Nのために

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早見里美と、近藤史人は、同一人物によって殺害された。捜査会議でも、そう断定された。問題は、二人の接点である。
「この二人の接点は、今のところ、見つかっていない。中年のサラリーマンと女子大生。親子か、親戚でもない限り、普通は、何のつながりもないだろう。だが、同一犯によって殺害された以上、何らかのつながりがあったことは間違いない。」
「無差別殺人の可能性はないんですか」
一人の若い部下の刑事が尋ねる。金沢刑事が、代わりに答える。
「それはないね。最初の被害者、近藤史人は、犯人に呼び出されて、殺害されたんだ。知り合いでもない限り、のこのこ、深夜の公園に、一人でやってこないだろう。当然、早見里美も、犯人と面識があったに違いない」
「しかし、知り合いとはいえ、自分を恨んでいた人物の誘いによく応じましたね。しかも、深夜の公園に一人ですからね。自分が殺害されるとは、思わなかったんですかね。」
「その人物に、恨まれていたことに気づかなかったのか、現時点では分からん。事件を追っていけば、そのうちわかるだろう」
矢口は、腕を組みながら言った。