嘘つきは秘めごとのはじまり

茜色

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蜜は滴る

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 ベッドに押し倒され、バスタオルを剥ぎ取られた。
 陸にありのままの身体をじっと見つめられ、どうしても頬の火照りを隠し切れなくなる。

「・・・可愛い。すっごい、きれい。俺ね、今めちゃくちゃドキドキしてるんだけど、分かる?」
 陸は私の手を取って自分の胸に当てた。硬い胸板から、たしかにドクンドクンと大きめの鼓動が伝わってくる。緊張しているのは私だけじゃないと分かり、ホッとして嬉しい気持ちにすらなった。

「雛子さん・・・」
 陸が覆いかぶさるようにくちづけてきた。
 ちゅっ、ちゅっと最初は淡くついばむようなキスだったけれど、すぐに唇も舌も官能的な動きに変わる。ねっとりと舐め上げるように舌を絡ませ、唇が腫れそうなほど激しく吸われた。ぴちゃぴちゃと濡れた音が耳をくすぐり、溶けあった舌はどこからが自分のものか分からないほど一体化していく。

 陸は離れていた数年を取り返すかのように、せっかちなほど激しいキスで私の理性を奪った。
 まるで生まれる前から陸のキスを知っていたような錯覚に陥る。それくらい陸とのキスは私の感覚を丸ごと呑み込み、きっと私たちははるか遠い過去にもこんなふうに溶けあったのだと信じたくなった。
「気持ちいい・・・。雛子さん、俺、キスだけでもうイきそうだよ」
 陸は腰に巻いていたバスタオルを取り払った。ちょっとした武器のようにも見える剛直なペニスが顔を出す。私はほんの少しの怖さと、口に出すのもはばかられる欲望で息苦しくなった。

「陸くん、私ね・・・」 
「ん?」
 深く息を吸い込み、私は陸に秘密を打ち明けることにした。もう二度と嘘はつかないし、つまらない見栄を張ることもやめると決めたから。
「私・・・あの時以来、一度も、してないの」
 陸は一瞬キョトンとなった。それからすぐにハッとした顔になり、やがてその瞳に喜びにも似たせつなげな感情が浮かび上がった。

「誰とも?俺とした後、誰ともセックスしてないってこと・・・?」
「うん・・・。この年で、そういうのって、引く?」
「・・・引くわけないじゃん!嬉しいよそんなの。決まってるでしょ」
 でもどうして?と陸はやや興奮気味に問いかけてきた。雛子さんなら、彼氏くらいいくらでもできたでしょ?とお世辞を並べて。
「つきあった人は何人かいたの。でも、どうしてもそういうことをする気になれなくて、気づいたら、いわゆるセカンドバージンっていうのになってて・・・。恥ずかしいんだけど」
「いやいやいや、全然恥ずかしくない!それだけ身持ちが固かったってことでしょ?なのに、俺にはこうして身体を開いてくれてるんだ。こんな嬉しいことってないよ・・・」
 陸はスーッと深く息を吸うと、「ヤバい、感動してますます勃ってきた」と自分の性器を見下ろした。

「雛子さん・・・、ありがとう。雛子さんは俺とだけセックスするんだね。この先もずっとだよ。一生、俺だけしか知らずにいて」
 陸は甘い瞳で囁きながら、私の唇や頬やおでこに何度も何度もキスした。
「・・・陸くんは・・・?陸くんも、彼女いたでしょ?大学で、すっごくモテたでしょ?」 
 たくさんの女の子とつきあったかもしれないし、一人の人と長くつきあったかもしれない。どっちにしても私はやはり嫉妬してしまうけれど、それでもそういう過去を踏まえて私の前に再度現れてくれた陸が愛おしくてたまらなかった。

「俺も、何人かつきあったよ。・・・男だからって言ったらズルい言い訳になるけど、一応身体の関係もあった。でも、誰にも本気にならなかった。なりたくても、なれなかった。誰とつきあっても、気持ちの奥に雛子さんの存在が消えなかったから」
 ・・・嘘くさいって思うでしょ。でも本当なんだよ。どうしても忘れられないから、思い切って雛子さんを追いかけてきたんだよ。
 陸はそう言って、ちょっと潤んだ眼差しで私を見下ろした。

「雛子さん、いっぱい一緒に気持ち良くなろ?俺もう、雛子さんがいてくれればなんにも望まない」
 陸は私の首筋を強く吸い、目立つ場所にしるしを付けた。
「俺のマーク。・・・うわぁ、やることがガキくせぇ」
 ふたりでクスクス笑いあう。それからふたりともちょっと涙ぐんで、とても優しいキスをした。
 陸はそのまま唇を私の胸元に這わせ、物欲しげに尖っているつぼみに音を立ててしゃぶりついた。

「あっ・・・・、あ、ん・・・」
 陸の熱い舌が私の乳首を転がす。転がしては唇で強めに挟み、引っ張るようにチュウッと甘く吸う。
 胸の先に快楽の芽があるような気がした。陸が乳房を愛撫する度に、下腹部が締めつけられるように疼いて頭がボーッとしてくる。
「胸、気持ちいい?・・・乳首、すっごい勃ってるよ。可愛い」
 見下ろすと、胸の先が陸の唾液で光っていた。もっともっと気持ち良くしてほしくて、私は陸の頭を胸に抱え込んだ。

 乳房を味わいながら、陸の右手が私の太腿の裏側を撫で回した。ゾクゾクするような心地良い気配に深い息が漏れる。陸は私の反応を注意深く見ながら、その手を私の性器へと滑らせた。

「あ、ここすっごい熱い」
 陸はうっとりした声音で囁きながら、私のクリトリスから秘裂までを何度も指でなぞった。
「ほら、もういっぱい濡れてグショグショになってる。雛子さん、気持ちいいんだね。俺の指、溶けそうだよ」
 陸の指が動く度に、私の耳にも淫らな音が聞こえてくる。少し粘り気のある愛液がお尻の方まで濡らしているのが分かり、私は羞恥心で思わず顔を手で隠した。

「恥ずかしがらないで。・・・雛子さんがこんなに濡れてくれて、俺感動してるんだから」
 陸は私を安心させるように柔らかなキスをくれた。左手で包み込むように背中を抱かれ、私は陸の首に両手を回して抱きついた。その体勢のまま、右手で性器をひたすら淫靡に攻められる。
 陸の骨っぽくて太い指が、愛でるようにクリトリスを擦った。あふれ出した蜜を膨らんだ芽に塗り付けられ、クニクニと指先で転がされるとのけぞりそうになる。
「あっ、やっ・・・!」
 私が腰を揺らして陸にしがみつくと、陸はそのままヌプッと中指を膣内に挿入してきた。

「あっ・・・、なかに・・・」
「うん、雛子さんのなか、めちゃくちゃやらしい。ブツブツがいっぱいある。俺の指に絡みついて、すっごいうねってるよ」
 雛子さん、可愛い。陸は譫言のように繰り返しながら、膣壁を指で探り、特に感じやすい窪みを優しく撫でるように刺激して私に悲鳴を上げさせた。

「ん、あぁっ・・・。陸くん・・・っ、そこ、ダメ・・・」
「ダメじゃなくて、気持ちいいでしょ?ここ、俺だけの秘密の場所ね。ああ、また締めつけてくる。雛子さん、やらしすぎ・・・」
 陸は更に指を奥まで差し入れた。小さなスポットに指が当たった途端、「ふあっ・・・!」と変に甘くだらしない声が出てしまった。陸がその場所を繰り返し優しく擦ると、まるで雲の上に引き上げられるような深い快感に意識が飛びそうになった。

「ん、あ、ああっ・・・!」 
 脚が突っ張り、腰が二度、三度跳ねた。ビクビク震える私の身体を、陸が熱い息を吐きながらギュッと捕まえるように抱いてくれる。私は激しく胸を上下させながら、突然乱れた呼吸に唖然となった。
「・・・イっちゃったね。雛子さん、なんでそんなに可愛いの」
 陸が私の火照った顔を見下ろし、思いつめたような表情でくちづけてきた。
 強く抱きしめあうと、私の乳房が陸の硬い胸の筋肉に押しつぶされる。私たちはもっとお互いが欲しくなって、唇と舌を激しく貪りあった。

「雛子さん、俺の上に座ってみて」
 陸がベッドのヘッドボードに寄りかかるように座り、私の腕を掴んで自分の膝の上へ座らせようとした。
「え、こんな格好、恥ずかしいよ・・・」
「恥ずかしくないよ。エロくてドキドキする。ほら、すごいでしょ?俺の」
 陸は私のお尻を両手で掴んで引き寄せ、自分の勃起したペニスに私の性器が触れるように腰を下ろさせた。
「あっ・・・。やっ・・・」
 猛々しくそそり立ったペニスに少し触れただけで、私の秘裂から新たな蜜がとろとろとこぼれ出してふたりの肌を濡らしてしまう。

「擦りつけてみて。好きなように動いて」
「そんなの・・・」
 恥ずかしくてできない。そう答えようと思った。けれども陸の声がまるで呪文のように耳に響いて、私を誘うように導いていく。
 自分でも信じられないことに、私は陸の性器に自分の秘裂を押し当てて上下にゆっくり動き始めていた。


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