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第七章 彼と彼女の復讐劇
第七十七話
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真っ暗闇の中、彼は進んでいた。そこに光を見つける。
「居た。トンマーゾさん!」
「エイブか?」
光はトンマーゾだった。そしてエイブも光だ。
「そうだよ。うーん。やっぱり魔力を刻まないと感覚のみなんだ。それにしても、随分近いね?」
トンマーゾはフンっと鼻を鳴らす。――人の姿ならそう見えただろう。
「隣にいるからな」
「へえ、捕まったんだ」
「……で、何か用か?」
捕まったかどうかは語らないが、否定しないという事は肯定である。
「いや、もう遅いけど、ブラッドリーさんには気を付けてって言おうと思ってね。あの人、魔術師だったから」
「ふん。あいつめ刻印を探していた。お前かなりヘマやっただろう。魔術師の国の王子も乗り込んできていたぞ」
トンマーゾはギロリと睨んだ。
「あぁ。まさか、あそこで乗り込んでくるとは思わなくてさ。ごめんごめん。しかし、魔術師の国と交流があるって噂だったけど本当だったんだ。この国の王って、変わった王だね」
「全くだ。いい土地だったから、エール草で一儲けしようとしたのにな! パァーだ」
「相変わらずせこいね」
トンマーゾの愚痴に、エイブはクスクスと笑う。
「そう言えば、ザイダが牢を覗きに来ていたぞ」
「え? あの人、ここまで来たの? 怖いねぇ」
ちっとも怖がった素振りはない。どちらかと言うと、楽しんでいる様に見える。
「折角だからお前をこんな目に合せたのが、ブラッドリーだと教えてやった。魔術師だともな」
トンマーゾは、後からよく考えれば、エイブが事を起こした時にはまだレオナールがこの国にいなかった事に気が付いた。ならば、彼しかいないと判断したのだ。
「へえ、どんな反応示してた?」
「うん? 楽しい事になりそうな、顔つきだった」
「彼女のしつこさも役に立ちそうだね」
二人は笑い合う。
「さて、俺は起きるかな。しかしお前、結界外でよく動けるな」
「精神のみだからね。トンマーゾさんもやってみたら?」
「……いや、遠慮しておく」
「そ。結構楽しいのに」
「じゃな」
目の前の光は、スッと消えた。
「……ヘマはお互いさまだろう? でも、ティモシーさんから話を聞くのが楽しみだ」
エイブは、ボソッと呟く。
彼は、ただのエール草の密造が自分と結びつくワケがない。トンマーゾが魔術師だとバレたのだと感づいていた。勿論ティモシーが聞いてきた一言がきっかけである――。
「居た。トンマーゾさん!」
「エイブか?」
光はトンマーゾだった。そしてエイブも光だ。
「そうだよ。うーん。やっぱり魔力を刻まないと感覚のみなんだ。それにしても、随分近いね?」
トンマーゾはフンっと鼻を鳴らす。――人の姿ならそう見えただろう。
「隣にいるからな」
「へえ、捕まったんだ」
「……で、何か用か?」
捕まったかどうかは語らないが、否定しないという事は肯定である。
「いや、もう遅いけど、ブラッドリーさんには気を付けてって言おうと思ってね。あの人、魔術師だったから」
「ふん。あいつめ刻印を探していた。お前かなりヘマやっただろう。魔術師の国の王子も乗り込んできていたぞ」
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「全くだ。いい土地だったから、エール草で一儲けしようとしたのにな! パァーだ」
「相変わらずせこいね」
トンマーゾの愚痴に、エイブはクスクスと笑う。
「そう言えば、ザイダが牢を覗きに来ていたぞ」
「え? あの人、ここまで来たの? 怖いねぇ」
ちっとも怖がった素振りはない。どちらかと言うと、楽しんでいる様に見える。
「折角だからお前をこんな目に合せたのが、ブラッドリーだと教えてやった。魔術師だともな」
トンマーゾは、後からよく考えれば、エイブが事を起こした時にはまだレオナールがこの国にいなかった事に気が付いた。ならば、彼しかいないと判断したのだ。
「へえ、どんな反応示してた?」
「うん? 楽しい事になりそうな、顔つきだった」
「彼女のしつこさも役に立ちそうだね」
二人は笑い合う。
「さて、俺は起きるかな。しかしお前、結界外でよく動けるな」
「精神のみだからね。トンマーゾさんもやってみたら?」
「……いや、遠慮しておく」
「そ。結構楽しいのに」
「じゃな」
目の前の光は、スッと消えた。
「……ヘマはお互いさまだろう? でも、ティモシーさんから話を聞くのが楽しみだ」
エイブは、ボソッと呟く。
彼は、ただのエール草の密造が自分と結びつくワケがない。トンマーゾが魔術師だとバレたのだと感づいていた。勿論ティモシーが聞いてきた一言がきっかけである――。
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