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「あなたは、佐藤修二さんに頼んで、彼が書いたことにして、自分の作品を林さんや、三島さんに紹介してもらった。作品をコピーしたものを渡して。」
「言いがかりですよ」
矢口は構わず続ける。
「だが、酷評されてしまった。怒ったあなたは、酷評した二人を殺害した。さらに犯行の発覚を恐れて、佐藤修二さんを殺害した。そして、その罪を落合に全て着せようとした。計画的な犯行だったんです。」
「ちょっと待ってください。」
苦笑した顔で、須藤が言った。
「小説を馬鹿にされたくらいで、人を殺すわけがないじゃないですか。第1、あの小説は佐藤君が書いたものですし。私は、落合という人をニュースで見るまで知らなかったんですよ」
「誰でも良かったんですよ。陥れる人物は。三日前に歩道を歩いていて、たまたま目についた人物を監禁し、犯人に仕立てようとしたんです」
「証拠はあるんですか」
「証拠はありません。ですが、私はあなたが犯人だと思っています。ところで、ここに来る前に中原さんの自宅に伺いましてね。彼に小説のことを聞いてみたんです。するとかなり酷評されていましてね。自分の書いた小説をあそこまで酷評できるわけがないので、彼は容疑者リストから外しました。あの小説を書いた人が、今回の事件の犯人ですからね。では、これで失礼します。」
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