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23話 また会う日まで
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「あ、おはようございます」
遊佐が挨拶を交わすと、二人も続けて挨拶をした。
「早期解決、本当にありがとうございました。お蔭で事が大きくならず、影響も最小限で抑えられました。遊佐様には、感謝しきれないぐらいです」
そう言うと、棟方は深々と頭を下げた。
遊佐は立ち上がり、軽く頭を下げる。
「俺は、自分の仕事をしただけです。こちらこそ、ご協力ありがとうございました」
「お二人にも不便を掛け申し訳ありませんでした。そして、さぞ怖い思いをなさった事でしょう」
棟方は、二人にもそう声を掛けた。
「いえ、今回の事件は宿側の責任ではありませんし、お気になさらずに……」
堀がそう言うと、ミキも頷き言う。
「スタッフの方が親切にして下さったので、何も心配しなかったです」
「そうですか。きっと食事もままならなかったと思いますので、最後の食事は豪勢に致しました」
「わあ! ありがとうございます! 堪能させて頂きます!」
ミキが、心から嬉しそうに言うと、
「君は、相変わらず、すごい食い気だな……」
遊佐は、そう言った。
「失礼ね。普通よ! 旅と言ったら食事も楽しみの一つじゃない!」
「そうですね。僕も最後の食事を堪能して帰ります」
堀が賛成すると、棟方はニッコリと微笑み、食堂を出ていった。
「棟方さん、若狭さんも解決に一役買った事、知らないみたいですね」
「別に構わないわ。褒めて欲しくてした事じゃないし」
堀の言葉にそう返すと、ミキはテーブルに向かう。
ミキが椅子に座ると、その横に遊佐、続いて堀も座った。
「別に三人しかいないんだから、横に並ばなくても……」
「そう思うのなら、君が前に移動したらどうだ?」
「もう座ってしまったもの」
なぜ私がと、ミキが返すと――
「俺もだ」
と、遊佐も返した。
そのやり取りを見ていた堀が、突然笑い出す。
二人は驚いて彼を見た。
「あ、すみません。僕、二人がくっついたんだと思っていた事、思い出して……」
遊佐はその言葉に更に驚くが、ミキはやっぱりと言う顔をする。
「夕飯時に若狭さんが、記者だって言って、遊佐さんがボイスレコーダー渡していたから、二人共記者だったんだと思っていたら、最後に警察だって……。あれは、驚いたなぁ」
堀は、あの時の風景を思い出し、うんうんと頷きながら語った。
「渡していたのバレていたのか……」
遊佐が言うと、堀は頷く。
「はい。真横でしたから」
遊佐は、思い出したとハッとしてミキを睨み付ける。
「そうだ! 一杯食わせたな! 隠し事はなしだと約束したのに! レコーダーも!」
――堀さん、余計な事を……。
ミキは、言い訳を交えながらも素直に謝る。
「一応、抜かりなく調べなくちゃって思ってね。録音した時は、まだあの二人が犯人だって気付いていなかったし。ごめん。悪かった」
顔の前で手を合わせ上目遣いで遊佐を見る。
彼は、大きなため息をした。
「全く。警察を出し抜くなんて……」
そこへ、食事が運ばれてくる。
「わぁ。美味しそう!」
大袈裟にミキが言った。
「本当に美味しそうです。ね、遊佐さん」
「そうですね……」
堀がそれぐらいで許してあげてと言う顔をしながら、遊佐に話しかけた。それに仕方がないと、許す事にした。
その後は、三人で世間話をしながらここでの最後の食事を終え、アットホームのスタッフに見送られ宿を後にする。
アットホームのワゴン車を鎌田が運転し、三人を駅まで送る。
アットホームの白い建物がどんどん小さくなって行く。
「そうだ。携番ぐらい、交換しませんか?」
堀は、そう言いながらスマホを出した。
「いいですよ」
「そうだな」
ミキも遊佐も了承すると、三人は情報を交換しあった。
「結婚式の日取りが決まったら、お二人も招待してもいいですか?」
堀がニッコリ微笑みながら訪ねた。
「勿論!」
「あぁ、楽しみにしている」
二人が了承すると、堀は更にニッコリ微笑んだ。
「ありがとうございます。では、連絡しますね」
堀が、スマホを振りながらそう言った。
「着きましたよ」
鎌田が、車を駅の入り口の前に停車させると、三人は車を降りた。
「鎌田さん、ありがとうございました」
ミキがそう言うと、二人も礼を言い、鎌田はアットホームへと戻っていく。
三人は、建物内へ入った。
「僕は、このまま帰りますけど、お二人はどうするんですか?」
堀は、二人に聞いた。
「俺も帰る。明日から仕事だしな」
遊佐は、帰って休みたいという顔をして答えた。
「私は、このまま観光をしてから帰るわ!」
「元気だな、君は。まあ、帰りのJRに乗り遅れないようにな」
観光をして帰るというミキに、遊佐はそう言うと――
「大丈夫よ。夕方までしかいないから」
と、ミキは返した。
「夕方……。十分、観光を堪能できそうだな。じゃな」
遊佐は、少し呆れた顔をしながら、片手を軽く上げた。
堀は軽く頭を下げる。
そして二人は、改札口に向かう。
「またねー! 今度は式場で!」
勿論、式場とは、堀の結婚式の事である。
ブンブンと元気に手を振り二人を見送るミキを遊佐は、恥ずかしいからやめろと軽く睨み付け、改札口を抜けて行った。
「行っちゃった……。さて、荷物をロッカーに入れて観光しますか」
ミキは、空いているロッカーにスーツケースを入れると、建物の外へ出た。
「まずはガラスでも見に行きますか」
着いた時と同じ、海の景色を眺めながらミキは呟き、一歩踏み出した。
遊佐が挨拶を交わすと、二人も続けて挨拶をした。
「早期解決、本当にありがとうございました。お蔭で事が大きくならず、影響も最小限で抑えられました。遊佐様には、感謝しきれないぐらいです」
そう言うと、棟方は深々と頭を下げた。
遊佐は立ち上がり、軽く頭を下げる。
「俺は、自分の仕事をしただけです。こちらこそ、ご協力ありがとうございました」
「お二人にも不便を掛け申し訳ありませんでした。そして、さぞ怖い思いをなさった事でしょう」
棟方は、二人にもそう声を掛けた。
「いえ、今回の事件は宿側の責任ではありませんし、お気になさらずに……」
堀がそう言うと、ミキも頷き言う。
「スタッフの方が親切にして下さったので、何も心配しなかったです」
「そうですか。きっと食事もままならなかったと思いますので、最後の食事は豪勢に致しました」
「わあ! ありがとうございます! 堪能させて頂きます!」
ミキが、心から嬉しそうに言うと、
「君は、相変わらず、すごい食い気だな……」
遊佐は、そう言った。
「失礼ね。普通よ! 旅と言ったら食事も楽しみの一つじゃない!」
「そうですね。僕も最後の食事を堪能して帰ります」
堀が賛成すると、棟方はニッコリと微笑み、食堂を出ていった。
「棟方さん、若狭さんも解決に一役買った事、知らないみたいですね」
「別に構わないわ。褒めて欲しくてした事じゃないし」
堀の言葉にそう返すと、ミキはテーブルに向かう。
ミキが椅子に座ると、その横に遊佐、続いて堀も座った。
「別に三人しかいないんだから、横に並ばなくても……」
「そう思うのなら、君が前に移動したらどうだ?」
「もう座ってしまったもの」
なぜ私がと、ミキが返すと――
「俺もだ」
と、遊佐も返した。
そのやり取りを見ていた堀が、突然笑い出す。
二人は驚いて彼を見た。
「あ、すみません。僕、二人がくっついたんだと思っていた事、思い出して……」
遊佐はその言葉に更に驚くが、ミキはやっぱりと言う顔をする。
「夕飯時に若狭さんが、記者だって言って、遊佐さんがボイスレコーダー渡していたから、二人共記者だったんだと思っていたら、最後に警察だって……。あれは、驚いたなぁ」
堀は、あの時の風景を思い出し、うんうんと頷きながら語った。
「渡していたのバレていたのか……」
遊佐が言うと、堀は頷く。
「はい。真横でしたから」
遊佐は、思い出したとハッとしてミキを睨み付ける。
「そうだ! 一杯食わせたな! 隠し事はなしだと約束したのに! レコーダーも!」
――堀さん、余計な事を……。
ミキは、言い訳を交えながらも素直に謝る。
「一応、抜かりなく調べなくちゃって思ってね。録音した時は、まだあの二人が犯人だって気付いていなかったし。ごめん。悪かった」
顔の前で手を合わせ上目遣いで遊佐を見る。
彼は、大きなため息をした。
「全く。警察を出し抜くなんて……」
そこへ、食事が運ばれてくる。
「わぁ。美味しそう!」
大袈裟にミキが言った。
「本当に美味しそうです。ね、遊佐さん」
「そうですね……」
堀がそれぐらいで許してあげてと言う顔をしながら、遊佐に話しかけた。それに仕方がないと、許す事にした。
その後は、三人で世間話をしながらここでの最後の食事を終え、アットホームのスタッフに見送られ宿を後にする。
アットホームのワゴン車を鎌田が運転し、三人を駅まで送る。
アットホームの白い建物がどんどん小さくなって行く。
「そうだ。携番ぐらい、交換しませんか?」
堀は、そう言いながらスマホを出した。
「いいですよ」
「そうだな」
ミキも遊佐も了承すると、三人は情報を交換しあった。
「結婚式の日取りが決まったら、お二人も招待してもいいですか?」
堀がニッコリ微笑みながら訪ねた。
「勿論!」
「あぁ、楽しみにしている」
二人が了承すると、堀は更にニッコリ微笑んだ。
「ありがとうございます。では、連絡しますね」
堀が、スマホを振りながらそう言った。
「着きましたよ」
鎌田が、車を駅の入り口の前に停車させると、三人は車を降りた。
「鎌田さん、ありがとうございました」
ミキがそう言うと、二人も礼を言い、鎌田はアットホームへと戻っていく。
三人は、建物内へ入った。
「僕は、このまま帰りますけど、お二人はどうするんですか?」
堀は、二人に聞いた。
「俺も帰る。明日から仕事だしな」
遊佐は、帰って休みたいという顔をして答えた。
「私は、このまま観光をしてから帰るわ!」
「元気だな、君は。まあ、帰りのJRに乗り遅れないようにな」
観光をして帰るというミキに、遊佐はそう言うと――
「大丈夫よ。夕方までしかいないから」
と、ミキは返した。
「夕方……。十分、観光を堪能できそうだな。じゃな」
遊佐は、少し呆れた顔をしながら、片手を軽く上げた。
堀は軽く頭を下げる。
そして二人は、改札口に向かう。
「またねー! 今度は式場で!」
勿論、式場とは、堀の結婚式の事である。
ブンブンと元気に手を振り二人を見送るミキを遊佐は、恥ずかしいからやめろと軽く睨み付け、改札口を抜けて行った。
「行っちゃった……。さて、荷物をロッカーに入れて観光しますか」
ミキは、空いているロッカーにスーツケースを入れると、建物の外へ出た。
「まずはガラスでも見に行きますか」
着いた時と同じ、海の景色を眺めながらミキは呟き、一歩踏み出した。
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