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第4話 逃走
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「なるほど。あいつもここを察知してきたか」
察知? この人達は何かを察知してきたの?
「あの三人組を殺せ!」
「へ? 殺せ?」
僕は、一歩下がる。気迫が凄い。マジだよこの人達。
「逃げるわよ!」
ガシっと、五十嵐に手を引っ張られる。反対側の手で富士元も連れて、五十嵐が走り出すと、僕達も走った。
「待て! 逃がすな」
「森に逃げるわよ」
「え? 森!?」
五十嵐の言葉に僕は聞き返す。
「馬で追いかけられないし、魔法でも狙いづらいわ」
なるほど。でもその前に殺されそうだ。魔法が飛んでくる。ゲームだと言うのにリアル過ぎて、死んで出戻りなんて考えたくない状況だ。
「だめか!」
五十嵐がつぶやいたけど。魔法で僕らはやられなかった。なぜだろうか。まるで結界でも張っているように、近くにきたら魔法は消滅した。
「くそう。ジュシンめ!」
そう叫ぶ声が聞こえる。ジュシンって何? それと僕は間違えられているらしい。
はぁはぁ。疲れたけど森に入っても休めない。重そうな鎧を装備しているのに、走って追いかけて来る。
「ねえ、ヒナ。何の魔法取得した?」
「火の魔法を選んだけど、ここで放ったら大変な事になるし攻撃はやばいでしょ。戦う意思があると思われちゃうわよ」
「そうね。マオは?」
「へ?」
突然名前の方で呼ばれ変な返事を返してしまった。
「何驚いているのよ。まさか魔法とか選ぶ時間がなかったとか言わないわよね?」
「あ、いや……僕は、授業に役立つの選んだから」
「いいから教えて!」
「あ、うん。たしか、ドリズルとニュートリション」
「それよ! ドリズル! それお願い」
「え?」
「早く!」
そう言われても使い方がわからない。
「使いたいと思って魔法名を言葉にすればいいの!」
僕がおどおどしていると、富士元が教えてくれた。
「ありがとう。ドリズル!」
僕が魔法を唱えたとたん、周りに霧がかかる。あたりは、白い霧に包まれた。
「な、なんだこれ……」
思っていた魔法と違うんだけど?
しかも、白い霧に包まれたのに、さっきの様に見えるんだ。
「ねえ、マオ。あなたには動き回れるぐらい辺りは見える?」
「え? 見えないの?」
「やっぱりね。私にはそばの木すら見えないわ」
すごい霧だったのか。
「とりあえず、こっち」
僕は、五十嵐をひっぱり森の中を移動する。辺りからは、どこへ行ったなどと僕達を探す騎士たちの声と足音が聞こえ怖かったが、その音から遠ざかるように逃げた。
呪文を唱え、霧をバラまきながら進み無事逃げ切ったのは、一時間以上森の中を彷徨ってからだ。
「まじ怖かったわ」
「もういい加減にしてほしいわね」
僕たちは、森の中にある湖についた。そしてひときわ大きな樹に腰かけた。
「ご、ごめん。巻き込んじゃって」
「あなたのせいじゃないわよ。赤居のやつ三人をって言った相手に訂正しなかったじゃない」
「あいつ、ニヤッとしていたわ。きっとヒトミンも一緒にいなくなって喜んだのよ」
「わかっているけど、他の人の口からきくと、余計に腹が立つわね」
「あら、ごめんなさい」
ヒトミンって。それに、富士元の態度がいつもと全然違う。こっちが地?
「な~に驚いた顔をしてるのよ。私達が仲いいからかしら?」
「あ、いや……えーと」
「実は二人で一緒にやっていたの」
「あ、二人でね……なるほど」
というか、なぜ僕が真ん中で座っているんだろう。凄く落ち着かない。
「さて、どうしようかしらね。これじゃ街にも行けないわ」
「あ、そうだった。ログアウト! ……ダメか」
僕は、大きなため息をついた。
「その事なんだけどさ。もしかして私達、本当に異世界転移したのかもよ」
「は?」
五十嵐の言葉に僕は驚く。それって精神だけ転移? それとも体もなのか? 精神だけだとして、死んだら体に戻れるのか?
「そんな顔を私に向けないでよ。答えを持っているわけじゃないわ。もしそうだとしたらこのままだと私達、殺される前に死ぬわよって事」
「そうよね。この森ではモンスターに出会わなかったけど、反対側の森からはモンスターが出てきたんだし、運が悪ければあの人たちに見つかる前に死んじゃうわね」
そうだった。僕達レベル1! 赤居のような凄いのじゃなきゃモンスターに出会ったら死んでしまうかもしれない。
「それもそうなんだけど、私達お尋ね者になったでしょ。街や村に行ったらお尋ね者として、REWARDと書かれてポスターが張り出されているかもよ。そうしたら普通に買い物もできない。餓死するわ」
餓死!? どうすればいいんだ。こんな目立つ格好だし。というか、そもそもお金持ってないんだけど!
察知? この人達は何かを察知してきたの?
「あの三人組を殺せ!」
「へ? 殺せ?」
僕は、一歩下がる。気迫が凄い。マジだよこの人達。
「逃げるわよ!」
ガシっと、五十嵐に手を引っ張られる。反対側の手で富士元も連れて、五十嵐が走り出すと、僕達も走った。
「待て! 逃がすな」
「森に逃げるわよ」
「え? 森!?」
五十嵐の言葉に僕は聞き返す。
「馬で追いかけられないし、魔法でも狙いづらいわ」
なるほど。でもその前に殺されそうだ。魔法が飛んでくる。ゲームだと言うのにリアル過ぎて、死んで出戻りなんて考えたくない状況だ。
「だめか!」
五十嵐がつぶやいたけど。魔法で僕らはやられなかった。なぜだろうか。まるで結界でも張っているように、近くにきたら魔法は消滅した。
「くそう。ジュシンめ!」
そう叫ぶ声が聞こえる。ジュシンって何? それと僕は間違えられているらしい。
はぁはぁ。疲れたけど森に入っても休めない。重そうな鎧を装備しているのに、走って追いかけて来る。
「ねえ、ヒナ。何の魔法取得した?」
「火の魔法を選んだけど、ここで放ったら大変な事になるし攻撃はやばいでしょ。戦う意思があると思われちゃうわよ」
「そうね。マオは?」
「へ?」
突然名前の方で呼ばれ変な返事を返してしまった。
「何驚いているのよ。まさか魔法とか選ぶ時間がなかったとか言わないわよね?」
「あ、いや……僕は、授業に役立つの選んだから」
「いいから教えて!」
「あ、うん。たしか、ドリズルとニュートリション」
「それよ! ドリズル! それお願い」
「え?」
「早く!」
そう言われても使い方がわからない。
「使いたいと思って魔法名を言葉にすればいいの!」
僕がおどおどしていると、富士元が教えてくれた。
「ありがとう。ドリズル!」
僕が魔法を唱えたとたん、周りに霧がかかる。あたりは、白い霧に包まれた。
「な、なんだこれ……」
思っていた魔法と違うんだけど?
しかも、白い霧に包まれたのに、さっきの様に見えるんだ。
「ねえ、マオ。あなたには動き回れるぐらい辺りは見える?」
「え? 見えないの?」
「やっぱりね。私にはそばの木すら見えないわ」
すごい霧だったのか。
「とりあえず、こっち」
僕は、五十嵐をひっぱり森の中を移動する。辺りからは、どこへ行ったなどと僕達を探す騎士たちの声と足音が聞こえ怖かったが、その音から遠ざかるように逃げた。
呪文を唱え、霧をバラまきながら進み無事逃げ切ったのは、一時間以上森の中を彷徨ってからだ。
「まじ怖かったわ」
「もういい加減にしてほしいわね」
僕たちは、森の中にある湖についた。そしてひときわ大きな樹に腰かけた。
「ご、ごめん。巻き込んじゃって」
「あなたのせいじゃないわよ。赤居のやつ三人をって言った相手に訂正しなかったじゃない」
「あいつ、ニヤッとしていたわ。きっとヒトミンも一緒にいなくなって喜んだのよ」
「わかっているけど、他の人の口からきくと、余計に腹が立つわね」
「あら、ごめんなさい」
ヒトミンって。それに、富士元の態度がいつもと全然違う。こっちが地?
「な~に驚いた顔をしてるのよ。私達が仲いいからかしら?」
「あ、いや……えーと」
「実は二人で一緒にやっていたの」
「あ、二人でね……なるほど」
というか、なぜ僕が真ん中で座っているんだろう。凄く落ち着かない。
「さて、どうしようかしらね。これじゃ街にも行けないわ」
「あ、そうだった。ログアウト! ……ダメか」
僕は、大きなため息をついた。
「その事なんだけどさ。もしかして私達、本当に異世界転移したのかもよ」
「は?」
五十嵐の言葉に僕は驚く。それって精神だけ転移? それとも体もなのか? 精神だけだとして、死んだら体に戻れるのか?
「そんな顔を私に向けないでよ。答えを持っているわけじゃないわ。もしそうだとしたらこのままだと私達、殺される前に死ぬわよって事」
「そうよね。この森ではモンスターに出会わなかったけど、反対側の森からはモンスターが出てきたんだし、運が悪ければあの人たちに見つかる前に死んじゃうわね」
そうだった。僕達レベル1! 赤居のような凄いのじゃなきゃモンスターに出会ったら死んでしまうかもしれない。
「それもそうなんだけど、私達お尋ね者になったでしょ。街や村に行ったらお尋ね者として、REWARDと書かれてポスターが張り出されているかもよ。そうしたら普通に買い物もできない。餓死するわ」
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