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第二十四話 Ωの気持ちαの気持ち

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隆は圭太の悲し気な顔を思い出しながら罪悪感が少しだけ芽生える。今まで幼馴染、友人として付き合ってきた仲だ。いきなり番と言われても本能か分からないが抵抗もあるし、何故か圭太に対して態度は変わったと思う。

 「βなら良かったのに・・・」





その頃、圭太は自室でベッドで座っており、その顔は真剣だった。
 どうすれば隆を手に入れられる?
 何故、隆は自分を拒む?
 隆には他に好きな人が居るのか?
 今まで自分は何をした?
自問自答するが、全てにおいて答えが出てこない。最後の今まで自分は何をしてきたというならば、オネェとして覚醒したのもあるかもしれないが、もし隆がそれで拒むのなら自分は男らしく戻ろう。
 少しだけ武の番である二人の気持ちが分かる。二人そろって番が一人の番を取り合う。それだけでも辛いのに自分が選ばれなかった弟は、兄をどれだけ憎んだだろう?

 「やーね・・・、私ったら・・・何を考えてるのかしら」

 「変態チックな事」

ビクッと体が跳ね振り返ると兄の陣が勉強机の椅子に座っていた。気づかないほど自分は考え込んでいたのだろうか?

 「ちょっと兄さん、悪趣味よ?」

 「いやいや、何度も声をかけたさ。お前百面相してたから笑いこらえるの大変でな」

 「もぉ!何の用?」

 「いや、今回の件だが、お前に任せていいか?」

今回の件というのは武のことだろうか?

 「どうして?あの施設の責任者じゃないの?」

 「正確には責任者じゃないが、いずれお前に任せるかもしれないってことだ。俺の番が発情期に入ってきたから、しばらく家には帰ってこない」

 「え?」

 「じゃぁ施設の職員には言ってるから、よろしくなぁ」





誠也も自室でボーとしていた。結構長い事一緒に居たと思ったけれど、何も知らなかったと思いながら夜風に当たっていた。そう考えると、自分は幸運なのかもしれない。
 しかしだ!他の二人同様だが昔から知ってる仲で今更どうしろと言うのか。断じて嫌と言うわけではない。それでも・・・、いやもしかしたら無意識のうちに照れているだけなのかもしれない。
 そう考えると携帯を取って洋介の電話番号に電話を掛ける。






「と言うわけで、圭太が今後君たちの様子を見るが、もちろん警備も付けるから安心してくれていい。あと約束通り拘束具はつけたままで、明日から始めることにするから・・・って大丈夫かい?顔色が悪い・・・まぁ当然か」

 青ざめた武の顔を見ながら書類処理をする陣だったが、一つのたとえをする。

 「逆の立場ならどうする?」

意味が判らなく、陣を見つめると陣は指を立ててたとえ話をする。

 「自分が相手の番を愛していて、それでも拒まれて逃げ回られて自分一人だけになったら。君はどんな気持ちかな?あ、相手が一人の場合で」

 「自分が相手を愛してる場合・・・?」

もしも最初から蓮を選んでいて、それを拒まれてしまったら?考えたことがなかった。自分がΩで相手がαだったからだろうか?でももしもαの蓮を好きに・・最初から好きで・・愛していても、蓮が拒み続けていたら?
 ポロリと涙が零れた。

 「ちょ、泣かすつもりがないのに?だから、雷君のことも少しは考えてあげてみて?笑い話でもしてあげてみてよ。少しは安定するかもしれないし本当に君を追いかけてきたとしたらスゴイと思うよ?」

恐怖でしかなかった緊張感が少しだけ薄まった気がした。

 「判ってくれたようで何より。あ・と・は・・・・、・・・脳波にも問題はないし昔の様に喋ると思ってくれていい。緊張しなくても良いからね?」

 「はい・・・」
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