19 / 24
第十九話 疑惑
しおりを挟む
「う・・ん?」
カナが目を覚ました時には血まみれになったライルの腕の中だった。ライルの体は冷たくなっており微かに呼吸が出来ている程度だった。カナは頭の中で混乱していた。声が出せることと何故ライルに抱かれ、そのライルが血まみれなのかを『覚えていない』のだ。恐らくだが、ライルが倒れる前に消したのだろう。
「ライル・・・?ライル!!」
自分の声を聞いて驚いたが、この状況では関係ないことだ。目の前に居るライルの姿は、ボロボロで何かから守ってくれたのかもしれない。
ピクッとライルの瞼が開き、視点の合わない目でカナを確認すると柔らかく笑う。
頬に冷たいライルの手が当てられ、カナは動揺しながらもライルの手を握るとライルが
「殺そうとしたくせに・・・俺の為に・・・泣くのか?」
気づけば自分の目から涙が零れ落ち、ライルの袖を濡らしていた。ライルの状態を見て恐らく出血によるものだと判断するが、血液のストックもなければ医療技術も分からない。
もしも自分の力の中で、時間を巻き戻し出来ればと願うと、店や廊下から血液がライルの傷口に戻り、傷もまるでなかったかのようにきえてしまった。それでもカナは気づかずに両手を握りしめて願うばかりだったが、ライルの手がカナの頭に触れられ、顔を上げるとライルがニッコリと笑っていた。
「お前の力は無限大だな」
「ラ・・ライル・・?え?傷・・・え?」
自分でも何が何やらで判らずだったが、ライルはカナを抱きしめて謝った。
「すまん・・・記憶・・・また消してしまった。やっぱり、あれ以上は・・・混乱する・・・」
「判った・・・何かが起きているのは確かだな」
泣いていたのがウソのように、メモに書かれている文章そのままにしたように言葉を発するのはカナらしいとは思うが可愛らしさが欲しいものだとライルは思ったが、今はそれどころではない。決着がつくか判らないが、サネヤは負けることはないと思っている。彼女の無限大の力は底知れないものがある。それこそ目の前に居る・・・
「カナ・・・」
「なんだ?」
冗談と思っていたが、カナとサネヤは似ている。
先ほどの情報交換の場で、話していたサネヤの夫はターゲットのセイヤ、もしかしたら偽名かもしれないと思うが視野に入れて考えるべきだ。カナは知らない力で驚いているだろうが、サネヤの娘ならば無限の可能性があるわけだ。
それを含めてカナに忠告する。
「君を壊したくない」
「?」
カナは声を出せることになれていないのか、理解していないのか判らないが、ライルは目を赤くしカナの動きを止める。これは名前はないが、恐らく人間の眼から脳に入り込み神経を操るものだとライルは思っている。
そして止まったカナの頭に触れる。
暴れようとするカナだったが、ライルは優しく微笑んで囁いた・・・
ーごめんね
カナの意識が遠くなり再びカナは倒れそうになりライルに抱きかかえられた。そして別の部屋に行きアオイに渡してあった携帯に電話する。
『もしもし?何かあったの?ガイさんがライルのところには行くなって・・・』
「三人と一緒に、ここから離れるんだ。二度と会えないかもしれない」
『え?ちょっと?ライル!?今どこ!!?』
プツと電話を切り、最後の涙と思いカナを抱きしめながら額にキスを落とす。子供だと思っていたが、いつの間にか成長するものだ。いつだって殺意むき出しだったが、それでも自分にとって努力家だと思ってた。
この店、このスラム街は再び消えるかもしれない、その時の為にガイ、ユウ、ハヤト、アオイには生きていてもらわないといけない。そして目の前で気を失っている少女も、一緒に立て直してほしいと思う。
開けっ放しになっている扉に入り、ギョッとしたのは床に散らばるムカデの死体と目の前で動かない二人の男女。サネヤの方は指先を見ながら鼻歌を歌っている程度だった。しかし男、セイヤの方は苦虫を齧ったように苦痛に満ちた顔をしている。
一体自分が気絶している間に何があったのかと思うが、明らかに『何か』があったはずだ。
「サネヤさん、何があったんですか?」
「む?何もないさ、あぁ・・またカナの記憶を消したんだな?賢明な判断だ。こいつを殺して私も消えるよ。カナの方は、頼んで良いか?」
「サネヤさんが消えることはない、カナの母親として生きてください」
サネヤが言うが前に、ライルはセイヤの頭に触れかけていたが、それを見たセイヤがニヤリと笑い、伸ばされた手を掴み高笑いをする。そしてライルの力、全身の気力体力が奪われている気がした。
目がかすみ、立っている事さえ出来ないくらいの脱力感にライルは、自分の行いが再びサネヤに迷惑が掛かると思っていた。
「す・・み・・ません・・・」
「若者は良いねぇ、エネルギーが有り余っていて」
「カナだけではなく、他の者の命を吸っていたのか?」
倒れているライルを抱き上げ、ソファーに寝かせサネヤは腕だけを人形のように外しセイヤに投げつけ、咄嗟に避けきれなかった、セイヤの首を掴んだ。
腕を取ろうとするセイヤだったが、それ以上にサネヤの腕の力が強く、宙に浮かぶと廊下へと向かい出入り口へと連れていく。
先ほどのセイヤが制止していたのは、サネヤの力の一つでもあったが、本人は『威圧』しただけのことだと言っていたことがあった。昔に気づけていれば、カナは生まれることはなかったかもしれない。それでも生まれてきた子供に罪はない。
滅びておくのは百年を生きる自分たちだ。
朝日が眩しいが心地よい風が頬を撫でる。
ライルたちの居場所から、かなり離れた場所・・・落ちれば浮かんでこないといわれる海岸でセイヤを落とした。セイヤはせき込みながら立ち上がる。それでも余裕を見せるのは男の意地なのか本当に策があるのか不明だ。
「ライルの何を取った?」
「若いツバメちゃんの事か?ちょっと体力を貰って、寿命を貰ったよ。三十年ほど」
「そうか・・・」
カナに続きライルまで目の前に居る男の餌食になったと思うと、頭に血が上るが心を落ち着かせ平然を保ちながら自分の中での『禁忌』の力を思い出す。一度やったきり、二度と使うことはないと思っていたが、力が不明なセイヤに通用するのかは判らない。それでも・・・
「ライルなんだって?」
「二度と・・会えないって・・・」
「に・・どと?」
何がどうなってやがるとガイは、見てきた状況を説明するのには、アオイと言う存在が危険な目に合うと言うのは判るので、腕組みをしながら頭を悩ませる。それを見ていたユウが、ガイに対して
「ば・・かが、あ・・たま・・つか・・うと・・熱が・・・でる」
「な!!誰が馬鹿だ!!?」
「店に何かあったのかしら?」
カナが目を覚ました時には血まみれになったライルの腕の中だった。ライルの体は冷たくなっており微かに呼吸が出来ている程度だった。カナは頭の中で混乱していた。声が出せることと何故ライルに抱かれ、そのライルが血まみれなのかを『覚えていない』のだ。恐らくだが、ライルが倒れる前に消したのだろう。
「ライル・・・?ライル!!」
自分の声を聞いて驚いたが、この状況では関係ないことだ。目の前に居るライルの姿は、ボロボロで何かから守ってくれたのかもしれない。
ピクッとライルの瞼が開き、視点の合わない目でカナを確認すると柔らかく笑う。
頬に冷たいライルの手が当てられ、カナは動揺しながらもライルの手を握るとライルが
「殺そうとしたくせに・・・俺の為に・・・泣くのか?」
気づけば自分の目から涙が零れ落ち、ライルの袖を濡らしていた。ライルの状態を見て恐らく出血によるものだと判断するが、血液のストックもなければ医療技術も分からない。
もしも自分の力の中で、時間を巻き戻し出来ればと願うと、店や廊下から血液がライルの傷口に戻り、傷もまるでなかったかのようにきえてしまった。それでもカナは気づかずに両手を握りしめて願うばかりだったが、ライルの手がカナの頭に触れられ、顔を上げるとライルがニッコリと笑っていた。
「お前の力は無限大だな」
「ラ・・ライル・・?え?傷・・・え?」
自分でも何が何やらで判らずだったが、ライルはカナを抱きしめて謝った。
「すまん・・・記憶・・・また消してしまった。やっぱり、あれ以上は・・・混乱する・・・」
「判った・・・何かが起きているのは確かだな」
泣いていたのがウソのように、メモに書かれている文章そのままにしたように言葉を発するのはカナらしいとは思うが可愛らしさが欲しいものだとライルは思ったが、今はそれどころではない。決着がつくか判らないが、サネヤは負けることはないと思っている。彼女の無限大の力は底知れないものがある。それこそ目の前に居る・・・
「カナ・・・」
「なんだ?」
冗談と思っていたが、カナとサネヤは似ている。
先ほどの情報交換の場で、話していたサネヤの夫はターゲットのセイヤ、もしかしたら偽名かもしれないと思うが視野に入れて考えるべきだ。カナは知らない力で驚いているだろうが、サネヤの娘ならば無限の可能性があるわけだ。
それを含めてカナに忠告する。
「君を壊したくない」
「?」
カナは声を出せることになれていないのか、理解していないのか判らないが、ライルは目を赤くしカナの動きを止める。これは名前はないが、恐らく人間の眼から脳に入り込み神経を操るものだとライルは思っている。
そして止まったカナの頭に触れる。
暴れようとするカナだったが、ライルは優しく微笑んで囁いた・・・
ーごめんね
カナの意識が遠くなり再びカナは倒れそうになりライルに抱きかかえられた。そして別の部屋に行きアオイに渡してあった携帯に電話する。
『もしもし?何かあったの?ガイさんがライルのところには行くなって・・・』
「三人と一緒に、ここから離れるんだ。二度と会えないかもしれない」
『え?ちょっと?ライル!?今どこ!!?』
プツと電話を切り、最後の涙と思いカナを抱きしめながら額にキスを落とす。子供だと思っていたが、いつの間にか成長するものだ。いつだって殺意むき出しだったが、それでも自分にとって努力家だと思ってた。
この店、このスラム街は再び消えるかもしれない、その時の為にガイ、ユウ、ハヤト、アオイには生きていてもらわないといけない。そして目の前で気を失っている少女も、一緒に立て直してほしいと思う。
開けっ放しになっている扉に入り、ギョッとしたのは床に散らばるムカデの死体と目の前で動かない二人の男女。サネヤの方は指先を見ながら鼻歌を歌っている程度だった。しかし男、セイヤの方は苦虫を齧ったように苦痛に満ちた顔をしている。
一体自分が気絶している間に何があったのかと思うが、明らかに『何か』があったはずだ。
「サネヤさん、何があったんですか?」
「む?何もないさ、あぁ・・またカナの記憶を消したんだな?賢明な判断だ。こいつを殺して私も消えるよ。カナの方は、頼んで良いか?」
「サネヤさんが消えることはない、カナの母親として生きてください」
サネヤが言うが前に、ライルはセイヤの頭に触れかけていたが、それを見たセイヤがニヤリと笑い、伸ばされた手を掴み高笑いをする。そしてライルの力、全身の気力体力が奪われている気がした。
目がかすみ、立っている事さえ出来ないくらいの脱力感にライルは、自分の行いが再びサネヤに迷惑が掛かると思っていた。
「す・・み・・ません・・・」
「若者は良いねぇ、エネルギーが有り余っていて」
「カナだけではなく、他の者の命を吸っていたのか?」
倒れているライルを抱き上げ、ソファーに寝かせサネヤは腕だけを人形のように外しセイヤに投げつけ、咄嗟に避けきれなかった、セイヤの首を掴んだ。
腕を取ろうとするセイヤだったが、それ以上にサネヤの腕の力が強く、宙に浮かぶと廊下へと向かい出入り口へと連れていく。
先ほどのセイヤが制止していたのは、サネヤの力の一つでもあったが、本人は『威圧』しただけのことだと言っていたことがあった。昔に気づけていれば、カナは生まれることはなかったかもしれない。それでも生まれてきた子供に罪はない。
滅びておくのは百年を生きる自分たちだ。
朝日が眩しいが心地よい風が頬を撫でる。
ライルたちの居場所から、かなり離れた場所・・・落ちれば浮かんでこないといわれる海岸でセイヤを落とした。セイヤはせき込みながら立ち上がる。それでも余裕を見せるのは男の意地なのか本当に策があるのか不明だ。
「ライルの何を取った?」
「若いツバメちゃんの事か?ちょっと体力を貰って、寿命を貰ったよ。三十年ほど」
「そうか・・・」
カナに続きライルまで目の前に居る男の餌食になったと思うと、頭に血が上るが心を落ち着かせ平然を保ちながら自分の中での『禁忌』の力を思い出す。一度やったきり、二度と使うことはないと思っていたが、力が不明なセイヤに通用するのかは判らない。それでも・・・
「ライルなんだって?」
「二度と・・会えないって・・・」
「に・・どと?」
何がどうなってやがるとガイは、見てきた状況を説明するのには、アオイと言う存在が危険な目に合うと言うのは判るので、腕組みをしながら頭を悩ませる。それを見ていたユウが、ガイに対して
「ば・・かが、あ・・たま・・つか・・うと・・熱が・・・でる」
「な!!誰が馬鹿だ!!?」
「店に何かあったのかしら?」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる