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中学生編
——篠田広大——
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顧問の言葉に耳を疑った。顧問自ら八島の土壇場ブロックに飛んだ篠田は特に耳に残って、こびりついて不快だ。
篠田はおろか、岸先輩までも「穴埋め」呼ばわりだ。
ネットを潜り、レギュラー陣に入り込む。アウェーな空気は当たり前だが、八島が平然としているのが妙に腹立たしい。
八島のポジションと入れ替わる際に肩をぶつけて舌打ちをする。
分かりやすい小姑のような真似だが、これ以上は岸先輩がコートインしてきたので自重する。
「篠田、あの子まだまだサーブに自信なさげだから、もしかしたらネットインすれすれしか打てないかも。その時はセットアップ頼むね」岸先輩はそういって、篠田とタッチを交わした。
多少のアウェー感は岸先輩が入ったことで、安定感をもたらしている。どことなく、ピリついている感じが薄まっているのだ。
おそらく、岸先輩に全幅の信頼を寄せているからに違いない。みんな、レギュラーやベンチという陽の目に限らず、岸先輩の能力の高さを買っていた。
程なくして、フローターサーブを打ってきた。
(岸先輩の言う通りになったな)
ブロックを1枚もつけることなくレフトに打たせることができた。
「……え、篠田、小学時代はセッターだったのか?」プレーが一段落して、どよめくメンバーたち。嘲り笑いたいところだが、岸先輩の御前だ。
「いえ、一応スパイカーやらせてもらってました。というか、岸先輩の囮が効いてたから成功したんですよ。そんなことにも——」
「篠田」
「……」
「ナイスセッター」岸先輩がタッチを求めてくる。
「……岸先輩」
「俺はこれでいい。楽しいよ」
ぱん、音を立ててタッチに返した。
「っし! なんか、岸と篠田にレギュラーとられる、なんて怯えんの馬鹿馬鹿しくなったわ」
「まぁ、悪足掻きはさせてもらうけど」
「そうだなぁー。俺らってチームで勝ちたいんだよな、根本は」
「最善のメンバーを作るための争奪戦だもんな」と結論づけられた先輩たち。
「ああ、篠田が実は期待の新人だということはよぉく分かったから、次も頼むなー」
「……いえ、だから、僕は岸先輩のお陰で——」
「次は篠田に上げるからなー」岸先輩はまるで篠田の話を聞かない。
話の腰をバキバキに折っていっては、一応は拾い集めてくれるらしい。「篠田、次も頼むよ」と。
「とか言って、誰に上げるか分かんねぇから気を付けろよ、篠田。岸はサインなしでくっからよ」
先輩に肩を組まれる。馴れ馴れしい。
(……んなの、知ってる! サインなしでもアンタらがやって来れたのは、岸先輩がどれだけの技量を持ってなし得てんか分かってんのかッ)
歯噛みして、乱暴に組まれる肩の不快さに耐えた。
「サーブ交代なー」
顧問が、エンドラインに立っているベンチの人に催促して、顧問自らボールを手に構え出した。
「ほら、次いくぞー」
すると、篠田と同様に片手でトスを上げた。
「ドライブサーブ!!」
みんなが声を掛け合って、情報の共有をする。
だが、その情報共有をする時間を与えてもらえず、すぐに豪速球ともいえる球が飛んできた。
誰もがとったことの無い速さ、重さ、回転量だ。しかも狙い目が岸先輩だ。現在のローテーションでは岸先輩は後衛にいる。サーブがネットを超えてポジションの制限が解除される段階で、ようやく岸先輩が動ける。
それまでは1本目のレセプションを触らないように前衛ポジションのプレイヤーを超えないよう真横(気持ち後ろにいる方が正しく、審判にも睨まれない)に張り付く。後衛に行かない代わりに前衛のプレイヤーに張り付くので、セッターが走り抜けるところが弱点だということは周知の事実である。
顧問はそこを狙ってきたのだ。
さぁ、どうする。
篠田はおろか、岸先輩までも「穴埋め」呼ばわりだ。
ネットを潜り、レギュラー陣に入り込む。アウェーな空気は当たり前だが、八島が平然としているのが妙に腹立たしい。
八島のポジションと入れ替わる際に肩をぶつけて舌打ちをする。
分かりやすい小姑のような真似だが、これ以上は岸先輩がコートインしてきたので自重する。
「篠田、あの子まだまだサーブに自信なさげだから、もしかしたらネットインすれすれしか打てないかも。その時はセットアップ頼むね」岸先輩はそういって、篠田とタッチを交わした。
多少のアウェー感は岸先輩が入ったことで、安定感をもたらしている。どことなく、ピリついている感じが薄まっているのだ。
おそらく、岸先輩に全幅の信頼を寄せているからに違いない。みんな、レギュラーやベンチという陽の目に限らず、岸先輩の能力の高さを買っていた。
程なくして、フローターサーブを打ってきた。
(岸先輩の言う通りになったな)
ブロックを1枚もつけることなくレフトに打たせることができた。
「……え、篠田、小学時代はセッターだったのか?」プレーが一段落して、どよめくメンバーたち。嘲り笑いたいところだが、岸先輩の御前だ。
「いえ、一応スパイカーやらせてもらってました。というか、岸先輩の囮が効いてたから成功したんですよ。そんなことにも——」
「篠田」
「……」
「ナイスセッター」岸先輩がタッチを求めてくる。
「……岸先輩」
「俺はこれでいい。楽しいよ」
ぱん、音を立ててタッチに返した。
「っし! なんか、岸と篠田にレギュラーとられる、なんて怯えんの馬鹿馬鹿しくなったわ」
「まぁ、悪足掻きはさせてもらうけど」
「そうだなぁー。俺らってチームで勝ちたいんだよな、根本は」
「最善のメンバーを作るための争奪戦だもんな」と結論づけられた先輩たち。
「ああ、篠田が実は期待の新人だということはよぉく分かったから、次も頼むなー」
「……いえ、だから、僕は岸先輩のお陰で——」
「次は篠田に上げるからなー」岸先輩はまるで篠田の話を聞かない。
話の腰をバキバキに折っていっては、一応は拾い集めてくれるらしい。「篠田、次も頼むよ」と。
「とか言って、誰に上げるか分かんねぇから気を付けろよ、篠田。岸はサインなしでくっからよ」
先輩に肩を組まれる。馴れ馴れしい。
(……んなの、知ってる! サインなしでもアンタらがやって来れたのは、岸先輩がどれだけの技量を持ってなし得てんか分かってんのかッ)
歯噛みして、乱暴に組まれる肩の不快さに耐えた。
「サーブ交代なー」
顧問が、エンドラインに立っているベンチの人に催促して、顧問自らボールを手に構え出した。
「ほら、次いくぞー」
すると、篠田と同様に片手でトスを上げた。
「ドライブサーブ!!」
みんなが声を掛け合って、情報の共有をする。
だが、その情報共有をする時間を与えてもらえず、すぐに豪速球ともいえる球が飛んできた。
誰もがとったことの無い速さ、重さ、回転量だ。しかも狙い目が岸先輩だ。現在のローテーションでは岸先輩は後衛にいる。サーブがネットを超えてポジションの制限が解除される段階で、ようやく岸先輩が動ける。
それまでは1本目のレセプションを触らないように前衛ポジションのプレイヤーを超えないよう真横(気持ち後ろにいる方が正しく、審判にも睨まれない)に張り付く。後衛に行かない代わりに前衛のプレイヤーに張り付くので、セッターが走り抜けるところが弱点だということは周知の事実である。
顧問はそこを狙ってきたのだ。
さぁ、どうする。
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