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三件の殺人事件の捜査開始から、一夜明けた翌朝。佐藤修二の司法解剖の結果が、警視庁に届けられた。
死因は、首を、縄で絞められたことによる窒息死で、死亡推定時刻は、深夜の2時から、3時であった。
「犯人は、どうやって、部屋に侵入したんでしょうか」若杉刑事が、矢口に尋ねた。
「ドアに細工された形跡はなかったから、犯人は、あらかじめ合鍵を作っておいたのかもしれないな。古いアパートで、鍵穴から、簡単に型を取ることは可能だからな。」
「主任」慌ただしく、部下の新人の刑事が入ってきた。
「鑑識から、佐藤修二殺害に使用された、縄から、暴力団組員の指紋が検出されたとの報告が入りました。」
そう言って、矢口に、前科者リストをコピーした書類を渡した。そこには、暴力団R組の構成員である、落合悟の情報が載っていた。
「暴行、恐喝等で、前科三犯か」
書類を見ながら、矢口は言った。事件は、意外な方向に進展しようとしていた。
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