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第18話 嬉しい勧誘
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「間に合え! ブーメラン!」
僕は、咄嗟にロングソードを思いっきり投げていた。
まるで操っていたかのように見えたブーメランの魔法だったからか、つるはしに当たれと祈りながらブーメランと無意識に叫んだそれは、ミューリィさんの目の前に飛んで行く。
カキン!
ミューリィさんが、崩れる様に座り込み、赤い髪が辺りに散らばった。それが一瞬、吹き出した血しぶきかと思ったけど、真っ赤な髪だとわかり安堵する。
「「ミューリィ!!」」
二人が慌ててミューリィさんに駆け寄った。
「大丈夫よ。彼のおかげで髪が切れただけですんだわ」
剣は、ぎりぎり間に合ったけど、ミューリィさんの綺麗な長い赤い髪を巻き込んでしまった。つるはしは、ロングソードと一緒に地面に落ちている。
僕も三人に近づいた。
「大丈夫ですか? あの、ごめんなさい。髪……」
「ううん。あなたのお蔭で命拾いしたわ。ありがとう」
「しかし、危なっかしいな」
リトラさんが安堵しつつも僕に言う。
確かにそうだ。すれすれだった。
「しかし現に助かったからな。最後まで気を抜いてはダメだな。ありがとう、マルリード」
「いえ。咄嗟で……よかったです」
ロメイトさんにもお礼を言われ、少し照れくさい。
「ふう。そうだな。気を抜き過ぎた。流石弟子。ありがとうな」
「い、いえ……」
『咄嗟とはいえよくやった』
あはは。ありがとう。
「しかし、ここまで出来るのにEランクとはな。神乱ではどういう扱いを受けていた?」
ロメイトさんもリトラさんの様に聞いて来た。
「どうやらワザとランクを上げさせなかったみたいだな」
「え? そういうわけではないと思いますけど」
リトラさんの言葉に驚いて僕は返した。確かに荷物持ちをさせられてはいたけど、無理やりではなかったし。
「あのな。さっきも言ったけど、魔法が使えなかったら剣を使える様にするだろうに。荷物持ちだけなんてあり得ない」
「え? そうなの?」
「荷物を持たされていたのか? 体格的に大変だっただろう」
「まあ。そのおかげで体力はついたみたいですけど……でもそんな事をする理由はないと思いますけど?」
凄く嫌われていたとは思えない。そこまでではなかった。
「回復魔法を使える君の仲間が欲しかったんだと思う」
「え? あ、はい。声を掛けられた時にそう言われましたけど……」
僕はおまけの様な感じなのはたしかだけど。
「もっといえば、彼女だけ欲しかった。君はいらなかった。けどそう言っても彼女は、君と一緒じゃないと入らなかっただろう。君だけ外すのには、それだけの理由がいる」
「え? その為にEランクのままにって事?」
「都合よくバフが上手く使えないようだから荷物持ちにして戦闘に参加させなかったのだろう。普通ならそんな事しないからな。しかも、試験の時に何もさせないなんて、あり得ないだろう? 上手く君を誘導して参加させていないのだからたぶん俺の考えは合っている」
「なるほどな。納得だ。もし君に剣術をきちんと教えていれば、彼らと一緒にAランクパーティーの仲間としてやっていけていただろう」
え~!!
僕は、ジグルさんの作戦にはまったって事?
「酷い話ね。それ冒険者協会に訴えたら?」
「それは得策ではないな。彼らはAランクパーティーで、マルリードは、Eランクプレイヤー。どっちの言い分が正しいと思われる? 残念ながらひがみだと思われるだけだろう。それよりもAランクになって見返す方がいい。訴えるよりその方が断然いい」
ロメイトさんに言われ、Aランクになって見返してやる気になってきた。
『やってやれ、マルリード。君なら可能だと思うぞ』
「うん!」
「よし、色々相談にのるからな!」
「そうね。恩は返すわよ」
「もしよければ、Aランクになった暁には、是非満月の夜に入ってくれ」
わー。満月の夜のリーダーからお誘いだよ!!
「はい! それ目指して頑張ります!」
「それにしても、ばっさりだな……」
ぼそっとロメイトさんが、地面に広がっている赤い髪を見て言った。
「ちょうどいいわ。イメチェンしようと思っていたのよ」
ミューリィさんが僕にウインクして言った。
「顔真っ赤」
「え?」
リトラさんに言われ、僕は顔を手で覆った。誰だってミューリィさんにウインクなんてされたら真っ赤になるってば!
僕は、咄嗟にロングソードを思いっきり投げていた。
まるで操っていたかのように見えたブーメランの魔法だったからか、つるはしに当たれと祈りながらブーメランと無意識に叫んだそれは、ミューリィさんの目の前に飛んで行く。
カキン!
ミューリィさんが、崩れる様に座り込み、赤い髪が辺りに散らばった。それが一瞬、吹き出した血しぶきかと思ったけど、真っ赤な髪だとわかり安堵する。
「「ミューリィ!!」」
二人が慌ててミューリィさんに駆け寄った。
「大丈夫よ。彼のおかげで髪が切れただけですんだわ」
剣は、ぎりぎり間に合ったけど、ミューリィさんの綺麗な長い赤い髪を巻き込んでしまった。つるはしは、ロングソードと一緒に地面に落ちている。
僕も三人に近づいた。
「大丈夫ですか? あの、ごめんなさい。髪……」
「ううん。あなたのお蔭で命拾いしたわ。ありがとう」
「しかし、危なっかしいな」
リトラさんが安堵しつつも僕に言う。
確かにそうだ。すれすれだった。
「しかし現に助かったからな。最後まで気を抜いてはダメだな。ありがとう、マルリード」
「いえ。咄嗟で……よかったです」
ロメイトさんにもお礼を言われ、少し照れくさい。
「ふう。そうだな。気を抜き過ぎた。流石弟子。ありがとうな」
「い、いえ……」
『咄嗟とはいえよくやった』
あはは。ありがとう。
「しかし、ここまで出来るのにEランクとはな。神乱ではどういう扱いを受けていた?」
ロメイトさんもリトラさんの様に聞いて来た。
「どうやらワザとランクを上げさせなかったみたいだな」
「え? そういうわけではないと思いますけど」
リトラさんの言葉に驚いて僕は返した。確かに荷物持ちをさせられてはいたけど、無理やりではなかったし。
「あのな。さっきも言ったけど、魔法が使えなかったら剣を使える様にするだろうに。荷物持ちだけなんてあり得ない」
「え? そうなの?」
「荷物を持たされていたのか? 体格的に大変だっただろう」
「まあ。そのおかげで体力はついたみたいですけど……でもそんな事をする理由はないと思いますけど?」
凄く嫌われていたとは思えない。そこまでではなかった。
「回復魔法を使える君の仲間が欲しかったんだと思う」
「え? あ、はい。声を掛けられた時にそう言われましたけど……」
僕はおまけの様な感じなのはたしかだけど。
「もっといえば、彼女だけ欲しかった。君はいらなかった。けどそう言っても彼女は、君と一緒じゃないと入らなかっただろう。君だけ外すのには、それだけの理由がいる」
「え? その為にEランクのままにって事?」
「都合よくバフが上手く使えないようだから荷物持ちにして戦闘に参加させなかったのだろう。普通ならそんな事しないからな。しかも、試験の時に何もさせないなんて、あり得ないだろう? 上手く君を誘導して参加させていないのだからたぶん俺の考えは合っている」
「なるほどな。納得だ。もし君に剣術をきちんと教えていれば、彼らと一緒にAランクパーティーの仲間としてやっていけていただろう」
え~!!
僕は、ジグルさんの作戦にはまったって事?
「酷い話ね。それ冒険者協会に訴えたら?」
「それは得策ではないな。彼らはAランクパーティーで、マルリードは、Eランクプレイヤー。どっちの言い分が正しいと思われる? 残念ながらひがみだと思われるだけだろう。それよりもAランクになって見返す方がいい。訴えるよりその方が断然いい」
ロメイトさんに言われ、Aランクになって見返してやる気になってきた。
『やってやれ、マルリード。君なら可能だと思うぞ』
「うん!」
「よし、色々相談にのるからな!」
「そうね。恩は返すわよ」
「もしよければ、Aランクになった暁には、是非満月の夜に入ってくれ」
わー。満月の夜のリーダーからお誘いだよ!!
「はい! それ目指して頑張ります!」
「それにしても、ばっさりだな……」
ぼそっとロメイトさんが、地面に広がっている赤い髪を見て言った。
「ちょうどいいわ。イメチェンしようと思っていたのよ」
ミューリィさんが僕にウインクして言った。
「顔真っ赤」
「え?」
リトラさんに言われ、僕は顔を手で覆った。誰だってミューリィさんにウインクなんてされたら真っ赤になるってば!
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