前世は元気、今世は病弱。それが望んだ人生です!〜新米神様のおまけ転生は心配される人生を望む〜

a.m.

文字の大きさ
上 下
13 / 23

13:父が馬車の中で思うこと

しおりを挟む
 ローリーがベッドから転落してから部屋の中に使用人を2名配置することにした。主治医にもすぐに駆けつけて貰えるように近くの部屋を用意し、そこで薬の作成を頼んでいた。それから新しく薬剤師も数名雇った。早く薬を完成させ、状態を安定させて欲しかったからだ。しかし、ローリーの状態はどんどん悪化していくばかりだった。

「ローリー……」
「…っ……っ……っ……」

 自発呼吸が難しくなってきたため、今では呼吸を補助するマスク型の魔道具を常に装着している。意識のある時間はほとんどなく、苦しんでいる様子しか見ることができない。それでも、少しでも会って様子を見ようと家族みんなが何度も部屋を訪れていた。嫁いでいた長女ロリアナもこちらに帰ってきている。他の子供たちも学園を今は休んでいる状態だ。考えたくは無いが、ローリーの症状は非常に悪く、いつ最後が訪れるか分からない状態なのだ。なので学園側もそれを理解してくれ課題を出すことで出席としてくれた。普段の成績もあるが、学園長には感謝しかない。

「旦那様」
「なんだ」
「……王宮からの呼び出しが…」
「…………、……要件は?」
「……不明でございます」
「……チッ」

 学園でさえ理解して気を使った対応を取ってくれているというのに、陛下は一体どれほどの重要な案件で呼び出したのだろうかと腹が立つ。が、この国の貴族たるもの陛下の召集に従わない訳には行かない。仕方がないとローリーの額にキスをして部屋を出て馬車に乗り込み向かった。

「陛下、お呼びでしょうか」
「あぁ、こんな時に呼び付けて悪かったな、まぁかけろ」

 執務室へと通され陛下の言葉に本当になと心の中で悪態をつく。

「あまり長く滞在したくなさそうな顔をしていることだし、早速本題に入ろうか」
「えぇ、お気遣いありがとうございます」
「末の息子の容態が悪く薬の作成に難航しているんだったな」
「……ええ」
「…なにか力になれないかとこちらでも腕のいい者を探していたんだ」
「…お気遣いありがとうございます」
「そこで、腕の良い薬師を見つけた。連れてきてくれ!」

 陛下が扉に向かって声をかけるとすぐに2人の人が入ってきた。

「「失礼いたします」」
「彼ら兄妹はスキルレベルが非常に高く優秀だと言う。薬の作成の役に立つかと思うのだ。連れて行け」
「……、…良いの、ですか…っ」
「あぁ、構わない。こちらとしても仲の良い友人の息子を失うのは辛い。なにか力になればと思うのだ」
「……感謝、致します。……本当に……」
「かまわない。早くこやつらを連れて帰れ。他になにか力になれる事があればなんでも言うんだそ」

  来る前は何の用だと腹立たしい気持ちで乗っていた馬車も、帰りは感謝の念でいっぱいだった。これで少し助かる可能性が上がったと、期待せずにはいられなかった。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~

ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ 以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ 唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活 かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

処理中です...