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第27話
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この国の学園には、夏休みや冬休みがない。まあ四季がないから、休みがあってもそう言う名前はつかないと思うけど。
って、そうじゃない。
学年が変わるタイミングの時だけ小休みがあって、それが2週間。それが明ければ、一つ上の年次となる。
その間は、何も聞けないなんて! 悶々として過ごさなくてはいけないじゃない。
しかも、婚約の事は周りには内緒で、ココドーネ侯爵夫妻だけ知っている。エメリック様も知らないらしい。
だから今日、侯爵夫妻とエメリック様でお出掛けしたのね。
アマート様が一緒に来ていなかったから彼も知らないのかもね。
世間には、私が貴族学校に上がる時に婚約したと知らせるらしい。まあ、公に触れ回るわけではないと思うけど。
それまで、他言無用との事。
まあそれはいいけど、侯爵家に嫁ぐ事になるからちゃんとした教育が必要になって、来月からその為の家庭教師がつく事になったのだけど!
部屋でのまったり時間がなくなりました。とほほ。
◇
めでたく私は、2年次になった。桃色の制服になり気分も一新。胸に輝く『B』のバッチが誇らしい。
クラスメイトは、私を含め5名しかいない。なので、Bクラスの教室は小さい。けど、魔法指導する個室が与えられた。教室内にドアがあって、なんと長さが10mもある細長い個室。
そうここで、学年末試験の練習が出来るって事よ。それ以外の生徒は、練習場があってそこで行う。棒が並んでいるだけなので、下手すれば他の生徒が放った魔法が飛んでくるとか来ないとか。
「僕はネメシオ・コルナッチ。ファビア嬢、同じ子爵家同士仲良くしない? 宜しく」
同じクラスになった子爵家の子息だ。そのほかは、伯爵家の子息なので、彼だけハブられていた。かく言う私も相手にされていないけどね。
同士とだと思ったのか話しかけて来たみたいね。
「はい。宜しくお願いします」
1年次の時は、遠巻きにされていたのでなんか不思議な感じよね。
まあ相手は4つ年上だけど。精神年齢が彼より上の私としては、子共扱いされるのが嫌だから挨拶だけにしておこう。
「あ、いたいた。もう帰れる?」
今日は入学式があって、私達はそれが終わった後、教室でホームルームだった。
新入生同様、授業はない。まあ自主練習していっていいので、残って練習する真面目な者もいるが、私は帰ろうと思っていた。
やっと話を聞けるらしい。
「し、知り合いなの?」
「うん? えーと、本家の子息のお友達?」
さすがにレオンス様の事は知っているみたいね。驚かれちゃったわ。
「……聞くの聞かないの?」
「聞きます!」
少しムッとしている。待たせてしまって怒った?
「あ、では、また明日。失礼します」
前を歩くレオンス様に私はついて歩く。どこに行く気かしらね。そう思っていたら3年次の教室へと入って行く。
もちろんBクラスだ。そこの個室のドアを開けた。
個室で二人っきりはまずいのでは……。
「ここが一番話を聞かれなくて安全だから、嫌なら違う場所でもいいけど」
「いえ。ここでいいです」
個室は、2年次のと違って、ポツンと机と椅子があるだけの部屋だった。1.5m×1.5mぐらいだと思う。結構手狭だ。
ドアを閉めたレオンス様は、机側の壁に寄りかかる。
「君は椅子に座るといいよ」
「うん」
窓はないけど、マジックアイテムで明かりを灯しているので明るい。言われた通り椅子に腰かけ、向かい合う。
うーむ。軽く壁に寄りかかるレオンス様は、胸の前で腕を組んでいる。様になっている様でなっていなくて、なんかかわいい。
って、やっぱり怒ってる?
「もしかして、機嫌悪い?」
「別に……。さっきの子と仲良さそうだったね。緑の髪の奴」
うん? さっきの子? あ、ネメシオ様の事かな?
「特段仲は良くないと思うけど? 今日初めて話したし。子爵家同士仲良くしましょうと言われただけよ」
「仲良くするの?」
「え……」
まさかの束縛派ですか! 勘弁してよ。そういうのも嫌だから結婚したくないのに。
「特段仲良くするつもりないわよ。それよりも何がどうなったのか教えてほしいのだけど」
レオンス様が、神妙な顔つきになった。そして、驚く言葉を口にする。
「君って前世持ちだよね?」
突然の問いに、すぐに否定できなかった。というか、そういう質問をするって事はレオンス様も前世持ちって事?
「俺にも前世の記憶があるんだ。魔法がある世界だから魔法使いになれると思ったら、侯爵家を継げと言う」
「はぁ……」
「だから親と取引して、家督を継ぐ代わりに魔法博士になるという約束を勝ち取った」
親と取引って……。双子の片割れがいるのにレオンス様にそこまでして、継がせたいのね。
「アマート様は双子の弟だと聞きましたけど、彼も家督を継ぐ気がないという事ですか?」
「色々事情があり、彼は継げない」
継げないか。そこには、アマート様の意思は関係ないって事ね。
なるほど。継がせる気が全くないからわざと初等科の学園に通わせているのね。レオンス様が、魔法学園に通っているから普通に考えれば、周りはアマート様が家督を継ぐと思うはずだものね。
でもそれぞれ、初等科の学園と魔法学園に通っていれば、レオンス様が家督を継いでも、おかしくはないって事ね。
何だかよくわからないけど、複雑な家庭環境です事。
って、それに私を巻き込まないでよ~。
って、そうじゃない。
学年が変わるタイミングの時だけ小休みがあって、それが2週間。それが明ければ、一つ上の年次となる。
その間は、何も聞けないなんて! 悶々として過ごさなくてはいけないじゃない。
しかも、婚約の事は周りには内緒で、ココドーネ侯爵夫妻だけ知っている。エメリック様も知らないらしい。
だから今日、侯爵夫妻とエメリック様でお出掛けしたのね。
アマート様が一緒に来ていなかったから彼も知らないのかもね。
世間には、私が貴族学校に上がる時に婚約したと知らせるらしい。まあ、公に触れ回るわけではないと思うけど。
それまで、他言無用との事。
まあそれはいいけど、侯爵家に嫁ぐ事になるからちゃんとした教育が必要になって、来月からその為の家庭教師がつく事になったのだけど!
部屋でのまったり時間がなくなりました。とほほ。
◇
めでたく私は、2年次になった。桃色の制服になり気分も一新。胸に輝く『B』のバッチが誇らしい。
クラスメイトは、私を含め5名しかいない。なので、Bクラスの教室は小さい。けど、魔法指導する個室が与えられた。教室内にドアがあって、なんと長さが10mもある細長い個室。
そうここで、学年末試験の練習が出来るって事よ。それ以外の生徒は、練習場があってそこで行う。棒が並んでいるだけなので、下手すれば他の生徒が放った魔法が飛んでくるとか来ないとか。
「僕はネメシオ・コルナッチ。ファビア嬢、同じ子爵家同士仲良くしない? 宜しく」
同じクラスになった子爵家の子息だ。そのほかは、伯爵家の子息なので、彼だけハブられていた。かく言う私も相手にされていないけどね。
同士とだと思ったのか話しかけて来たみたいね。
「はい。宜しくお願いします」
1年次の時は、遠巻きにされていたのでなんか不思議な感じよね。
まあ相手は4つ年上だけど。精神年齢が彼より上の私としては、子共扱いされるのが嫌だから挨拶だけにしておこう。
「あ、いたいた。もう帰れる?」
今日は入学式があって、私達はそれが終わった後、教室でホームルームだった。
新入生同様、授業はない。まあ自主練習していっていいので、残って練習する真面目な者もいるが、私は帰ろうと思っていた。
やっと話を聞けるらしい。
「し、知り合いなの?」
「うん? えーと、本家の子息のお友達?」
さすがにレオンス様の事は知っているみたいね。驚かれちゃったわ。
「……聞くの聞かないの?」
「聞きます!」
少しムッとしている。待たせてしまって怒った?
「あ、では、また明日。失礼します」
前を歩くレオンス様に私はついて歩く。どこに行く気かしらね。そう思っていたら3年次の教室へと入って行く。
もちろんBクラスだ。そこの個室のドアを開けた。
個室で二人っきりはまずいのでは……。
「ここが一番話を聞かれなくて安全だから、嫌なら違う場所でもいいけど」
「いえ。ここでいいです」
個室は、2年次のと違って、ポツンと机と椅子があるだけの部屋だった。1.5m×1.5mぐらいだと思う。結構手狭だ。
ドアを閉めたレオンス様は、机側の壁に寄りかかる。
「君は椅子に座るといいよ」
「うん」
窓はないけど、マジックアイテムで明かりを灯しているので明るい。言われた通り椅子に腰かけ、向かい合う。
うーむ。軽く壁に寄りかかるレオンス様は、胸の前で腕を組んでいる。様になっている様でなっていなくて、なんかかわいい。
って、やっぱり怒ってる?
「もしかして、機嫌悪い?」
「別に……。さっきの子と仲良さそうだったね。緑の髪の奴」
うん? さっきの子? あ、ネメシオ様の事かな?
「特段仲は良くないと思うけど? 今日初めて話したし。子爵家同士仲良くしましょうと言われただけよ」
「仲良くするの?」
「え……」
まさかの束縛派ですか! 勘弁してよ。そういうのも嫌だから結婚したくないのに。
「特段仲良くするつもりないわよ。それよりも何がどうなったのか教えてほしいのだけど」
レオンス様が、神妙な顔つきになった。そして、驚く言葉を口にする。
「君って前世持ちだよね?」
突然の問いに、すぐに否定できなかった。というか、そういう質問をするって事はレオンス様も前世持ちって事?
「俺にも前世の記憶があるんだ。魔法がある世界だから魔法使いになれると思ったら、侯爵家を継げと言う」
「はぁ……」
「だから親と取引して、家督を継ぐ代わりに魔法博士になるという約束を勝ち取った」
親と取引って……。双子の片割れがいるのにレオンス様にそこまでして、継がせたいのね。
「アマート様は双子の弟だと聞きましたけど、彼も家督を継ぐ気がないという事ですか?」
「色々事情があり、彼は継げない」
継げないか。そこには、アマート様の意思は関係ないって事ね。
なるほど。継がせる気が全くないからわざと初等科の学園に通わせているのね。レオンス様が、魔法学園に通っているから普通に考えれば、周りはアマート様が家督を継ぐと思うはずだものね。
でもそれぞれ、初等科の学園と魔法学園に通っていれば、レオンス様が家督を継いでも、おかしくはないって事ね。
何だかよくわからないけど、複雑な家庭環境です事。
って、それに私を巻き込まないでよ~。
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