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8話 ルティロン視点

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 このままだと非常にまずい。
 俺のせいで身バレしていなくても、俺のせいにされる可能性がある。だったらこっちも暴露しよう。そうすれば、俺がバラすとは思わないはず。

 「やっとお仲間に出会えたわ。普通の令嬢のお話ってつまらなくて……」
 「あの、その事だが。俺は、ルティロンだ」
 「うん? 知っているわ」

 キョトンとして何を言っていると言う顔つきで言うな。声を聞いたらわかるだろうに。

 「だから声を聞いたらわかるだろう? 俺は男だ。今の姿が偽り。女装しているんだ」

 赤面して言えば、目をぱちくりとして俺の事を見ている。
 本当に俺を令嬢だと思っていたんだな。

 「え~!! 令嬢ではなく子息だったの? ごめんなさい。でもだったら手合わせにしてもらおうか?」
 「は? て、手合わせ?」
 「えぇ。令嬢に痣を作るわけにはいかないと思っていたけど、男なら問題ないでしょう?」

 驚いたのは一瞬だけかよ。

 「……容赦ないな」
 「強くなりたいのでしょう? せめて私に当てられるようにならないと、お父様に指導なんてして頂けないわよ」
 「え! 副隊長から手解きを?」
 「では誰に教わるおつもりだったのかしら?」

 何だかよくわからないが、なぜお嬢様の口ぶりなんだ。

 「あぁ、ロデの恰好でお嬢様の口調はちぐはぐで……」
 「あら、失礼。つい、貴族が相手だと思うと令嬢の方になっちゃうんだよね。でも、ラフリィード子息も令嬢の恰好でその言葉遣いに声だと、まるで令嬢に合わせてアフレコしているみたいだけどね」
 「な……」

 全然お淑やかな令嬢じゃないな。まあロデとして活動しているおてんば娘なんだから当たり前か。

 「ところで、どうしてルティアン嬢の振りなどしている? もしかしていない人物?」
 「なんだ、俺達の事を知っていて暴露したのではないのか? そんな簡単に教えてよい秘密ではないだろうに」
 「うん? お父様に、ラフリィード侯爵とは仲良くして損はないって言われていたからね」

 なんだ。損得でか。それで俺に暴露したのか。

 「ルティアンは、双子の妹だ。訳があって命が狙われているので、俺が囮になって先に帰国したんだ」
 「命!? って、そんな重大な事を私に話してよかったの?」
 「ロデの秘密を知ってしまったからな。何かあって、副隊長にまで命を狙われたら溜まったもんじゃない」
 「なるほど。でも帰国した時だけでいいんじゃない? 令嬢としてお茶会に参加しなくても……」
 「まあな。こっちにも色々とあるんだ」
 「ふ~ん」

 帰国は、秘密裏に行われた。知っているのは、国王陛下に陛下が信頼がおけると思った者達に伝えただけのはず。それなのに、この国に入って賊に襲われた。
 そしてすぐに、カシュアン侯爵からお茶会に誘われ、誘いに乗った。
 だいたい、秘密裏に帰って来たと言うのにお茶会のお誘いを出して来るなど間抜けだ。そう思って行ったら、聞いた通りの兄妹でつい口走ってしまったけど、ハルサッグ嬢の様子を見ると、令息だったとはバレてはいなかったみたいだな。
 もしかしたら、彼女が単純なだけかもしれないが。

 「ところでどこに向かっているんだ?」

 ロデがいる場所に向かうと思っていたが、そのロデが目の前にいるのだからそうではない。

 「男性専門の衣装屋よ。だから令嬢に会う事はほぼないの。それに口も堅いから安心よ」
 「そこで、わざわざロデの服を作っているのか?」
 「だって、自宅には呼べないでしょう」

 確かに。
 俺も剣の鍛錬をしたいと思ったが、今の状況では邸に他人は入れられない。だから出向いたのだから。貴族がいない一般部隊に。

 「本当に口は堅いから大丈夫よ。ここでこれ作ったんだから」
 「は? 支給されるモノじゃないのか」
 「だって、集団でサイズ測定するのよ。だから自分で頼むって啖呵を切って注文したのよ」
 「……よく今までバレなかったな」
 「優勝した者が女だったなんて言う、発想がないのでは?」
 「た、確かに」

 俺の攻撃は、彼女にかすりもしなかったからな。確かに女かもとは思わないか。

 「お手をどうぞ」

 そして、到着すれば馬車から降りる俺に手を差し出す、男前さ。
 自分が男だと知られているから小恥ずかしいのだが。
 でも出してくれたので、手を取った。
 剣ダコが出来ているが、手は俺よりは小さいな。
 今の彼女は、ヒールを履いていないせいか、俺より少し背が低い。何となく変な気分だ。令嬢の時の方が背が高いなんて。まあヒール履いているのだから当たり前だが。もっと言うなら、俺も同じなんだよなぁ。はぁ……。背丈がもう少し欲しかった。
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