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第十六話 巣作りの道具とる辛い想い
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デートから数日後にヒートがやって来た。薬を飲んだとしても定期的に来るものは仕方ないと陣も言っていた。ただただ耐えるしかないと言っていたのだが、この状態を圭太に見られたら襲われると思いながら、逆に圭太の匂いに包まれたいとさえ思った。
「番の巣作りってか?噛まれてねぇのに・・・ぅ」
「巣作りと言うよりもあった方が楽にはなるらしいです。これを持ってきました」
加納が持ってきたのは圭太のシャツだった。渡されると甘い匂いと共に安堵感が出てきて、眠気もやってきた。だがしかし、圭太の匂いで安堵感を得てしまうのは悔しい気もするが、匂いには負けてしまう。
数分後、隆は眠ってしまった。
「陣さんの言う通り、簡単に眠ってしまいました」
「そうだろうね~、噛まれる前に始まるヒートは匂いだけで満足するから。番になってからの巣作りは凄いらしいよ?」
何気に田中家に居る陣に対して隆の両親は、三者面談とは違い昔の様に陣を子供として扱うようにもなる。
「陣君、圭太君の様子はどうだね?落ち着いているかい?」
「まぁおちついてるよオジサン、オバサンも安心て?番になるってのは難しい事であり自分たちで決めないと結構難しい時があるもんだ。拒絶されたまま頸を噛んだところでメロメロになるってわけでもないし、徐々に慣らしていくしかないよ」
「そうなのね・・・」
ジッと立っている加納に陣は座る様に促し、加納もチョコンと開いているソファーに座る。夕方近くに話した西塔の事が気になってしまい、陣に訊ねようとするが今話すことではない。今は隆と圭太の話だけだ。しかし表情で見えたのか陣が真剣な顔で隆の両親に切り出す。
「同じようにΩのフェロモンが強い子が居るんですが、その子は番が・・・死んだんです。お互い合意で頸を噛んで誓い合った仲でした」
「え?その場合、どうなるのかしら?」
「ヒートは来ますが、もちろん番の匂いの物も消えてしまいます。きっと苦しいでしょう。しかし上書きとして番には出来ないのは知ってますよね?」
「あぁ、その場合は・・・どうしているのかね?」
「Ωとしてではなく、βに出来るかの実験を行うつもりです。定期的に施設に来てもらって検査や様々な薬の投与を行ってますが、βになったとしても・・・もしかしたらヒートはきえないかもしれません。それに女性と付き合ったところで子供が出来るか分からない状態です」
一緒だったんだ・・・
加納が感じた武の表情や言動は、自分の事を言っていたのだと確信する。そして彼もまた苦しんでいるのだと思った。それでも万が一βになったとしても、もしかしたら女性と付き合って子供を成すことだって出来るかもしれないという希望があるだけでも羨ましい。
「可哀そうね・・・、合意ってことは・・・お互いにでしょ?」
「そうです。彼は番を助けるために死にました。目の前で」
「それは残酷だな」
起きていた隆は、廊下で立ち尽くしていた。
あんなにも明るく振舞っている武の過去が、あまりにも残酷すぎて言葉も出なければ体が動かなかった。彼は番を受け入れていた。しかし自分はどうだ?幼馴染だから、オネェになったから、Ωとして受け入れたくないという思いだけで圭太を拒んでいる。
武からしたら羨ましかったのかもしれない。
「どんな顔しろって言うんだよ・・・」
「番の巣作りってか?噛まれてねぇのに・・・ぅ」
「巣作りと言うよりもあった方が楽にはなるらしいです。これを持ってきました」
加納が持ってきたのは圭太のシャツだった。渡されると甘い匂いと共に安堵感が出てきて、眠気もやってきた。だがしかし、圭太の匂いで安堵感を得てしまうのは悔しい気もするが、匂いには負けてしまう。
数分後、隆は眠ってしまった。
「陣さんの言う通り、簡単に眠ってしまいました」
「そうだろうね~、噛まれる前に始まるヒートは匂いだけで満足するから。番になってからの巣作りは凄いらしいよ?」
何気に田中家に居る陣に対して隆の両親は、三者面談とは違い昔の様に陣を子供として扱うようにもなる。
「陣君、圭太君の様子はどうだね?落ち着いているかい?」
「まぁおちついてるよオジサン、オバサンも安心て?番になるってのは難しい事であり自分たちで決めないと結構難しい時があるもんだ。拒絶されたまま頸を噛んだところでメロメロになるってわけでもないし、徐々に慣らしていくしかないよ」
「そうなのね・・・」
ジッと立っている加納に陣は座る様に促し、加納もチョコンと開いているソファーに座る。夕方近くに話した西塔の事が気になってしまい、陣に訊ねようとするが今話すことではない。今は隆と圭太の話だけだ。しかし表情で見えたのか陣が真剣な顔で隆の両親に切り出す。
「同じようにΩのフェロモンが強い子が居るんですが、その子は番が・・・死んだんです。お互い合意で頸を噛んで誓い合った仲でした」
「え?その場合、どうなるのかしら?」
「ヒートは来ますが、もちろん番の匂いの物も消えてしまいます。きっと苦しいでしょう。しかし上書きとして番には出来ないのは知ってますよね?」
「あぁ、その場合は・・・どうしているのかね?」
「Ωとしてではなく、βに出来るかの実験を行うつもりです。定期的に施設に来てもらって検査や様々な薬の投与を行ってますが、βになったとしても・・・もしかしたらヒートはきえないかもしれません。それに女性と付き合ったところで子供が出来るか分からない状態です」
一緒だったんだ・・・
加納が感じた武の表情や言動は、自分の事を言っていたのだと確信する。そして彼もまた苦しんでいるのだと思った。それでも万が一βになったとしても、もしかしたら女性と付き合って子供を成すことだって出来るかもしれないという希望があるだけでも羨ましい。
「可哀そうね・・・、合意ってことは・・・お互いにでしょ?」
「そうです。彼は番を助けるために死にました。目の前で」
「それは残酷だな」
起きていた隆は、廊下で立ち尽くしていた。
あんなにも明るく振舞っている武の過去が、あまりにも残酷すぎて言葉も出なければ体が動かなかった。彼は番を受け入れていた。しかし自分はどうだ?幼馴染だから、オネェになったから、Ωとして受け入れたくないという思いだけで圭太を拒んでいる。
武からしたら羨ましかったのかもしれない。
「どんな顔しろって言うんだよ・・・」
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