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第48話 その誘いお断りします

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 「さて戻ろうか」
 「うん」

 少し元気になったみたい。よかった。
 僕たちは、村へと戻る為道を歩き出すと、向こうから誰かが歩いてくる。ここに来るのは、採取の仕事を請け負った者ぐらいで、ほぼいない。誰?
 僕は、身構えた。現れたのは二人組だ。

 「三人で何を話していたのかしら?」
 「チェミンさんか。脅かさないでよ。うん? 三人?」

 もしかして、リレイスタルさんの事がバレている?

 『それはないだろう』

 じゃ誰の事?

 『さあな』
 「もう一人って誰の事?」
 「髭を剃ったスーレンさん風の冒険者よ」
 「彼はレモンスさんですよ。髭など生やしていた事はないです。この道を下ってきたので、三人で会っていたのかと思ったのです」

 今日は、彼女の護衛は一人のようだ。もう一人は、父親についているのか。

 『レモンスか。何をしにこっちに来たのだ?』

 草原の確認かな? 来てみたら僕たちがいたから去って行ったとか?

 「僕たちは二人で話していたんだけど?」
 「二人で? 一体ここで何を?」
 「チェミンさんには関係ないよ。あ、僕たちは戻るから」
 「……そう」

 なぜか護衛の人が困り顔で、チラッと僕を見た。何?

 『もしかして、君に用事があったのではないか?』

 僕に? でもなんでここにいるってわかったの?

 『その護衛が、二人が草原に行くという話を聞いていたのではないか?』

 なるほど。

 「あの、僕に用事なら村に戻ってからでもいいですか?」
 「もちろん、いいわ」
 『ほらみろ。当たりだっただろう』

 そう言えばいいのに。

 『乙女心がわからんやつだな。明らかに君がニーナと二人でいたと聞いて更に不機嫌になっただろうが』

 彼女が僕に気があると? ないない。チェミンさんは、冒険者には興味はないよ。彼女達からみたら僕らは貧乏人なんだから。



 村についた。

 「ニーナ。無理しないでね」
 「うん。ありがとう」

 軽く手を振り彼女は去って行く。

 「ねえ、彼女とはどういう関係?」
 「え? 幼馴染だよ。で、用事って何かな?」
 「錬金術師にならない?」
 「は?」

 いきなり何を言い出すんだ。

 「才能があると思うのよ。お父さんもバックアップするって言っているわ。悪い話ではないと思うのよ。どう?」
 『よかったではないか』

 何もよくないよ。なんで錬金術師にならないと行けないんだ。

 『何を言っている。私と組めばなんでも作れるだろうが。悪い話ではない。バックアップしてくれると言っているのだぞ?』

 あのね、リレイスタルさんは知らないかもしれないけど、彼女の父親ってケチなんだよ? そんな人が、僕のバックアップを好意でするわけないでしょう。何か裏があるに違いないよ。

 『いつもと立場が逆だな。この前の恩返しかもしれんだろう』

 娘を助けた時ですらロングソード一本だったのに?
 それに冒険者は辞めないよ。少なくとも今回の件が解決するまではね。

 「気持ちはありがたいけど、僕は冒険者を辞める気はないから」
 「あ、じゃ、兼業はどう? そういう人もいるよね? 作ってくれれば売りさばくのは、お父さんがするって言っているわ」
 「はぁ……。やっぱりそういう事か。そういう商売はする気ないから」
 「なんで? 冒険者なんて危険じゃない。なりたくてなったわけでもないのでしょう? 錬金術師の方が儲かるし」
 「あのね、儲ける為に冒険者しているわけじゃないから。僕にも目標がある。Aランクプレイヤーになりたいんだ。悪いけどあきらめて」
 「……それで、あの女を振り向かせる気なのね!」
 「は? あの女?」
 『ニーナの事だろう』

 なぜ急にニーナが出てくるんだ。

 「ニーナは関係ないよ」
 「嘘よ! 私とは態度が全然違うじゃない!」
 「………」

 そんな事言われてもなぁ。

 「この件を引き受けてくれないのならスーレンさんと結婚しちゃうからね!」
 「え? スーレンさんって誰?」
 「新しいお見合い相手のおじさんよ!」
 「もう新しいお見合いしたんだ」

 レモンスさんに似ているという髭の人が、今度のお見合い相手か。10ぐらい歳の差があるからおじさんか。でもレモンスさんに似ているのならイケメンなのでは?

 『チェミンぐらいの年頃なら20代でもおじさんなのだろう。ところでいいのか? 結婚してしまうと言っているが』

 いいんじゃない。お金持ち同士仲良くやればいいと思うよ。

 「向こうも気に入ってくれているならいいんじゃない?」
 「ひどい! もう知らない!」

 って泣きながら走っていく。しかも護衛の人に睨まれた。

 『ほらみろ。絶対に君に気があるのだ。お金持ちとは仲良くしておく方がよいぞ』

 嫌だよ。あの人達と関わると、ろくなことがないから。

 『本当に欲がないやつだ。利用できる者は利用したほうがいいのにな』

 僕はそういう考えは好かないよ。
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