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5:どうしても自分で行きたかった
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誕生日の次の日、少し体調が良くなりベッドから起き上がれるようになったため、ヘンリス兄さんにもらったプレゼントを開封してみると、パジャマと本とぬいぐるみが入っていた。
パジャマの触り心地はとても良く、本は子供用の魔法書だった。そしてぬいぐるみはフクロウのような動物だった。ぬいぐるみも絵本も他の人から貰ったけれど、内容が被らないように考えてくれたのだろう。基本的に部屋にいる俺に必要なものは限られるから。とても気に入ったのでその感謝を伝えに行こうとベッドからおり、部屋を出る。
「…ふぅ…」
ベッドから扉までで少し疲れてしまったが、病み上がりだから仕方がない。そのまま廊下を歩いていると、使用人が心配して声をかけてきてくれたが、1人で兄の部屋へ行くのだと伝え歩みを進めた。後ろで使用人が心配そうに着いてきているが、無視だ。
「はぁ……ゲボッ……」
少しむせただけなのに、後ろから心配そうに漏れる声が聞こえた。
「ついてこないで?」
「……も、申し訳ありません……」
「しごろ、もろっていいよ」
「……失礼いたします」
使用人が仕事に戻るのを見届け、再び歩き出す。
小さな体には距離が遠い。1度階段を登らなきゃいけないし階段までも遠い。俺の部屋は2階で、使用人待機室が近い位置にある。ベルを鳴らすと直ぐに誰か駆けつけれる距離だ。兄の部屋というか、他の家族の部屋は全て三階だ。俺の部屋も一応三階にもうひとつあるらしいが、基本的には2階の部屋だ。
「うぅ……ん……」
階段を登っていると息が苦しくなってくる。
手すりを持って一段一段ゆっくりと上がっていたが、苦しくなってしゃがみこむ。
「ふっ……ふぅ……ふぅ……ケホ…」
またベッドに逆戻りになるのは嫌だったため、落ち着くようにゆっくりと呼吸をして、落ち着かせる。しばらくそうしていると、通りがかった使用人に心配されたが、ほっとくように伝えた。
「ローリー!大丈夫かい?」
階段の上からホリナス兄さんが降りてきた。
「ずっとそこにいるんだって?使用人からきいたよ?大丈夫?どうしたの?お布団戻ろうか?」
「……」
ふるふると首を振り、伸ばされる両手を拒む。
誰かが兄さんにチクったらしい。最悪だ。
「どうして?まだ熱がひいたばかりだろ?じっとしてないと」
「やだ……ふぅ……んぅ……っ…ケホ」
「ほら、戻ろう。お兄ちゃんが連れてってあげるから」
「やだぁ…や……ケホケホ……うっゲホゲホ…ゲホゲホ……もどら、ない…ゲホゲホゲホゲホ」
「ちょ、大丈夫?」
抱き上げられたので、手を伸ばし拒否をし、降りようと動くと体力を使い咳が止まらなくなってしまった。
「おり、おりるゲホゲホ!…おろ、して、へっ…くぅ……う……おり……ゲホゲホゲホゲホ」
「わ、わかったよ、だから、ゆっくり呼吸をして」
降ろしてもらい、しばらくゆっくりと呼吸を整え、なんとか落ち着いた。
「どこに行こうとしていたんだい?」
「…ヘンリスにいさんの、おへや…ふぅ…」
「どうして?」
「ぷれれんと、あけたの、それれ、ありがと、いいに、」
3歳にもなるのに、前世の記憶のせいか発音が上手くできず、長文の会話が難しいが、一生懸命話す。
「そっか、わかった。じゃあ、連れて行ってあげるよ」
「いい、じぶんれ、けほ……ハァ…いく」
「……わかった。じゃあ、一緒について行っていいかい?しんどくなったら、抱っこしてあげるから」
「……うん…」
正直もうしんどい。さっきむせて体力を使いすぎた。だけど、前世では何もかも自分でやっていたからか、出来ることはやりたいという気持ちが出てきてしまう。もちろん心配してくれるのは嬉しいし、望んでいたから嫌じゃない。だけど、そういう性格なのだ。
階段をホリナス兄さんに手伝ってもらい何とかのぼり終え、あとは真っ直ぐな廊下を歩くだけ。なのだが、目眩がしてしゃがみこんでしまった。
「うぅ~……」
「どうした?ローリー?しんどい?」
「…ふっ…うぅ~~」
目眩が酷く目の奥の痛みから酷い頭痛に襲われ、ホリナス兄さんにしがみついてしまった。
「ローリー?頭痛い?お部屋戻る?」
焦る兄さんの声が聞こえ、返事をしなければと思う。
「へん、りす、うぅ゙~~っ、はぁ、はぁ、はぁ、ゲホゲホゲホゲホッ!!!!ぐぅ゙っ…」
「えー……後でにしよう?」
「や、まって、じぶんれ、あとで、まって、」
階段を降りようとする兄さんに少し落ち着いたらヘンリス兄さんの部屋へ行くからまってと伝えようとする。頭が割れるように痛いけれど、なぜか、行くと決めたのだから成し遂げなければという思いに駆られていた。それに、大事にされてるのがわかるから、ありがとうと伝えたい。
「えー……もーー、わかったから、じっとして、連れて行ってあげるから、ね?それで我慢して。部屋に戻るか、抱っこされて兄さんの部屋へ行くか、どっち?」
「だっこ……」
「はい」
「にいしゃん、あり、やと、、」
抵抗をやめて、抱っこされていると、頭痛が落ち着いてきた。そして、体力を使い果たしたのか、意識がぼーっとしてきて、眠ってしまった。
パジャマの触り心地はとても良く、本は子供用の魔法書だった。そしてぬいぐるみはフクロウのような動物だった。ぬいぐるみも絵本も他の人から貰ったけれど、内容が被らないように考えてくれたのだろう。基本的に部屋にいる俺に必要なものは限られるから。とても気に入ったのでその感謝を伝えに行こうとベッドからおり、部屋を出る。
「…ふぅ…」
ベッドから扉までで少し疲れてしまったが、病み上がりだから仕方がない。そのまま廊下を歩いていると、使用人が心配して声をかけてきてくれたが、1人で兄の部屋へ行くのだと伝え歩みを進めた。後ろで使用人が心配そうに着いてきているが、無視だ。
「はぁ……ゲボッ……」
少しむせただけなのに、後ろから心配そうに漏れる声が聞こえた。
「ついてこないで?」
「……も、申し訳ありません……」
「しごろ、もろっていいよ」
「……失礼いたします」
使用人が仕事に戻るのを見届け、再び歩き出す。
小さな体には距離が遠い。1度階段を登らなきゃいけないし階段までも遠い。俺の部屋は2階で、使用人待機室が近い位置にある。ベルを鳴らすと直ぐに誰か駆けつけれる距離だ。兄の部屋というか、他の家族の部屋は全て三階だ。俺の部屋も一応三階にもうひとつあるらしいが、基本的には2階の部屋だ。
「うぅ……ん……」
階段を登っていると息が苦しくなってくる。
手すりを持って一段一段ゆっくりと上がっていたが、苦しくなってしゃがみこむ。
「ふっ……ふぅ……ふぅ……ケホ…」
またベッドに逆戻りになるのは嫌だったため、落ち着くようにゆっくりと呼吸をして、落ち着かせる。しばらくそうしていると、通りがかった使用人に心配されたが、ほっとくように伝えた。
「ローリー!大丈夫かい?」
階段の上からホリナス兄さんが降りてきた。
「ずっとそこにいるんだって?使用人からきいたよ?大丈夫?どうしたの?お布団戻ろうか?」
「……」
ふるふると首を振り、伸ばされる両手を拒む。
誰かが兄さんにチクったらしい。最悪だ。
「どうして?まだ熱がひいたばかりだろ?じっとしてないと」
「やだ……ふぅ……んぅ……っ…ケホ」
「ほら、戻ろう。お兄ちゃんが連れてってあげるから」
「やだぁ…や……ケホケホ……うっゲホゲホ…ゲホゲホ……もどら、ない…ゲホゲホゲホゲホ」
「ちょ、大丈夫?」
抱き上げられたので、手を伸ばし拒否をし、降りようと動くと体力を使い咳が止まらなくなってしまった。
「おり、おりるゲホゲホ!…おろ、して、へっ…くぅ……う……おり……ゲホゲホゲホゲホ」
「わ、わかったよ、だから、ゆっくり呼吸をして」
降ろしてもらい、しばらくゆっくりと呼吸を整え、なんとか落ち着いた。
「どこに行こうとしていたんだい?」
「…ヘンリスにいさんの、おへや…ふぅ…」
「どうして?」
「ぷれれんと、あけたの、それれ、ありがと、いいに、」
3歳にもなるのに、前世の記憶のせいか発音が上手くできず、長文の会話が難しいが、一生懸命話す。
「そっか、わかった。じゃあ、連れて行ってあげるよ」
「いい、じぶんれ、けほ……ハァ…いく」
「……わかった。じゃあ、一緒について行っていいかい?しんどくなったら、抱っこしてあげるから」
「……うん…」
正直もうしんどい。さっきむせて体力を使いすぎた。だけど、前世では何もかも自分でやっていたからか、出来ることはやりたいという気持ちが出てきてしまう。もちろん心配してくれるのは嬉しいし、望んでいたから嫌じゃない。だけど、そういう性格なのだ。
階段をホリナス兄さんに手伝ってもらい何とかのぼり終え、あとは真っ直ぐな廊下を歩くだけ。なのだが、目眩がしてしゃがみこんでしまった。
「うぅ~……」
「どうした?ローリー?しんどい?」
「…ふっ…うぅ~~」
目眩が酷く目の奥の痛みから酷い頭痛に襲われ、ホリナス兄さんにしがみついてしまった。
「ローリー?頭痛い?お部屋戻る?」
焦る兄さんの声が聞こえ、返事をしなければと思う。
「へん、りす、うぅ゙~~っ、はぁ、はぁ、はぁ、ゲホゲホゲホゲホッ!!!!ぐぅ゙っ…」
「えー……後でにしよう?」
「や、まって、じぶんれ、あとで、まって、」
階段を降りようとする兄さんに少し落ち着いたらヘンリス兄さんの部屋へ行くからまってと伝えようとする。頭が割れるように痛いけれど、なぜか、行くと決めたのだから成し遂げなければという思いに駆られていた。それに、大事にされてるのがわかるから、ありがとうと伝えたい。
「えー……もーー、わかったから、じっとして、連れて行ってあげるから、ね?それで我慢して。部屋に戻るか、抱っこされて兄さんの部屋へ行くか、どっち?」
「だっこ……」
「はい」
「にいしゃん、あり、やと、、」
抵抗をやめて、抱っこされていると、頭痛が落ち着いてきた。そして、体力を使い果たしたのか、意識がぼーっとしてきて、眠ってしまった。
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