに言われていて……。会いたかったなんて」
 「ちょっと待って! 別にそんな事言ってないでしょう」
 「じゃ何? かまってちゃん?」
 「もういい!」
 「うそうそ。冗談だって。俺も侯爵家を継ぐために、本格的に家庭教師がついて……」

 なるほど。きっと親と取引して、ちゃんと教育を受ける事になったのね。

 「本音を言うと、君に会いたかったよ」
 「はい!?」
 「たまに、心から笑いたかった……」
 「もう!」
 「あははは」

 すぐに揶揄うんだから!

 「兄上……その方が、婚約者のご令嬢? あ、あの時の」

 私はアマート様に、カーテシーをする。一度会ったのを覚えていたのね。

 「ちゃんと紹介するね。彼女は、ブレスチャ子爵家の長女、ファビア嬢。私と同じ学園の生徒でもあるんだ。って、私は卒業したけどね」
 「ファビア・ブレスチャです」
 「私は、アマートです。魔法学園に通っているんですか? 女性の方は少ないと聞きました」
 「えぇ。かなり。でも魔法学園は、個人で頑張る学園なので、問題ありませんわ」
 「では、ファビア嬢が魔法学園を卒業したら結婚ですね」

 え? そうなの?
 私が驚いてレオンス様を見れば、顔を引きつらせている。

 「私も貴族学園に行くって言っただろう」
 「え? 兄上が貴族学園を卒業するまで待たせるのですか。また、婚約破棄になったりしませんか……」

 後半は、囁くようにアマート様は言った。
 失礼な人ね。私もいると言うのに。そもそも、破棄ではなく解消でしょうに。

 「ならないよ。彼女も貴族学園に行くからね」
 「え? なぜ?」

 まあ貴族学園に行く目的の一つは、結婚相手を見つける為でもあるけど、繋がりを持つ為でもある。と教育で習ったのだけど、彼は習ってないのかしら?

 「なぜって将来の為だろう」
 「でも、魔法博士になるのなら必要ないのでは……」

 まあ魔法博士になった大抵の貴族は、貴族学園に行かないからね。でもそれは、貴族学園に通っている年齢に魔法学園に通っているからでしょう。

 「まあ二人そろって貴族学園に通うのなら、兄上が待つ立場になるわけか。だったら大丈夫だね。兄上の事をよろしくね」
 「はい……」

 うーむ。アマート様には、詳しく話していないのかしら? 何だかちゃんと知らないみたいね。

 「はぁ……」
 「ため息なんてついてどうしたの」
 「なんか、ごめん。彼は、自分が家督を継ぐと思っているみたいだから。話がたまに嚙み合わなくって」
 「え? ちゃんと伝えてないの?」

 凄く困り顔になってしまった。

 「私が言うと、私自身がなりたいと思っていると勘違いするからさ。私からは、自分が継ぐとは言ってない」
 「じゃ、レオンス様が継ぐと知らないって事?」
 「いや、昔に両親が告げている。侯爵家は私に継がせるって。でも私が魔法学園に入って婚約も流れたから、自分が継ぐんだと思っている節がある」
 「はぁ。思い込みが激しいのね」
 「……いや、彼だけが悪いわけじゃない。両親も悪いんだよ」
 「………」

 もしかしなくても、レオンス様と両親は仲が宜しくない? 嫌だな。そういう家庭に入るの。
 私が嫁に来るまでに、仲良くなってもらわないとね!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜

七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。 ある日突然、兄がそう言った。 魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。 しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。 そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。 ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。 前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。 これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。 ※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

不治の病で部屋から出たことがない僕は、回復術師を極めて自由に生きる

土偶の友
ファンタジー
【12月16日発売決定!】   生まれてから一度も部屋の外に出た記憶のないバルトラン男爵家、次男のエミリオ。  彼の体は不治の病に侵されていて、一流の回復術師でも治すのは無理だと言った。  ベッドに寝ながら外で元気に走り回る兄や妹の姿を見つめては、自分もそうできたらと想像する毎日。  ある時、彼は母に読んでもらった英雄譚で英雄が自分自身に回復魔法を使った事を知る。  しかし、それは英雄だから出来ることであり、普通の人には出来ないと母は言う。  それでもエミリオは諦めなかった。  英雄が出来たのなら、自分も出来るかも知れない。このままベッドの上で過ごし続けるだけであれば、難しい魔法の習得をやってやると彼は心に誓う。  ただベッドの上であらゆることを想像し続けてきた彼にとって、想像が現実になる魔法は楽しい事だった。  普通の者が思い通りにならず、諦める中でエミリオはただひたすらに魔法の練習をやり続ける。  やがて彼の想像力は圧倒的な力を持つ回復術師への道を進んでいく。 ※タイトルを少し変えました。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【完結】職業王妃にはなりません!~今世と前世の夢を叶えるために冒険者と食堂始めました~

Na20
恋愛
セントミル国の王家には変わった習わしがある。それは初代国王夫妻を習い、国王の妻である王妃は生涯国王を護る護衛になるということ。公務も跡継ぎも求められないそんな王妃が国の象徴とされている。 そして私ルナリア・オーガストは次期王太子である第一王子の婚約者=未来の王妃に選ばれてしまうのだった。 ※設定甘い、ご都合主義です。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

処理中です...