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待っているからね。しばしのお別れ

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 「あの、詩人でお願いします!」

 「ではなつめさんに、詩人の素質を与えます。ステム様のご加護がありますように」


 やっと決まったかという顔つきで神官が言っていたけど、無事に二つ目のジョブを手に入れました!


 「うん? 右上に今まで無かった物が表示されている! これが地図?」


 右上に地図らしき物が表示されていて、私が歩くとスクロールしています。ずっと見ていると酔いそうです……。


 「それが地図ね。それもマップオープンで色々設定できるから。今はまだ線だけの感じだろうけど、ランクアップさせれば、場所の名前表示とか……。そうだ! フレンドを表示させる事も出来るわよ!」

 「へえ、そうなんだ。私的にはそれは使わないと思う……。でもまあ便利よね」

 「あ、その地図は、なつめが行った事あるところなら確認出来るよ。ランクが上がれば書き込みも出来るし」


 書き込みかぁ。まあ地図は追々ランクアップさせるかな。まずは歌だよね。


 『ミチルだけど、もう少しで着くから沼で待ってて』


 え? もう着くの? 私一時間近く悩んでいたんだ。そりゃ、神官もあんな顔つきをする訳だ。


 「ミチルへ――わかった。向かいます……どうぞ」


 歌のランクアップは、後にしますか。
 毒の沼に着くと、ミチルが直ぐにやってきた。


 「お待たせ。あ、これが手数料ね。五人分で500G」

 「ありがとう。ミチルは、手数料貰ってるの?」

 「いや。俺はいいの。こういうので恩を売っておくのも手だから気にすんな」


 別にそういうのを気にしている訳じゃないんだけどね。


 「じゃ、今回も頼むな」


 私は巾着袋を受け取った。
 足を毒の沼に一歩踏み入れた時だった。


 《後一時間でこの世界を離脱します》


 ――と、聞こえたのは……。
 どういう事?


 「後一時間で目を覚ますみたいですね」

 「そういう事……」


 私とシシリーはぼぞぼぞと会話を交わす。
 どうやら後一時間で起こされるようです。で、こういう場合はどうしたらいいんでしょか? 取りあえず、五つ葉の採取は終わらせよう。

 20分程で終わり、ミチルに手渡す。

 「おう、ご苦労さん。で、直ぐに出発しても大丈夫か?」

 「その事なんだけど……採取を始める時に、後一時間で離脱ですって聞こえて……」

 「何?! じゃ、このまま行っても離脱前には村にたどり着けないぞ……。どうすっかなぁ」

 「あ、それ持って村に戻っていいですよ。待ってますよね。頼んだ人……」


 ミチルは腕を組んで考え込んでいる。
 別にいいのに。あ、そっか。村に行きたいっていったからか。

 「あ、私の事はいいから。明日INしたらまったり向かうから気にしないで」

 「わかった。取りあえずこれは、渡しておくわ。で、明日一緒に村に行こうぜ。INしたら話しかけて。うんじゃ、また明日!」

 「え!? だから、いいってば……。行っちゃった」

 「いいんじゃない? 護衛したいって言ってるんだし」

 「はぁ……。まあ、いっか。離脱するまでの間、歌のランクアップでもするかな」

 「うんうん。それがいいね」

 私は木陰に向かった。
 着いてからランクアップする前に歌を見てみた。


 「ステータスオープン」


 歌【ランク:1(500)/HP回復の歌】


 効果が表示されていないけどHPが回復するのはわかる。タッチしてみると、詳細が出て来た。


 HP回復の歌【歌詞:優しい風よ。傷を癒せよ。/効果:チーム全員のHPをそれぞれ10%回復する】


 歌って言うより、詩だね。で、10%か。これランクアップしていくと%増えるのかな?
 ……さてやりますか。


 「歌をランクアップ!」

 《歌がランク2になりました》


 よし、上がった! さあ寝ましょう。
 私は寝袋に入り込む。

 う~ん、おかしい。何か全回復が遅い。そう思ってステータスを見てみる事にした。


 「ステータスオープン」


 レベル10だとSPが25あって、SP回復が3だから9分かかるんだ。
 どうりで遅いなぁって思ったわけだ。

 9分って結構長いなぁ……。

 少し経って全回復し、寝袋から出てまたランクアップする。それを繰り返し、ランク4になった時だった。


 《後五分で離脱します》


 ――そうアナウンスが聞こえた。

 後五分か。今日はここまでにしよう。
 そそくさと寝袋に入る。

 歌どうなったかな?


 「ステータスオープン」


 歌【ランク:4(3,000)/HP回復の歌・物理攻撃の歌・魔法攻撃の歌・物理防御の歌】


 おぉ、増えてる。確認して見ると――
 物理攻撃が+10%、魔法攻撃が+10%、物理防御が+20%になるらしい。歌えばだけどね。
 いっぺんに4つは無理かな。取りあえずHP回復は覚えよう。


 《離脱まで後60秒……》


 あと一分切ったか。


 「シシリー。今日はありがとうね」

 「うん。……ランクアップしてくれてありがとう」

 「え?!」


 シシリーは照れながら言って、後ろを向いた。


 《離脱まで後30秒……》


 よかった。嫌ではなかったのね。


 「また明日ね。待ってるからね」

 「うん。また明日」


 《離脱まで10秒……8、7、……》


 カウントダウンが始まり、私はこの世界から離脱した――。
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