写真の男

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都内の、高級住宅で、資産家の男性が、血まみれの遺体で発見されたという、通報が、警視庁に入ったのは、午前9時のことであった。通報を受けて、捜査一課の刑事たちが、現場に急行した。指揮をとるのは、主任の、矢口警部補であった。
矢口は、まず、発見者の、お手伝いの女性から話を伺うことにした。
「私はいつも、8時半に、こちらのお宅に通っていたんですが、旦那様からもらっていた合鍵で中に入って、挨拶をしようと、旦那様の書斎に入ってみたら、血まみれで倒れているのを発見したんです。」
書斎の部屋の窓が、壊されていて、そこから犯人が侵入したみたいだ。土足で侵入したらしく、足跡も残されている。部屋が荒らされて形跡はなく、被害者の金品が無事だったことから、強盗の線は消えた。明らかに、被害者個人に対する恨みで狙ったのだ。
遺体は、まだ、そのまま残されていた。被害者の氏名は、前田三郎、45歳。寝巻き姿だった。鑑識によると、背中を刃物で一突きされて絶命したようだ。死亡推定時刻は、昨日の深夜12時から1時の間らしい。
「被害者の右手に、この写真が残されていた。」
矢口は、鑑識から、そう言われて一枚の写真を手渡された。写っていたのは、若い男の写真だった。20代前半ぐらいだろうか。なかなかの柔和な顔立ちで、いかにも女性受けしそうな感じだった。この男が、今回の事件に関係があるのだろうか。