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——side竜ヶ崎獅郎Cling to……——
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「竜ヶ崎、お前の処分が決まった」と竜ヶ崎の担任が重い口を開いたのは、弓月が検査入院した翌日のことであった。
「他校との暴行沙汰は、相手から吹っ掛けてきたとはいえ、十数人の男子生徒をタコ殴りにした挙句、その内二人の関節まで外したのはどう考えても過剰防衛だ。雑に外されたとかで軟骨の損傷もしているらしいぞ」
生徒指導室で二人きりの空間にされている状況に、居心地の悪さを全身で感じる。担任のワイシャツのボタンが掛け違っていることとか、所々に髭の剃り残しがあるとか、些細な刺激が竜ヶ崎を苛立たせる。
「うっせぇよ。もういいだろ。サツに指紋取らせてやったんだから、さっさと言えよ」と横柄な態度を取る。
相手方も相当な怪我をしているが、吹っかけてきたのは岡田らで、刃物を振り回していた事実がある。それを鑑みると、双方が事件沙汰にすることを避け、結局は各の学校の処分で手打ちとなった。
竜ヶ崎も刃物を握り岡田の首に突き付けていたが、それも過剰防衛のうちに含まれるとしたらしい。
さらに今回の騒ぎで、弓月は帰宅途中で巻き込まれた被害者であり、竜ヶ崎や岡田らとの関連は一切無いと関与を否定していた。
「っとに……共学になってもお前だけは何の効果も無かったな」
「お前は二週間の停学だ。でも、残念ながら生徒に見つからない場所で反省文を書くために毎日出席必須だ。一日でも遅刻すりゃ、その分だけ日数は延びるから覚悟しとけよ」自身の髪を掻きながら、苦労してきたであろう若白髪を覗かせる。
処分を聞き終えた竜ヶ崎は担任の話を最後まで聞く間もなく、二人きりの空間から出て行った。
「今日から生徒と接触禁止だからな!」という声が後ろから聞こえたが、聞こえないフリをした。
竜ヶ崎はあまりの苛立ちに、教室から出た後の爽快感を感じながら、ふと口寂しさに口をもごもごと動かした。口内には何もない。その上、何かを口に入れる——入れてくれる物も人もいない。
だが、背徳感も入り混じった柔らかな感触が残る口唇に触れる。実は、弓月が病院先で力尽きている間、竜ヶ崎は寝ている弓月の唇を奪った。
彼女を作る暇がないとぼやいていた弓月。菊池の足止めを振り切って竜ヶ崎のところへ一人で来た弓月。全てに愛おしさを感じて、ふに、と当てるだけのキスをしてしまったのだ。
そして、触れるだけのキスで竜ヶ崎の自制心は瓦解する。そこから竜ヶ崎の記憶は曖昧になった。
寝息を立てる弓月の顎を持ち口内への扉をこじ開ける。その間、目をギラつかせたまま瞬きすらしない。
至近距離の弓月を見逃すまいと、苦しそうに鼻呼吸をする弓月を凝視する。興奮する下半身に気を取られそうになりなながら。
あの時は病院であるということをすっかり忘れていて、弓月の意識があのまま浮上せず寝たままなら——。
今思い返してもやり過ぎた感が否めない。現に、弓月からは「——やけにお喋りだな」と疑われる始末だ。
だが、不思議と後悔の念はこれっぽっちもない。
「ゆづは甘かった……」と率直な感想が出るくらいには、このタイミングしか弓月を深くまで堪能することはできないと思っていた。
「他校との暴行沙汰は、相手から吹っ掛けてきたとはいえ、十数人の男子生徒をタコ殴りにした挙句、その内二人の関節まで外したのはどう考えても過剰防衛だ。雑に外されたとかで軟骨の損傷もしているらしいぞ」
生徒指導室で二人きりの空間にされている状況に、居心地の悪さを全身で感じる。担任のワイシャツのボタンが掛け違っていることとか、所々に髭の剃り残しがあるとか、些細な刺激が竜ヶ崎を苛立たせる。
「うっせぇよ。もういいだろ。サツに指紋取らせてやったんだから、さっさと言えよ」と横柄な態度を取る。
相手方も相当な怪我をしているが、吹っかけてきたのは岡田らで、刃物を振り回していた事実がある。それを鑑みると、双方が事件沙汰にすることを避け、結局は各の学校の処分で手打ちとなった。
竜ヶ崎も刃物を握り岡田の首に突き付けていたが、それも過剰防衛のうちに含まれるとしたらしい。
さらに今回の騒ぎで、弓月は帰宅途中で巻き込まれた被害者であり、竜ヶ崎や岡田らとの関連は一切無いと関与を否定していた。
「っとに……共学になってもお前だけは何の効果も無かったな」
「お前は二週間の停学だ。でも、残念ながら生徒に見つからない場所で反省文を書くために毎日出席必須だ。一日でも遅刻すりゃ、その分だけ日数は延びるから覚悟しとけよ」自身の髪を掻きながら、苦労してきたであろう若白髪を覗かせる。
処分を聞き終えた竜ヶ崎は担任の話を最後まで聞く間もなく、二人きりの空間から出て行った。
「今日から生徒と接触禁止だからな!」という声が後ろから聞こえたが、聞こえないフリをした。
竜ヶ崎はあまりの苛立ちに、教室から出た後の爽快感を感じながら、ふと口寂しさに口をもごもごと動かした。口内には何もない。その上、何かを口に入れる——入れてくれる物も人もいない。
だが、背徳感も入り混じった柔らかな感触が残る口唇に触れる。実は、弓月が病院先で力尽きている間、竜ヶ崎は寝ている弓月の唇を奪った。
彼女を作る暇がないとぼやいていた弓月。菊池の足止めを振り切って竜ヶ崎のところへ一人で来た弓月。全てに愛おしさを感じて、ふに、と当てるだけのキスをしてしまったのだ。
そして、触れるだけのキスで竜ヶ崎の自制心は瓦解する。そこから竜ヶ崎の記憶は曖昧になった。
寝息を立てる弓月の顎を持ち口内への扉をこじ開ける。その間、目をギラつかせたまま瞬きすらしない。
至近距離の弓月を見逃すまいと、苦しそうに鼻呼吸をする弓月を凝視する。興奮する下半身に気を取られそうになりなながら。
あの時は病院であるということをすっかり忘れていて、弓月の意識があのまま浮上せず寝たままなら——。
今思い返してもやり過ぎた感が否めない。現に、弓月からは「——やけにお喋りだな」と疑われる始末だ。
だが、不思議と後悔の念はこれっぽっちもない。
「ゆづは甘かった……」と率直な感想が出るくらいには、このタイミングしか弓月を深くまで堪能することはできないと思っていた。
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