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13:父が馬車の中で思うこと
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ローリーがベッドから転落してから部屋の中に使用人を2名配置することにした。主治医にもすぐに駆けつけて貰えるように近くの部屋を用意し、そこで薬の作成を頼んでいた。それから新しく薬剤師も数名雇った。早く薬を完成させ、状態を安定させて欲しかったからだ。しかし、ローリーの状態はどんどん悪化していくばかりだった。
「ローリー……」
「…っ……っ……っ……」
自発呼吸が難しくなってきたため、今では呼吸を補助するマスク型の魔道具を常に装着している。意識のある時間はほとんどなく、苦しんでいる様子しか見ることができない。それでも、少しでも会って様子を見ようと家族みんなが何度も部屋を訪れていた。嫁いでいた長女ロリアナもこちらに帰ってきている。他の子供たちも学園を今は休んでいる状態だ。考えたくは無いが、ローリーの症状は非常に悪く、いつ最後が訪れるか分からない状態なのだ。なので学園側もそれを理解してくれ課題を出すことで出席としてくれた。普段の成績もあるが、学園長には感謝しかない。
「旦那様」
「なんだ」
「……王宮からの呼び出しが…」
「…………、……要件は?」
「……不明でございます」
「……チッ」
学園でさえ理解して気を使った対応を取ってくれているというのに、陛下は一体どれほどの重要な案件で呼び出したのだろうかと腹が立つ。が、この国の貴族たるもの陛下の召集に従わない訳には行かない。仕方がないとローリーの額にキスをして部屋を出て馬車に乗り込み向かった。
「陛下、お呼びでしょうか」
「あぁ、こんな時に呼び付けて悪かったな、まぁかけろ」
執務室へと通され陛下の言葉に本当になと心の中で悪態をつく。
「あまり長く滞在したくなさそうな顔をしていることだし、早速本題に入ろうか」
「えぇ、お気遣いありがとうございます」
「末の息子の容態が悪く薬の作成に難航しているんだったな」
「……ええ」
「…なにか力になれないかとこちらでも腕のいい者を探していたんだ」
「…お気遣いありがとうございます」
「そこで、腕の良い薬師を見つけた。連れてきてくれ!」
陛下が扉に向かって声をかけるとすぐに2人の人が入ってきた。
「「失礼いたします」」
「彼ら兄妹はスキルレベルが非常に高く優秀だと言う。薬の作成の役に立つかと思うのだ。連れて行け」
「……、…良いの、ですか…っ」
「あぁ、構わない。こちらとしても仲の良い友人の息子を失うのは辛い。なにか力になればと思うのだ」
「……感謝、致します。……本当に……」
「かまわない。早くこやつらを連れて帰れ。他になにか力になれる事があればなんでも言うんだそ」
来る前は何の用だと腹立たしい気持ちで乗っていた馬車も、帰りは感謝の念でいっぱいだった。これで少し助かる可能性が上がったと、期待せずにはいられなかった。
「ローリー……」
「…っ……っ……っ……」
自発呼吸が難しくなってきたため、今では呼吸を補助するマスク型の魔道具を常に装着している。意識のある時間はほとんどなく、苦しんでいる様子しか見ることができない。それでも、少しでも会って様子を見ようと家族みんなが何度も部屋を訪れていた。嫁いでいた長女ロリアナもこちらに帰ってきている。他の子供たちも学園を今は休んでいる状態だ。考えたくは無いが、ローリーの症状は非常に悪く、いつ最後が訪れるか分からない状態なのだ。なので学園側もそれを理解してくれ課題を出すことで出席としてくれた。普段の成績もあるが、学園長には感謝しかない。
「旦那様」
「なんだ」
「……王宮からの呼び出しが…」
「…………、……要件は?」
「……不明でございます」
「……チッ」
学園でさえ理解して気を使った対応を取ってくれているというのに、陛下は一体どれほどの重要な案件で呼び出したのだろうかと腹が立つ。が、この国の貴族たるもの陛下の召集に従わない訳には行かない。仕方がないとローリーの額にキスをして部屋を出て馬車に乗り込み向かった。
「陛下、お呼びでしょうか」
「あぁ、こんな時に呼び付けて悪かったな、まぁかけろ」
執務室へと通され陛下の言葉に本当になと心の中で悪態をつく。
「あまり長く滞在したくなさそうな顔をしていることだし、早速本題に入ろうか」
「えぇ、お気遣いありがとうございます」
「末の息子の容態が悪く薬の作成に難航しているんだったな」
「……ええ」
「…なにか力になれないかとこちらでも腕のいい者を探していたんだ」
「…お気遣いありがとうございます」
「そこで、腕の良い薬師を見つけた。連れてきてくれ!」
陛下が扉に向かって声をかけるとすぐに2人の人が入ってきた。
「「失礼いたします」」
「彼ら兄妹はスキルレベルが非常に高く優秀だと言う。薬の作成の役に立つかと思うのだ。連れて行け」
「……、…良いの、ですか…っ」
「あぁ、構わない。こちらとしても仲の良い友人の息子を失うのは辛い。なにか力になればと思うのだ」
「……感謝、致します。……本当に……」
「かまわない。早くこやつらを連れて帰れ。他になにか力になれる事があればなんでも言うんだそ」
来る前は何の用だと腹立たしい気持ちで乗っていた馬車も、帰りは感謝の念でいっぱいだった。これで少し助かる可能性が上がったと、期待せずにはいられなかった。
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