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第29話
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レオンス様と婚約したけど彼とは今まで通りで、学園で会えば挨拶をするぐらいで親密にはしていない。婚約した事は内緒だからね。
リサおばあ様とエメリック様の四人でのお茶会もあれからないので、転生者だと知ったあの日からほどんど顔を合わせていない。
うーむ。全く実感が湧かない。
学園の授業は、前にレオンス様が言っていた通り魔法を飛ばす授業で、コツを教えてもらって後はひたすら練習らしい。
なので自主練習が主な魔法は個室にこもり、魔法陣の授業を教室で行う。割合で言うと、個室にこもっている時間の方が長い。
先生の話だと、サボれば3年次になれないだけだと言われた。
放任主義すぎませんかね。
そうして、2年次の生活になれた頃、家でも勉強が始まった。
「えーと、リサおばあ様直々に教えて下さるのですか」
「事情を知る者が増えれば、外に漏れる可能性も増える。そう考えて、私がする事にしたよ。大変だとは思うけど、身に着けておかないと、後で自身が恥ずかしい目に遭うからね」
「はい。ご指導のほどよろしくお願いします」
こうして、リサおばあ様の容赦ない指導が始まったのだった。
気が付けば、あっという間に一年が過ぎ学年末試験に合格た私は、3年次へ進める事となる。
そして、レオンス様は難なく魔法博士の資格を取った。
今日は、そのお祝いに呼ばれココドーネ侯爵家一同と共にタカビーダ侯爵家へ来ていた。
レオンス様は、嬉しそうにニコニコしている。まあ貴族の令息の仮面でだけど。
「久しぶりだね。こうして会うのは」
「えぇ、本当に。釣った魚に餌をやらない方だったとは」
「え!? そんなつもりでは……」
そんなつもりって。実際、この一年学園ですれ違う事しかなかったじゃない。前みたいに、四人でお茶会もないし。
「ごめん。作法の勉強とか忙しいからってリサさんに言われていて……。会いたかったなんて」
「ちょっと待って! 別にそんな事言ってないでしょう」
「じゃ何? かまってちゃん?」
「もういい!」
「うそうそ。冗談だって。俺も侯爵家を継ぐために、本格的に家庭教師がついて……」
なるほど。きっと親と取引して、ちゃんと教育を受ける事になったのね。
「本音を言うと、君に会いたかったよ」
「はい!?」
「たまに、心から笑いたかった……」
「もう!」
「あははは」
すぐに揶揄うんだから!
「兄上……その方が、婚約者のご令嬢? あ、あの時の」
私はアマート様に、カーテシーをする。一度会ったのを覚えていたのね。
「ちゃんと紹介するね。彼女は、ブレスチャ子爵家の長女、ファビア嬢。私と同じ学園の生徒でもあるんだ。って、私は卒業したけどね」
「ファビア・ブレスチャです」
「私は、アマートです。魔法学園に通っているんですか? 女性の方は少ないと聞きました」
「えぇ。かなり。でも魔法学園は、個人で頑張る学園なので、問題ありませんわ」
「では、ファビア嬢が魔法学園を卒業したら結婚ですね」
え? そうなの?
私が驚いてレオンス様を見れば、顔を引きつらせている。
「私も貴族学園に行くって言っただろう」
「え? 兄上が貴族学園を卒業するまで待たせるのですか。また、婚約破棄になったりしませんか……」
後半は、囁くようにアマート様は言った。
失礼な人ね。私もいると言うのに。そもそも、破棄ではなく解消でしょうに。
「ならないよ。彼女も貴族学園に行くからね」
「え? なぜ?」
まあ貴族学園に行く目的の一つは、結婚相手を見つける為でもあるけど、繋がりを持つ為でもある。と教育で習ったのだけど、彼は習ってないのかしら?
「なぜって将来の為だろう」
「でも、魔法博士になるのなら必要ないのでは……」
まあ魔法博士になった大抵の貴族は、貴族学園に行かないからね。でもそれは、貴族学園に通っている年齢に魔法学園に通っているからでしょう。
「まあ二人そろって貴族学園に通うのなら、兄上が待つ立場になるわけか。だったら大丈夫だね。兄上の事をよろしくね」
「はい……」
うーむ。アマート様には、詳しく話していないのかしら? 何だかちゃんと知らないみたいね。
「はぁ……」
「ため息なんてついてどうしたの」
「なんか、ごめん。彼は、自分が家督を継ぐと思っているみたいだから。話がたまに嚙み合わなくって」
「え? ちゃんと伝えてないの?」
凄く困り顔になってしまった。
「私が言うと、私自身がなりたいと思っていると勘違いするからさ。私からは、自分が継ぐとは言ってない」
「じゃ、レオンス様が継ぐと知らないって事?」
「いや、昔に両親が告げている。侯爵家は私に継がせるって。でも私が魔法学園に入って婚約も流れたから、自分が継ぐんだと思っている節がある」
「はぁ。思い込みが激しいのね」
「……いや、彼だけが悪いわけじゃない。両親も悪いんだよ」
「………」
もしかしなくても、レオンス様と両親は仲が宜しくない? 嫌だな。そういう家庭に入るの。
私が嫁に来るまでに、仲良くなってもらわないとね!
リサおばあ様とエメリック様の四人でのお茶会もあれからないので、転生者だと知ったあの日からほどんど顔を合わせていない。
うーむ。全く実感が湧かない。
学園の授業は、前にレオンス様が言っていた通り魔法を飛ばす授業で、コツを教えてもらって後はひたすら練習らしい。
なので自主練習が主な魔法は個室にこもり、魔法陣の授業を教室で行う。割合で言うと、個室にこもっている時間の方が長い。
先生の話だと、サボれば3年次になれないだけだと言われた。
放任主義すぎませんかね。
そうして、2年次の生活になれた頃、家でも勉強が始まった。
「えーと、リサおばあ様直々に教えて下さるのですか」
「事情を知る者が増えれば、外に漏れる可能性も増える。そう考えて、私がする事にしたよ。大変だとは思うけど、身に着けておかないと、後で自身が恥ずかしい目に遭うからね」
「はい。ご指導のほどよろしくお願いします」
こうして、リサおばあ様の容赦ない指導が始まったのだった。
気が付けば、あっという間に一年が過ぎ学年末試験に合格た私は、3年次へ進める事となる。
そして、レオンス様は難なく魔法博士の資格を取った。
今日は、そのお祝いに呼ばれココドーネ侯爵家一同と共にタカビーダ侯爵家へ来ていた。
レオンス様は、嬉しそうにニコニコしている。まあ貴族の令息の仮面でだけど。
「久しぶりだね。こうして会うのは」
「えぇ、本当に。釣った魚に餌をやらない方だったとは」
「え!? そんなつもりでは……」
そんなつもりって。実際、この一年学園ですれ違う事しかなかったじゃない。前みたいに、四人でお茶会もないし。
「ごめん。作法の勉強とか忙しいからってリサさんに言われていて……。会いたかったなんて」
「ちょっと待って! 別にそんな事言ってないでしょう」
「じゃ何? かまってちゃん?」
「もういい!」
「うそうそ。冗談だって。俺も侯爵家を継ぐために、本格的に家庭教師がついて……」
なるほど。きっと親と取引して、ちゃんと教育を受ける事になったのね。
「本音を言うと、君に会いたかったよ」
「はい!?」
「たまに、心から笑いたかった……」
「もう!」
「あははは」
すぐに揶揄うんだから!
「兄上……その方が、婚約者のご令嬢? あ、あの時の」
私はアマート様に、カーテシーをする。一度会ったのを覚えていたのね。
「ちゃんと紹介するね。彼女は、ブレスチャ子爵家の長女、ファビア嬢。私と同じ学園の生徒でもあるんだ。って、私は卒業したけどね」
「ファビア・ブレスチャです」
「私は、アマートです。魔法学園に通っているんですか? 女性の方は少ないと聞きました」
「えぇ。かなり。でも魔法学園は、個人で頑張る学園なので、問題ありませんわ」
「では、ファビア嬢が魔法学園を卒業したら結婚ですね」
え? そうなの?
私が驚いてレオンス様を見れば、顔を引きつらせている。
「私も貴族学園に行くって言っただろう」
「え? 兄上が貴族学園を卒業するまで待たせるのですか。また、婚約破棄になったりしませんか……」
後半は、囁くようにアマート様は言った。
失礼な人ね。私もいると言うのに。そもそも、破棄ではなく解消でしょうに。
「ならないよ。彼女も貴族学園に行くからね」
「え? なぜ?」
まあ貴族学園に行く目的の一つは、結婚相手を見つける為でもあるけど、繋がりを持つ為でもある。と教育で習ったのだけど、彼は習ってないのかしら?
「なぜって将来の為だろう」
「でも、魔法博士になるのなら必要ないのでは……」
まあ魔法博士になった大抵の貴族は、貴族学園に行かないからね。でもそれは、貴族学園に通っている年齢に魔法学園に通っているからでしょう。
「まあ二人そろって貴族学園に通うのなら、兄上が待つ立場になるわけか。だったら大丈夫だね。兄上の事をよろしくね」
「はい……」
うーむ。アマート様には、詳しく話していないのかしら? 何だかちゃんと知らないみたいね。
「はぁ……」
「ため息なんてついてどうしたの」
「なんか、ごめん。彼は、自分が家督を継ぐと思っているみたいだから。話がたまに嚙み合わなくって」
「え? ちゃんと伝えてないの?」
凄く困り顔になってしまった。
「私が言うと、私自身がなりたいと思っていると勘違いするからさ。私からは、自分が継ぐとは言ってない」
「じゃ、レオンス様が継ぐと知らないって事?」
「いや、昔に両親が告げている。侯爵家は私に継がせるって。でも私が魔法学園に入って婚約も流れたから、自分が継ぐんだと思っている節がある」
「はぁ。思い込みが激しいのね」
「……いや、彼だけが悪いわけじゃない。両親も悪いんだよ」
「………」
もしかしなくても、レオンス様と両親は仲が宜しくない? 嫌だな。そういう家庭に入るの。
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