小野寺社長のお気に入り

茜色

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欲望

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「あっ……!あ、や……っ」
「乳首だけでめちゃくちゃエロい顔になってるぞ」

 胸の先端から痺れるような快感が走る。小野寺の親指と人差し指が乳首を摘んで引っ張るようにねまわすので、その淫らな刺激に頭の中がボーッとしてきた。

 身体をしならせる度に、ショーツがクチュッと微かな水音を立てている気がする。きっとクロッチ部分は透明な蜜でぐちゅぐちゅになっているのだろう。
 渚は胸への刺激に身をよじらせながら、さっきみたいに性器にも触れてほしいという秘かな期待で身体の奥がせつなくなってきた。

 小野寺は渚が必死に隠そうとしている欲望を見透かしているようだった。
 左手で胸への愛撫を続けながら、右手を再び渚の下半身へと伸ばしていく。太腿までずり落ちていたストッキングは破れそうな勢いで脱がされてしまい、小野寺は渚のショーツまでも一気に引き下ろしてしまった。

「社長……っ。ダメです……っ」
 まるで説得力のない吐息交じりの掠れ声。わずかな理性を口にしてみても、小野寺には通用しない。
「いいから。俺の膝の上にまたがれ」

 ……信じられない。下着をはぎ取られ、スカートの下は何も着けていない状態で、上司の膝の上に乗るだなんて。
 今度こそ拒否しなければと思った渚のうなじを掴み、小野寺が強引にキスしてきた。
 あっという間に舌を翻弄されて、またしても脱力してしまう自分に腹が立つ。小野寺は唇と舌で犯すような卑猥なキスをしながら、渚のお尻の肉を撫で回しては優しく揉んだ。指先の動きにお腹の奥が引き攣りそうなほど疼いてしまう。

「ほら、ここに跨れよ」
 ソファに深々と身体を預けた小野寺が、自分の太腿辺りを指差した。誘惑するような、ひどくセクシーな眼で渚を追い詰めながら。
 死ぬほど恥ずかしくて今すぐ逃げ出したい。けれども小野寺は渚の腰をグッと掴んでいて、決して逃がしてはくれない。

 渚は唇を噛みながら、小野寺と向き合う形で膝の上に跨った。
 自分の愛液でスーツのスラックスが汚れてしまうと思い躊躇したが、小野寺はそんなことはどうでもいいとでも言いたげに、渚の身体を強引に引き寄せて自分の太腿の上に座らせた。

 泣きたいほどの羞恥心で顔から火が出そうだ。
 心臓が激しく乱れ打っている。暗がりで艶めく小野寺の瞳に見上げられ、渚は胸の内側で何かが音を立ててはじけるような感覚を抱いた。
 キャミソールも肩に引っかかっていたブラジャーも乱暴に剥ぎ取られた。渚が身に付けているのは、今やお腹まで捲り上げられたタイトスカートだけだ。 

「ちょっと、腰を浮かせてみな」
 言われた通りに腰の位置を少し上げた途端、小野寺の手のひらが渚の濡れた性器をぬるりと撫でた。
「ふ、あぁっ……!」
「うわ、ぬちょぬちょ。すっげー、やらしい」
「いや……、そんなこと……っ」
「……渚。おまえのここ、手触りがやらしすぎる」
 小野寺は指先を器用にうごめかせながら、渚の秘裂から花芽までをこれ以上ないほど淫らに撫で回す。
 
 気持ちいい。だらしなく性器がとろけていく。渚は腰を震わせながら、小野寺の肩に倒れ込みそうになった。
 小野寺は渚の秘所を複数の指で丁寧にいじりながら、眼の前で揺れる乳房にしゃぶりついてきた。

 丸い胸のふくらみが、小野寺の唾液にまみれていく。
 貪るように味わい、つんと尖ったつぼみを唇で吸い上げながら、小野寺が呼吸を乱している。同時に右手の指がクリトリスを絶妙な加減でこすり、お尻側から回された左手は蜜に濡れた花びらを掻き分けて膣の浅い部分を優しくいじってくる。

 こんなにいやらしい刺激を一度に与えられたことなど生まれて初めてで、渚は自分の身体がバラバラにほどけて小野寺に呑み込まれてしまうような気がした。 
 乳首を軽く噛まれ、思わずのけぞりそうになると今度は熱い舌で乳輪をねっとりと舐めまわされる。コリコリに勃起した先端を舌先でチョンチョンとつつかれては転がされ、それからまたチュウッと大袈裟なほど音を立てて唇でしゃぶられる。
 頭が朦朧として身体が崩れそうになったとき、小野寺の指がぬぷっと膣内に差し込まれた。

「は、ぁっ……!」
 男の長くて太い指が、自分の秘密の場所を優しく掻き回している。その卑猥な感触に腰がひくひく揺れ、渚は強烈に小野寺の唇が欲しくなった。
「しゃ、ちょう……っ」
 乳房から唇を離した小野寺が、なまめかしい眼で渚を見上げてくる。渚が自分の欲望を口にできないまま息を荒げていると、小野寺は察したように微かに笑って渚の濡れた唇を吸った。

 信じられない展開にまだ戸惑いながら、渚は小野寺の髪に手を這わせてキスに夢中になった。頭で考えるよりも本能で、小野寺の唇と舌を自ら激しく欲していた。
 渚が積極的になったことで小野寺もますます火が点いたのか、腰を抱く手に更に力が込められる。舌と舌が絡まりあって苦しくなるほど淫らに溶けあい、そうしながらも小野寺の長い指が渚の膣壁をぬるぬると撫でさすっては快楽のありかを探している。

「……渚。中がうねうね波打ってる。気持ちいいんだろ。めちゃくちゃいやらしいぞ。ほら、ここどうだ?」
 小野寺が指を少し曲げて、渚の秘められた箇所をクニクニと優しく擦った。
「あっ、やぁ……っ」
「ここ、いいんだろ?おまえが喜んでるの、伝わってくるよ。すげぇ締めつけてくる」
 小野寺は興奮したように声を掠れさせ、更に指の動きを加速させた。
「ふ、あぁっ……!」
 間の抜けた情けない声が漏れ、渚は思わず小野寺の髪に顔を埋めた。男物の整髪料の匂い。胸の奥に何か甘苦しいような感情が込み上げてきて、思わずすすり泣きのような声を漏らしてしまう。

 どうして身体の奥のこんな場所に、下腹部が締めつけられるような快楽の種が潜んでいるのだろう。渚は乱れていく自分が未だに信じられないまま、小野寺の指に欲望を暴かれて恍惚となった。
 愛でるように優しく、でもどこか熱を込めた動きで膣内を繰り返し擦られる。背中にゾクゾクと震えが走り、子宮の辺りなのか、お腹の奥が引き絞られるような感覚に追い込まれていく。

「あ、あっ……、社長……っ!」
「渚、こっち見ろ」
 言われて眼を開き、小野寺の顔を見下ろす。欲情した男の顔に更に渚も欲情し、自分から小野寺の唇を激しく貪った。

 小野寺が別の指で、渚のクリトリスを上下に擦り始めた。動きを揃えるように膣内の指も感じやすい場所を何度も往復する。
 もうダメだと思った。小野寺は渚を限界まで追い込もうとしている。身体の奥がせつなげに鳴き、快楽の波が押し寄せてきて渚はとうとう甘い嬌声を上げた。

「あっ、ダメっ……!あ、もう……っ」
「いいよ。イケよ、渚」
「や、あっ……、ん、あぁ……っ!」
 渚は小野寺にしがみつきながら、大きく身を震わせた。今までに経験したことのない鋭い快感に襲われ、小野寺の指を締めつけながら絶頂に達してしまった。


 脱力して小野寺の胸に倒れ込む。ボタンを外したワイシャツの胸元から引き締まった肌が覗き、顔を埋めた渚の頬に小野寺の汗が触れた。
 男の匂いがする。決して嫌ではない、なんだかせつなくなるような動物的な匂い。渚は裸にスカート一枚という非常に恥ずかしい姿のまま、呼吸が落ち着くまで小野寺の胸に顔を突っ伏していた。


 小野寺の手でいとも簡単に絶頂に導かれてしまった。
 渚は自分の痴態が信じられずに呆然となった。それでいて甘く気怠い心地良さにうっとりとし、このまま小野寺の腕の中で眠ってしまいたい気持ちが込み上げてくる。

 どうかしている。社長と部下が、恋人でもないのにこうしてオフィスの一室で淫らな行為にいそしむなんて。「レッスン」と言う名目とは言え、していることはほとんど秘密の情事ではないか。小野寺はいったいどういうつもりでこんなことをするのだろう……?

 不意に、頭のてっぺんに唇を押し当てられるのが分かった。
 まるで慈しむようにそっと髪にキスされ、額の生え際にも唇が優しく押し当てられる。背中を抱いている大きな手は温かくて、絶対的な安心感すら感じてしまう。
 ただの「レッスン」で、男はこんなふうに愛おしげにくちづけるものなのだろうか。こんなふうに大切そうに抱きしめるものなのだろうか。
 渚はやっと鎮まりかけていた心臓がまた騒ぎだすのを感じて動揺した。

 小野寺は本当は自分のことをどう想っているのだろう……?
 先日からちらちらと胸によぎっていたその疑問符が、いま急速に膨れ上がって答えを欲しがっている。そしてそんなふうに意識すればするほど、余計に顔を上げて男の眼を見るのが怖くなった。

 知りたいのに知るのが怖い。思い上がりの勘違いだとしたら、想像以上に傷つくような気がする。
 渚はギュッと眼を閉じたまま、無意識に小野寺の胸で身体を固くした。これ以上優しく抱きしめられたら、自分を抑えることができなくなりそうで怖くなった。


「コツ、分かったか?」
「……え?」
 渚の髪から小野寺の唇が離れ、密着していた身体にも隙間ができた。
「イクときのコツだよ。それに、自分のどこがどう感じやすいか、今のでだいぶ掴めたんじゃないか?」
 一瞬何を言っているのだろうと怪訝に思い、それから現実に引き戻されたことに気づいた。
 思わず小野寺の顔を見上げる。さっきまでの熱のこもった眼差しはそこになく、いつもの飄々とした自由人の表情に戻っていた。


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